第陸拾話 戦乱
世界がアジアの大同盟である大東亜共栄圏に危機感を覚える中、期待感を覚える者も居た。
北京にて。
「四方を敵に囲まれているのになぜこんなにも国賊どもは耐えておる!!」
「恐らく、独立を宣言した者共は自らが主張する国境で軍を停止させており、挟撃が成立していないことが原因かと...…」
「大日本帝国の兵はどうしておる!」
「寧ろ、我々に銃口を向けている状況です」
「例の政府顧問団とやらを始め、我が国内に入れることは阻止できたが、それが悪手であったか...…」
「いえ。あやつらを入れては我らが傀儡になるのは目に見えた未来でした。陛下のご判断は正しかったと考えます」
「しかし、このままでは、ますます泥沼の内戦になってしまう。寧ろ例の大東亜共栄圏に入ってしまうか...…」
汪兆然がそう発言すると、周りの高官たちは黙り込んでしまった。静まり返った王宮にドタドタと誰かが走ってくる音が響いた。
「申し上げます! 大日本帝国が国賊共の支配領域み向けて進軍を開始したとのこと!!」
「なんだと!?」
大日本帝国内。大本営発表。
「自称旧始政府軍は愚かにも我が国民に対し、刃を向け、突き刺した。彼らは大陸に住まう我が国民を敗戦の憂さ晴らしに虐殺している! 決してこの愚行を見過ごしてはならない! 我々は国民の皆様を守る為、自称旧始政府軍支配地域に対して越境攻撃を行う!! 誇り高き帝国兵たちよ! 我らに仇名す敵を殲滅せよ!!」
大日本帝国の兵士たちは香港と上海から越境し、自称旧始政府軍に対して攻撃を開始した。越境攻撃には、正式に編成された第二近衛師団<雷>が先陣を切り、第一師団と第二師団が後に続いた。念のため自称旧始政府軍は、即応部隊を準備していた。
キリキリキリキリ...… ズドンッ!!
しかし、それは、<雷>の戦車連隊によって、ひき潰された。
その結果、一週間も経たない内に南京近郊では、機関銃と野戦法の音が鳴り響いた。
ズドドドドドドドッッッ!! ドッコン!! ズドドドドドドドッッッ!! ドゴーーーーーン!!!!
突然の大日本帝国の攻撃により、混乱した自称旧始政府軍は、新政府軍などの反乱軍に対応していた軍隊を向かわせたが、それはまばらであり、殆どが機関銃の餌食となった。
南京攻略戦は激しい抵抗を受けたが、二週間で陥落した。 その一報を受けた大東亜共栄圏の各国は自称旧始政府軍に対して宣戦布告、四方から各国の軍隊がなだれ込んできた。当然、大日本帝国により、壊滅していた自称旧始政府軍が組織的な抵抗できるわけもなかった。ゲリラ戦を駆使し、一部の戦場では勝利を収めていたようだが、戦争の勝利へとは繋がらなかった。
一カ月後には、前始皇帝は自殺。その後、自称旧始政府軍は降伏した。え? 誰にって? そりゃ、大東亜共栄圏にだよ。
再び、北京にて。
「なぜだ! なぜ我々が講和会議に呼ばれないのだ!!」
「そ、それは自称旧始政府軍は、例の大東亜共栄圏に対して降伏したためかと……。つまり、我々はに対しては降伏していないと言い張っているのでしょう」
「くそが! 賊軍にまだそこまで頭が切れる奴がいるとはな!」
「ごもっともです。しかし、その状況を作ったのは、大日本帝国です。何か仕組んだ可能性も、否定できません」
「どこまで行っても卑怯な奴らよ。しかし、これも戦乱の世ならば当然ともいえるか」
「それと、大東亜共栄圏から、書状が来ております。恐らく、例の講和会議での結果を踏まえて、我々に下れと言ってきているのでしょう」
「そんなところだろうな。それで? なんと言ってきている?」
「はッ! 読み上げますと、『講和会議では、現在大東亜共栄圏に所属し、かつて始によって統治されていた国々は独立が確立され、その政府樹立に掛かる金銭は始によって補填されること。そして、残った領土は大日本帝国によって統治される予定である。しかし、新始政府が大日本帝国政府顧問団とその護衛の北京、南京、重慶滞在を認めれば、大東亜共栄圏へ迎え入れ、資金援助を始め、復興支援は大東亜共栄圏全体で全力をもって行う。そして、今回の講和会議で大日本帝国が統治することが決まった土地は新始政府へと変換する。良い返事を期待しております』との事です」
「我が国をなめくさりおって!!」
「しかし、このまま大東亜共栄圏へ対立姿勢を維持していても、後々の復興や領土回復は絶望的ですし、再び戦争が起こる方が早いでしょう」
「これは、プライドよりも、人々の命の方を優先すべきか……」
その後、新始政府は大東亜共栄圏と交渉を開始し、北京への政府顧問団の護衛は取り消しとなり、資金援助を始め、復興支援はより長期的に、そしてより充実したものとなった。
「この結果は正に、自愛溢れるわたしの優しさだね!」
「たく。葵姫ってほんとこずるいというか、帝国主義が向いてるというか」
「側近のあたし達も毎回引いてるわよ……」
「ひどくない!! みんなのこと思ってなんだから!! 臣民が涙を流すのは見たくないんだよ!」
「そこで世界の人々ってうわべだけでも言って欲しいんですがね。まぁそんな正直な姉さんも好きですよ」
「あお~。葵!! わたしも大好きだよ~!!」
「こんな微笑ましい絵面も、元々は血なまぐさい報告会なんだよな……」
「ほんと、最近感覚が狂いそうよ……」
「もう狂ってるぞ」
「そうね……」




