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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話212 茶番劇

【アンジェリカ・エレメント視点】

<さぁ、いよいよ準決勝です!オーロラ魔術女学園三年生の二属性使い、アンジェリカ・エレメント!>


 ついにこの場に来たわ。

 ここで活躍すれば、さる貴族家の次男や三男を婿に迎え入れることもそう遠くない。


<対するは、聖女学園聖徒会長代理、三年S組次席の期待の星、リリエラ・マクラレン!>


 この間聞いた話だと聖徒会長代理なんて肩書きではなかったはずなのだけれど、本当の会長はエスケープでもしたのかしら?

 聖女様の目があるあの聖女学園でそんなことになってるなんてただ事ではないでしょうけれど、今はそんなこと気にしている場合じゃないわね。


「アンジェ、久しぶりね」

「本当よ!聖女学園に通うようになってから会ってないし、あなた実家に全然帰らなかったじゃない!お陰様で弟君と仲良くなったわよ」


 本当は息子ができてからというもの、マクラレン侯爵は度々自慢しにわざわざ近隣の貴族家に訪れているほどの溺愛に、周囲の貴族はほとほと呆れているのだけれど、親が親なら子も子よね。

 くだらないけれど、どうせリリエラも溺愛してるのは分かってるんだから、弄らない手はないわ。


「なっ!?ベリルは渡さないわよ!」

「何言ってんの、相手は赤子よ?私はあんたみたくブラコンでもショタコンでもないの。まぁ、婿に迎え入れる家柄としては悪くないけどね」

「ベリルはマクラレンを継ぐのよ!そんなことはさせないわ!」

「あっそう。じゃあ私に勝ってみなさい!」

「ふふ……なるほど。私を煽った訳ね。それなら心配無用よ」

「あら?私に泣かされてたマクラレンが、生意気言うじゃないの!」

「ふふふ、でもごめんなさいね」


<注目の一戦が今まさに始まろうとしています!>


 パァンと合図の音が鳴り、私はすぐさま魔法で影の中に潜る。


「『雷の嵐(サンダー・ストーム)』」

「『影の旅路(シャドー・ジャーニー)』」


 範囲攻撃も、影の前では無力だわ。

 ふふ、自分の影に隠れられるなんて思いもしなかったでしょうね。


 さて、どう料理してやろうかし……


「ガぁッ……!?」


 地面全体に……雷魔法……!?

 こんな広範囲の魔法、上級雷魔法でもあり得ない……!

 というかそもそも、詠唱はどうしたのよ!


「ああ、そういえば詠唱してなかったわね」


 そういえばで詠唱を破棄するなんて、馬鹿げてるわ!

 毎回私に負けて跪いていたリリエラが、たかが二年会っていなかっただけで、ここまで変わるなんてあり得ない。


「ついでに言うなら、木の杖(こんなもの)、必要ないものね」

「ちょっ、まさか……!?」


 木の杖を捨てて両手を広げた状態でそのまま上げると、親指と中指と小指が光り出し、そこから現れたのはとても大きな魔法陣……!

 この速度で、杖なしで、無詠唱で……6つ同時、ですって!?


 あ、あり得ない……!

 天から降り注ぐ6つの落雷がまるで巨大な竜巻のように半径50メートルの円柱を作る。

 その範囲は、このバトルフィールド全範囲。

 それを上空から地上、そして私が潜んでいた床の下にまで範囲が及ぶ。

 こんなの、誰が避けられるってのよ!?


「名付けて、『落雷の雨サンダーボルト・レイン』よ。まだ6つしか同時に撃てないのが、玉に瑕よね……」

「6つって……バケモノじゃないのよ……」


 ビープ音が鳴って会場が沸き上がる。


 呆気なく下克上された私に、当の本人は決して驕ることはなく、まだこの圧倒的強さの上があたかもあるかのように、上を見上げていた。

 確かに歴代最強と謳われた大聖女様であれば勝てるのかもしれないけれど、でも私達は大聖女様のようにはなれないわ。


 そのまま彼女は優勝して会場の皆がリリエラを称賛していたはずなのに、この大会がすべて茶番劇レベルのものであったと知るのは、極めてすぐの事だった。

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