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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第10章 涸轍鮒魚
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第79話 秘宝

「丁度いい相手なので、アレンさんに教えたい技があります。よく見ていてくださいね」


 聖剣の握りを強め、「オーバーエンチャント」と唱えると聖剣がエメラルドに光輝き、僕の体から強風が迸る。


 四足歩行で素早くこちらへ向かってくるミミック。

 僕は最大強化した聖剣を十閃させると、まとまった斬撃波がミミックに押し寄せる。


「森羅滅却!」


 ミミックは粉々になり消えていった。


「す、凄まじいですね……」

「オーバーエンチャントは聖剣の別モードで、魔力消費が2倍になる代わりに全ステータスが5分間だけ4倍になります。」


 ただでさえバカみたいに高い僕のステータスが四倍になるのだから、魔王クラスの魔物でもない限り消し炭だ。


「ただ、デメリットとして5分経つとそこから5分間の間全ステータスが2分の1になります」

「なるほど、諸刃の剣ということですか……」

「アレンさんならそろそろ使いこなせると思いまして。後で試しに使ってみましょう」


 僕たちは最初にミミックのいた場所を確認すると、僕の()()()()があった。

 ガラス瓶に詰められた紅い液体。


「こ、これは……!?伝説の神薬ではありませんか!?」


 そう、ここは神薬の一つが眠っている貴重なダンジョンでもある。


「まだ見付けられていなかったみたいですね。アレンさん、いりますか?」

「い、いや……わ、私はそんな貴重なものを持ちたくありませんよ!ソラ様が見つけたのですから、ソラ様がお持ちになればよいのです」

「そうですか……」


 まあ神薬は僕にとっても貴重だから、ありがたく貰っておくことにしよう。




 僕たちは禍々しい大きな扉までたどり着いた。


「ここがボス部屋です。今までの成果を試してみますか?」

「私でも大丈夫なのですか?」

「気を抜かなければ大丈夫かと。正直に言うと、さっきの神薬を守っていたミミックの方が強いですから……」


 あのミミックは攻撃力が高いけど体力はボスより少ない、いわば初見殺しだ。

 僕の場合はどっちでも森羅滅却で一撃だと思うけど……。


「やってみます」


 アレンさんは扉を開け中に入る。

 僕も一緒に中に入る。


 中で待っていたのはサラマンドレイクという魔物だ。

 上半身は(サラマンダー)(ドレイク)、下半身は(サラマンダー)植物(マンドレイク)の見た目をしており、地上からは炎の息吹き(ブレス)、地中からは炎の(つた)で攻撃をしてくる。


「短期決戦が要です!()()()()()()()()()()()()()()にして下さいね!」


 僕はアレンさんに向かってそう叫んだ。


「オーバーエンチャント!」


 短期決戦と聞いてすかさずオーバーエンチャントを使うアレンさん。


 サラマンドレイクは地面から蔦を這わせ、地上から炎のブレスを放ってきた。

 そこから何をするのかみていると、聖剣を最大強化して……あれ?


「森羅滅却!」


 5閃だったけど、一回見せただけで真似てくるとは……。


 光の斬撃波はサラマンドレイクの蔦や炎を掻き消し、そのまま頭を切り裂いた。


「あっ……」


 胴体と顔が切り離されたサラマンドレイクは地に落ちると、ビャアアアと呪いの雄叫び攻撃を放って来る。

 雄叫びがくるのが分かっていた僕はアレンさんを守るように前に立つと、リフレクトバリアでタイミングよく倍返しにして返した。


「アアァァ……」


 サラマンドレイクがそのまま息絶えたのを確認すると警戒を解く。


「森羅滅却を真似てくるとは、流石ですね。ですけど、口を塞いでからじゃないとこうなってしまいます……」

「すみません、助かりました……」

「たまたま光魔法の使い手がいたからいいですけど、くらうと最悪の場合死にますから、処理には気を付けてくださいね」




 ボス部屋の奥に行き着いた僕たちは、台座に置かれていた宝箱を見つけた。


「『魔法陣の絨毯』ですね」

「伝説のクラフトアイテムじゃないですか!?こんなところにあったとは……」


 『ワープ陣』のクラフト素材の一つだ。


「アレンさんが手に入れたものですから、今度クラフトしてサクラさんにでも渡しておきますね」

「ありがとうございます」


 宝箱の後ろで光っている魔法陣に乗ると、迷宮の入り口に戻る。


「この迷宮、親衛隊の育成に使えそうですね……」


 しみじみとそんなことを言うアレンさん。


「スパルタなのか戦闘狂なのか……」

「愛があると言ってください」


 その愛、歪んでない?


「ワープ陣、置きましょうか……?」

「宜しいのですか?」

「まあ、私も定期的に来て魔物を間引こうかと思っていましたし……」


 代わりにやってくれると言うのなら、任せようと思う。


「ですがさっき話した通り、成長の仕方は人それぞれですから、無理やりつれて危ない目に遭わせるのはなしですよ?」

「それを言われると弱いですね……。私も王の二の舞とならないように、気を引き締めないとなりません」


 僕はワープ陣を入り口の近くの分かりにくい場所に隠しておいておく。




「では、帰りましょうか」


 そう言ったとき、不意にどこからか声が降ってきた。


<ソ……ソラ()()()!!>


 この声はまさか、エリス様!?


「ど、どうかしたんですか……エリス様?」


 


<お願い……サクラを助けて!!>


 僕の前ではもじもじしていることが多かったから、必死そうなエリス様の声を聞くのは初めてだった。


<サ、サクラが……魔王にっ!!>

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