第捌話 第一回御前会議
葵はわたしの命令通り、転移組とアルゴ殿とアルナさんそして職人さんを皇居の会議室に呼んだ。
「皆さん、この度は集まっていただきありがとうございます。これより御前会議を始めます。今回は、皆さんの役職と、今後の方針について話そうと思います」
すると、職人代表の方が、勇ましい雰囲気とは裏腹に、弱々しく手を挙げた。
「すみません。一応自己紹介しておくと、俺の名前はビルド=ワークナーと言います。それで、どうして今回俺が呼ばれたのですか?」
「あ〜。それはあなたにわたし達の国の建築部門を任せようと思ってね。つまり、建設大臣的な感じかな?」
「えッ!? そんなに軽い感じで決めるもんですかい!?」
「まぁ、姉さんですから……」
葵が諦めたように言うと、ワークナーさん以外のみんなが頷いた。
「なんか酷くない?」
「ま、まぁ、建設大臣のお話はありがたくお受けいたします」
「うむ。ありがとうね。それでは他の人の役職も伝えていくね。アルゴ殿には、財務大臣として働いてもらいます」
「ありがたく、その役目、務めさせてもらいます」
「それと、アルナさんは銃と、指導能力に長けているという事で、陸軍少将兼陸軍教官を任せます」
「ははッ!」
「最後になったけど、転移組のみんなは軍部がメインになるんだけど、友美ちゃんには陸軍大将兼陸軍大臣を任せます」
「分かった! 任せといて!」
「一二三には海軍大将兼海軍大臣を任せる」
「了解!」
「二人は役目が多くて忙しくなるだろうけど、頑張って」
「「任しとけ!!」」
「後の人達の役職はとりあえずまとめて発表するね。まず陸軍から。瞳ちゃんは大将、忠政君と満月ちゃんは中将に任命します。とりあえず引き続き今の職務を全うしてね」
「「「任されました!!」」」
「次に、今後開発を急がないといけない海軍。これは、葵を大将に幸樹ちゃんを中将に任命します。まだ艦艇も大規模な港も無いから、急いで開発を進める必要がある。よって、海軍はかなり忙しくなるけど、だからこそ、実力、経験、知識が豊富な君達三人に大和王国の海軍の基盤を造ってほしい。よろしく頼みます」
「「「了解しました!!」」」
仲いいな~。こんなにみんなハモるもんなんだな。
わたしは明らかに自分が話しているノリと、決めた事が釣り合っていないような気がしたが、きっと気のせいだろう。
「それでは、これより議題を変えて、今後の方針を決めようと思います。では葵。よろしく」
葵はアルゴさんからもらった太平洋の地図と、グラム王国から押収した周辺の島々の地図を広げた。
「これより、解説をさせていただきます。白雪 葵です。よろしくお願い致します。そもそも、我々の最終目標はアジアの開放であり、それの達成のためには、かの帝国を復活させる必要があります。まず、かの帝国復活の段階として、ここより、北東にある、沖縄本島を目指します。勿論、その道中にある、与那国、石垣、宮古などに当たる島々も占領します。これらもかの帝国の復活の為には必要ですので」
葵にわたしが続く。
「そのためには、まず船が必要になるけど、一二三、言っておいた艦艇はどうなってる?」
「それなら順調に進んでいる。スキルの練度が上がって今は、護衛艦も一隻同時に製作している。完成は出来るだけ急いだ方が良いと判断し、反動が来るこはと覚悟で、全速力で製作している。だが、あと二週間はどうしてもかかりそうだ」
「分かった。しかし、このまま倒れられても困るので、あと一か月で完成させてくれ。わずかな猶予だが、少しは気を緩めてくれ」
すると、一二三と仲の良い瞳ちゃんも入ってきた。
「そうだよひふみん! 頑張りすぎても後にもまだ仕事はあるんだから、考えて動いてよ~」
「わ、分かった。一か月もあれば十分だ」
それにしても、なんで瞳ちゃんは一二三にはこんなに親しげなのだろうか。いつものあります構文は何処に置いているのか……。
「よし! それで、港の方はどう? 艦艇の完成には間に合いそう?」
「う~ん微妙やな。簡易的なもんでええなら後一か月で建築することは可能やな」
「俺にも報告が上がってはきてるが、確かに元の案では無理だな」
「分かった。とりあえず簡易的なものでいい。だが、手は抜くな。簡単とはいえ、丁寧に頑丈に建築を進めてほしい」
「任しとき!!」
「俺の部下もできるだけそっちに回すようにしよう」
「お~助かるわ~! 流石建築大臣! 太っ腹やな~」
「よし。他に何か言っておきたいことがある人はいない?」
すると、アルゴさんが手を挙げた。
「それが、開墾などをして将来的な食糧事情はある程度は安心なのですが、まだ現状の食料面には少し不安は残ります。これから海洋進出もするのであればなおさら……」
「分かりました。それについてはわたしがとりあえず対処しましょう。他にはありますか?」
「全員なさそうです」
「ありがとう。葵。では、これをもって御前会議を終了します」
これにより全く緊張感のない御前会議は解散した。