第伍拾伍話 新たな道
始との戦争が終結し、暫く経った。わたし達の指導の下独立したインドシナ連邦国、朝鮮国、満州国
は順調にわたしを君主とした立憲君主制の自由民主主義国家としての体制を成り立たせつつある。その一方で今各国は治安回復と憲法制作に追われているので、とりあえず今は我が国の政治顧問団が各国の統治を行っている。因みに憲法が制作され、議会が開催され始めたら、ちゃんと統治を現地の住民に任せることになっている。そして、懸念点だった満州国の共産主義者達だったが、労働者達への手厚い保護を大日本帝国を含む各国で宣言した結果、極端な思想の者以外は今のところ納得してくれているようだ。しかし、何時でも反乱を起こしてもいいように備蓄していただろう武器や食料は少量しか見つかっていない。これは始の監視体制が強かったという事で納得できない事もないのだが、兵士や指導者を名乗る人物も軒並み消えている。どうもそこが気になって仕方がない。
「姉さん。失礼します」
事務室の扉が開くと葵が入って来た。
「葵どうしたの?」
「はい。シベリア出兵を行っている第三師団、と第四師団からの報告がありました。第三師団は樺太と千島列島に沿って北進。カムチャッカ半島に上陸。そのまま北極海を目指すとの事です」
「うん。第三師団は順調そうだね。でも、第四師団は? 確か満州国の国境から北上してたよね?」
「はい。それが、直ぐにモスコーロア帝国の領土と面しまして、争いを避けるため直ぐに満州国境へ引き返しました」
「そうか~。やっぱり始との戦争で時間食ったからなぁ。まぁ、カムチャッカ半島までは行けたんだからいいじゃない」
「しかし、始との戦争で時間を食ったとは言え、流石にモスコーロア帝国の拡大が早すぎます。ウラル山脈に手こずっていたとも聞きますし、この世界の文明レベルではとても有り得ない……」
「となると、やっぱりカミツレが一枚噛んでるか」
「そうでしょうね。でないと有り得ません」
「そうか!! 満州国に居た共産主義者達も満州国が独立するタイミングでモスコーロア帝国に亡命。そのままボルシェビキに加担しているのでは!!!!」
「なるほど。その線は有り得そうですね」
「そういえば、オズメン帝国経由でモスコーロア帝国に接近する計画はどうなってる?」
「その件なのですが、既に使いの者がこちらに向かっているようでして、シベリア遠征の英雄を始の領土の満州経由で向かわせたと連絡がありました」
「となると、今はそこは満州国になってるわけで……」
「はい。報告のラグを考えたとして今頃は満州国内には居るものと思われます」
「シベリア遠征の英雄ね……」
「まぁ、彼女でしょうね」
「だろうね。なら、こっちはシベリア遠征の英雄様をお迎えする準備をしないとね」
「そうですね。そうだ姉さん。お迎えは新皇居で行いますか?」
そう。実はジパング王国併合と同時期に元源ノ宮家の居城江戸御所後に新しい皇居及び政府機関の建築を開始していたのだ。それらができ次第、我々は遷都。晴れて故郷への帰還を果たすという事だ。その情報を聞きつけた商人や元ジパング王国の公家達も我先にと江戸に店や屋敷を建て始めているようだ。最初から賑やかな都になりそうで内心楽しみにしている。
「そうだね。そっちの方が面白そう」
「では、更に急ぎで支度を済まさせます。ところで、我々が遷都した後のここの守りは誰に任せましょう?」
「そうだね~。よし。中東方面ももう落ち着いただろうし、中東領土をアラブ自治領とする。そして、政治顧問団を現地に残し、忠正君と満月ちゃんを本国に呼び戻し、それぞれ台湾守護と沖縄守護を任せる。メルテムさんはそのまま中東方面艦隊司令官兼政治顧問として残ってもらう」
「わかりました。そのように手配します。では、失礼いたします」
はぁ、やっと帰れる。




