閑話2 優しさ
【エルーシア視点】
お風呂から上がられたソラ様はパジャマ姿。
女装されて急に変わられた口調も戻って、なんだか今はひどく落ち込まれています。
「そ、そんなことは……!」
「僕が聖女だからってそんなに気を遣わなくていいんだよ? 男だし……。 エルーちゃんも見たよね? さっきのあの口調。 ごめんね。 男の僕があんな口調になって、気持ち悪いと思ったよね?」
天庭から戻られたソラ様はルーク様と私に、「両親のせいで女装するとスイッチが入ってそうなってしまう」と説明してくださいました。
ご両親のせいというのは、遺伝ということでしょうか……?
ええと、なんだか……そう、サラブレッドな感じがしますね!
ですが、ソラ様はどうして気持ち悪いなどとお思いになるのでしょうか……?
私はとても素敵だと思いましたが。
ああ、無言ですと肯定していると捉えられかねませんので、慌てて否定します。
「そんなことありませんっ!!」
「えっ?」
心底意外だったのか、聞き返すソラ様。
「ソラ様はメイドの私のために怒ってくださいましたし、その……私は、素敵だと思いますっ!」
「エルーちゃんは優しいね。 ありがとう」
お優しいのはソラ様の方です。
私達が勘違いしていた性別について、私達を叱ることはなく、神託で性別をお伝えにならなかった神様のエリス様を怒っていらっしゃいました。
ソラ様が男性だと知っているにもかかわらず、女性用の衣服の準備をしていたときは本当にやってしまったと思いました。
粗相をしてしまいパニックになった私をソラ様は馬鹿にすることなく、優しく赦してくださいました。
聖女さまに施しをかけていただくのはこれで二度目になります。
私はなんと幸せなのでしょうか。
◆◆◆◆◆
私が幼い頃、西の村で病が流行り、村の人たちは次々に体調が悪くなり、寝たきりに。
その村の中で一番症状の酷かった私の前に、第九十九代聖女さまであらせられるサクラ様が現れました。
サクラ様が患者を集めて赤い瓶を私達にふりかけると、あれほど苦しかった症状が一気に軽くなり、翌日から私は歩けるまでに回復したのです。
それから私は聖女さまに恩返しがしたくて、使用人に必要なことを勉強して、無事に中等学校を卒業することができました。
その時にサクラ様による神託が告げられ、聖女院から次代聖女さまの使用人募集があり、なんとかメイドとして採用していただけたのです。
私は二人の聖女さまに返しきれない恩をいただいてしまいました。
ソラ様には今後、不自由なく過ごしていただけるように専属メイドとして頑張りたいと思います。
◆◆◆◆◆
「――うあああぁぁっ!!」
ベッドで頭を抱えながら言葉にならない声で唸るソラ様。
ソラ様は御自身を過小評価しがちなのでしょう。
ですがソラ様はすごいお方です。
女性の口調になられたとき、まるで背筋が伸びるようにとてもいいお声が聞こえてきたのです。
それがソラ様から出ていることに気付いたとき、私は鳥肌が立ちました。
それほどにとてもいい「女性の声」だったのです。
少なくとも私は、それを知っています。
きっと今は、私だけが知っていればそれでいいのかもしれません。
ですから私がソラ様の代わりに肯定することで、ソラ様を癒して差し上げよう。
そう、心に誓いました――




