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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第787話 川辺

「おはようございます、ソラ様」

「おはよ、エルーちゃん」


 お互いに夜は一緒に寝ると言う約束をした僕たちは一時的な仲直り?を遂げた。


「ソラ様。本日はデートをいたしましょう!」

「いや、でも今日は用事が……」


 休日、受け身なエルーちゃんが無理やりデートに誘ってくれた。

 この間の件があり、心境の変化でもあったのだろうか、甲斐甲斐しくしてくれるようになった気がする。


「真桜様の代役くらい、私達親衛隊に任せてくれ。疲れているソラちゃんに負担はかけさせないよ」


 涼花さんは休日の間、真桜ちゃん達の代わりに魔境討伐に行ってくれることになった。


「お揃いのワンピースに麦わら帽ですね♪」

「二人とも、可愛すぎる……」

「涼花様のお墨付きを頂いちゃいましたね」

「涼花さんもワンピース着たら良かったのに……」

「私にはそんな可愛いの似合わないよ」

「そんなことないでしょ!」

「そんなことございませんよ!」


 少なくとも僕よりは可愛いでしょ。


「ま、まぁ……機会があればね。今日くらい二人で楽しんでおいで」




 エルーちゃんの実家に転移し、西の村のパン屋さんでエルーちゃんの幼馴染みであるドルシーちゃんからサンドイッチをもらって近くの森の中の川辺で食べていた。

 ここは魔物も出るがそこまで強くないし、聖女結界を張っておけば魔物が来ることもない。

 森の中にある川って、どうしてこんなに神秘的に見えるんだろう。


「んー、おいひぃ」

「お口にマヨネーズついていらっしゃいますよ」


 無詠唱魔法で水魔法の洗浄(ウォッシュ)で綺麗に洗いとってくれる。

 その一つを取っても無詠唱の発動速度が早くなっているのが見て取れる。

 やはり天才か、正直コンマ何秒くらいの微々たる差だけれど、僕より早い気がする。

 「勝負」といった手前、その極意を聞くことができないのがすごく悔やまれるけれど、それは勝負が終わったら聞くことにしようと思う。


「エルーちゃんこそ、とっても嬉しそうな顔してるよ」

「久しぶりにお世話できることに感謝しているんです」


 僕の記憶を見た以上、エルーちゃんと涼花さんはこれからの僕の方針について、僕に聞くまでもなく何をするのかわかっていることだろう。


「……エルーちゃんはさ、民の皆に伝えるべきだと思う?」

「悩まれていらっしゃるのですか?」

「いや、言うつもりではあるんだけどさ……ただ民の皆さんに必要のない恐怖を与えてしまうことになるんじゃないかなって……そう思っちゃって」

「私は、伝えるべきだと思います。確かに裏で起きていることを何も知らないで生活していることは一つの幸せかもしれませんが、それがソラ様の負担になるくらいでしたら、民に伝播させてくださいませ」


 平和ボケした世界というのは、民や貴族の皆が知らないからこそ起きていることなんだけど、それでは知る権利を失っているとも言える。

 向こうの勢力に転移魔法がある以上、どこに敵勢力が出現するかは完全には読めない。

 根本的な解決方法としては民の皆一人一人が強くなることだが、それが伝えたことによって意識して強くなれるのなら、そうした方がいいのだろう。


「ソラ様、それくらいで私達民は崩れたりしません。ですから、寄りかかってきてください」


 ひまわりのような笑顔が森の木漏れ日から注ぐ光に一瞬照らされると、僕に覆い被さって木漏れ日がエルーちゃんに遮られる。


 それは僕が心の奥底で、ひそかに、求めていた言葉だったのかもしれない。


「エルーちゃん……」

「あら?ふふっ……寄りかかっただけで……」

「ごめん……節操なくて」


 そう言いながらも腰をすり寄せてくるエルーちゃんを見て、同じ気持ちであることに幸せを感じていた。


「いいえ、お互い様ですから。もっと寄りかかってくださいませ――」




 西の村に帰ってきた時、ドルシーちゃんが村の入り口で仁王立ちしていた。


「お二人さん……」

「「?」」

「いくら川のせせらぎがあるとはいえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「「ーーっ!?」」


 田舎のプライバシーのなさ、怖い……。

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