第肆話 サンパチ
わたしの言葉を聞いて困惑し、アルゴさんとアルナさんは焦っていた。
アルナさんは三秒ほど固まった後、空いたままの口を動かした。
「い、今なんと?」
わたしは当然のようにアルナさんに返した。
「だから、我々はインス村に侵攻します」
「そんなことは不可能です!我々の常備兵は百名しかいません!男どもをかき集めても、三百程、インス村は常備兵だけで五百余りですよ!」
「落ち着いてください。
勿論、無策ではありません」
わたしは手を前にかざして人型を想像した。
すると、わたしの目の前に日本兵の格好をした人形が魔法陣の中から現れた。
それと同時にわたしのスキル、臣民兵召喚が二十四時間フリーズ状態になった。
その場にいた全員が驚いていたが、一番心の中で驚いていたのはわたしだった。
なんせなんとなくやったらできてしまったのだから……。
「これはわたしのスキルで召喚した兵士です。
わたしの命令次第では死ぬまで戦います。
今は一日一体しか出せませんが……」
「ですが、武器はどうするんですか?我々には狩りで使うための弓矢や、槍が少しあるだけで、剣や盾はほぼありませんよ」
「それなら大丈夫です。
友美ちゃんお願い」
「了解。
何度か試したけど今のところパットできるのはこれくらいね」
そういうと、友美は三八式歩兵銃を十丁程、目の前の空間から出した。
「わたしも今は一日十丁が限界かな。
でも試しで出したのも合わせたら二十丁あるよ」
一二三はその内の一丁を持つとじっくり眺めながら話し出した。
「まあ、第一次大戦時の銃だが、今のところは穴埋めだけでもいいから銃が欲しいしな。
それに第二次世界大戦でも使われてたし、別にいいんじゃないか?」
わたし達が本物の第一次世界大戦で使われた銃が現れて興奮していたころ、アルゴさんとアルナさんは首を傾げていた。
アルゴさんは恐る恐る手を挙げると、三八式歩兵銃を指さしながら聞いてきた。
「これは、どういった武器なのですか?先に刃は付いていますが、槍ではないですよね……?」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
今度はわたし達は首を傾げた。
すると、瞳ちゃんが聞き返した。
「ひょっとして、銃をご存じないのでありますか?」
その質問にアルナさんが答える。
「西の帝国の兵士の一部が持っていましたが、ほとんど大きな音が鳴るだけの物と認識しています」
なんとこの世界ではまだ銃が発達していないようだった。
そしてその発言に瞳ちゃんが素早く反論した。
「この三八式歩兵銃はそんな物じゃありません!わたしがこれの真の力を説明しますんで表に出てください!」
そう言うと瞳ちゃんは三八式歩兵銃を一丁持って外に飛び出して行った。
それと同時に一二三が頭を下げた。
「すみません。
うちの瞳が……。
とりあえず、一緒に表に出ていただけますか?」
わたし達は二人を連れて外に出ると、既に瞳ちゃんが準備をしていた。
地面に置かれた目印から五十メートル程離れた場所にスイカが五つ横並びで机の上に置かれていた。
「友美殿!これはもう弾が入っているのでありますか?」
「なんか勝手に装填されてたから、平気だと思うよ」
「了解です!アルゴさん!アルナさん!よく見ててくださいね!」
そう言うと瞳ちゃんはスイカに照準を合わせると、一発目を撃った。
鳴り響く銃声。
辺りは騒然としていた。
弾は当然のように一つのスイカに命中した。
瞳ちゃんは周りの動揺には気もくれず、二発目、三発目、四発目、五発目と撃ち込んでいき、全てそれぞれのスイカに命中した。
五つあったスイカは全て爆散していた。
村中の人は顎が外れるくらい口を開けて唖然としていた。
その中で、アルナさんが口を動かした。
「あ、あの。
これは……」
すると、瞳ちゃんがあまりない胸を張って高らかに言った。
「ふふん!これが三八式歩兵銃です!!」
アルナさんは瞳ちゃんの手を握ると、目をキラキラさせて頼み込んだ。
「是非、この武器の使い方を教えてください!」
すると瞳ちゃんは困った表情でわたしの目を見てきたので、わたしが代わりに答えた。
「それはいいですが、兵士の指揮権は我々に譲ってください」
「それはつまり、実質的にあなた方がこの村の実権を握ることになるのでは?」
それに対しわたしは笑みを浮かべながら答える。
「実質ではありませんよ。
我々はこの島を統一した後、この島の支配権をいただく予定ですから」
するとアルナさんは怒り狂ってこっちに向かってきた。
満月ちゃんと忠政君がわたしを守るようにわたしとアルナさんの間に立った。
「ふざけたことを言わないでください!!いくら勇者様と言っても、あまり思い上がらないでください!!」
「いいですよ。
認めていただけなければ、わたし達は協力しませんので」
「ぬッ!」
その間に落ち着いた様子のアルゴさんが入ってきた。
「この村はわたくし達が地道に作り上げてきた村。
そう簡単に支配権をお譲りするわけにはいかないことはご了承ください。
一つご提案なのですが、そちらの一人とこのアルナで素手で腕試しをして、勝った方の言うことを聞くというのはどうでしょう?」
「分かりました。
では、少し話し合いをさせてください」
わたしたちはアルゴさんの家の裏に行き、話し合うことにした
「わたし的には、この中の銃剣道上位二位の友美ちゃんか忠政君が適任だと思うけどみんなはどう?」
「俺も同じ意見だな」
「どっちにするかはアルナさんがスピードタイプかパワータイプによるやろうな」
「見たところ、アルナさんは身長、筋力量共にバランスが良いので、バランスタイプだとわたしは思います」
「そんなことより、わたしに行かせて欲しいのであります!わたしが見栄を張ってしまった手前、わたしに責任を取らせて欲しいのであります!」
「いや。
瞳ちゃんには悪いけど、ここは相性優先でいく。
わたしの予想ではバランスタイプの中でもパワー寄りの感じがするから、忠政君でいく」
「めんどくさい……」
「忠政君頑張って!」
「わたしじゃないのが悔しいでありますが、またの機会に取っておくのであります!」
「頑張りたくない……」
相変わらず忠政君はローテンションだったが、彼は決してなめてはいけない。
写真→wikipediaより