第伍拾玖話 アジアの大同盟
わたしは、長門に乗船し、オズメン帝国から招待されていたスエズ運河の今後に関する会議へ参加する為に、現在はアラブ自治領の主要拠点であるクウェートに訪問していた。こっちの案内人にはメルテムさんを指名した。他には、今回の特別任務艦隊長官の葵が同行している。
クウェートに到着したわたしは、すぐに市場や行政施設を訪問して回った。クウェートの港周辺はかなり発展したといって過言ではなく、市場や行政施設の設置によって人も物も集まっている。スエズ運河周辺の発展具合はあまり把握できていないが、この様子だと、アラブ、いや、アジアトップクラスの貿易港になる日もそう遠くないだろう。
今回はあまり長くは居れなかったが、こうしてアジアの国々が発展していくのは誇らしい。わたしは長門に乗船し、今回の目的地であるスエズへと向かった。
「メルテムさん。クウェートの発展具合は素晴らしいね。これからも、アジアの発展に力を貸してね」
「もちろんです!! 陛下にも久しぶりにお会いできて、わたしも部下たちも非常に喜んでおります」
「それは良かった。それにしても、視察の時に数回の襲撃は覚悟していたけど、何事も無くて良かった」
「アラブ自治領は元々何もない砂漠地帯でしたから。いくら遊牧民といっても過酷な地域ということには変わりありません。そこに我々が街を作り、自分たちの文化や暮らしを尊重してくれるとなれば、歓迎しないものは少ないでしょう」
「そう思ってくれているなら、良かった」
「そういえば、今回の会議の後に、アブデュル王と会談をするとの事でしたが、準備はよろしいので?」
「うん。今回はずいぶんと前から決めていた内容だから!」
「わたしには推し量りかねますが、成功をお祈りしております!」
「ありがとう」
そんな会話をしていると、そろそろ着く頃になっていた。スエズ運河に着くと、やっぱり見慣れない軍艦に、街は軽くパニックになっていた。
わたし達はそんな民衆を横目に、今回の会議の会場へと向かっていた。そこに着くと、一際大きな建物の玄関にアブデュル王自らが出迎えてくれていた。
「アブデュル王。ご自身自らお出迎えとは、ありがとうございます」
「何を言う。我ら盟友の中の盟友ではないか。友を迎えるのは当然であろう」
「それはありがたいお言葉です。それで、他の吾人は既に到着されているのですか?」
「ああ。ブルベル帝国、オルン王国、ホルス帝国、スペル王国、ポルスガル海上帝国の各大臣が既に居るぞ」
「国王や皇帝の方々は来ないんですね」
「そうだそうな。我々の力不足かもしれんな。ともかく、早く会議室へ案内しよう」
「はい。よろしくお願いします」
建物の中にはレッドカーペットが敷かれ、オズメン帝国の王宮程ではないが、豪華絢爛な装飾がされていた。
会議室に入ると、どう見ても歓迎ムードではなかった。やっぱり、ぽっと出のアジアの国と軽視しているのだろう。実際の影響力を持った版図では、この中でもトップクラスなんだけどね」。
「それでは、始めようか」
アブデュル王の言葉を最初に会議は開始された。率直に言えば、酷いものだった。スエズ運河の通行料を安くしろなんてのはまだましで、ブルベル帝国は自分達にスエズ運河の利権を債権の担保としてよこせとまで言ってきた。わたしはオズメン帝国の方を持ったが、ほぼタコ殴りで、ブルベル帝国との関係がいまいちなオルン帝国やスペル帝国は中立の立場を保っていた。ブルベル帝国の邪魔はしたいが、アジアの国のみ方はしたくないってか。凝り固まったプライドだ。
結果としては、スエズ運河の通行料の削減と軍艦の通航制限を緩和する事で話は纏まった。しかし、これはオズメン帝国の負けと言っていいだろう。
わたしと、アブデュル王は予定通り、二国の会談へと向かった。
会談室に入り、一息つくと、会話が始まった。
「しかし、先ほどの会議は正直、我々にとって利益は少ないものでしたね...…」
「これでもこの会議は国交の維持に大きな影響がある。開催しないわけにはいかんのだ」
「アブデュル王。このままでいいんですか! このまま西の帝国らに搾取され続ける日々が続けば、国民の幸せには続きませんよ」
「分かっておる。しかし、経済的にも、軍事的にもどうしようもない...…」
「それなら、わたしに良い考えがあるんです。これは、わたしの夢であり、アジアの希望になるでしょう...…」
会談後、世界中に驚くべきニュースが駆け回った。
『アジアの新星帝国 大日本帝国と 欧州とアジアの要所 オズメン帝国が軍事的大同盟締結!? その名は、”大東亜共栄圏”!!』
構成国は、大日本帝国、オズメン帝国、インドシナ連邦国、朝鮮国、満州国が加盟。それに続いてモングル王国、ウイングル王国、チーブ王国が加盟した。
アジアに住まう民衆の生命と資産を守り、発展させるために結成された軍事的かつ経済的同盟、
”大東亜共栄圏”の設立は、西の帝国に住まう、民衆、軍部、貴族、王族に至るまで広まり、これからの世界情勢に大きな影響を与えるだろう。




