プロローグ 転移
「昨日の聖女様の神託聞いた?」
「聞いた聞いたー!って、もう今日から聖女様って言ったらお二方になっちゃうじゃない!サクラ様って呼ばないと!」
「確かに……。どんな方なのかしら……『慈愛の大聖女さま』――」
「――や、やっと終わった……」
やっていたゲーム、EVER SAINT FANTASY。
このゲームの裏ボスエンディングが流れる。
何度見たかわからないエンディングだけど、最近全てのアイテムを集めた後に裏エンディング見ると手に入るらしいアイテムがあるとわかった。
なんとこのゲーム、偶然手に入れたんだけど、攻略本や攻略サイトなるものは見つからず。
しかしやってみると面白く――気づいたらゲーム時間は3桁でカンストするまでに。アイテムもカンストする勢いで集めていた。
そして2年くらい遊んでいたところでようやく最後のアイテムの存在に気づいた。
僕は容姿も女の子によく間違われ、声変わりしない声も相まって学校では男の子にものを隠されたり、家では姉にいじめられていた。
親からも女物の服を渡されること多数……。
高校に通い初めたら何か変わるかなと期待したけど、そんなことはなかった。
そんな僕が行き着くのは学校から帰ると自分の部屋にこもってゲームすることだった。
明日は祝日のため徹夜をして最後のアイテムを取るための情報収集をしていた。
そしてようやっと最後のアイテムの入手に至った。
「もうちょっと……やっていたかったな」
ゲーム画面ではエンディングが終わり、「『聖女の片道切符』を入手しました」とテロップが出ている。
僕が勝手にESFと呼んでいるこのゲームは、プレイヤーが聖女となり、石盤を操作し世界を発展させるためのアイテムをクラフトしていくゲーム。
オンライン要素はないから外ではいじめられていた僕でも気楽にできたこともあり、僕の中ではこのゲームの評価は何よりも高かった。
名残惜しくも眠気が襲って来る。ポータブル系のゲーム機を布団で寝転がってやっていたので、眠ると顔に直撃して結構痛いんだよね……。
あっやばい……と目を閉じたところで異変に気づく。
「あれ、落ちて……来ない?」
ゲーム機が落ちてこないのはどうしてだろうと不思議がって目をぼんやり開けると、知らない空間に僕はいた。
あたりは白い城?のようなところで、騎士のような格好をした人達が数百はいるだろうか?がみんな傅いている。
夢の中のような光景に頬を捻るもどうやら夢ではないらしい。
「痛い……」
痛覚を覚えたところで、辺りにいた騎士とは違う様相で中央にいたインテリそうな男性がこちらに来て跪く。
「お待ちしておりました。ようこそお越しくださいました、大聖女さま」