第肆拾漆話 転換
わたし達は条約を結んだ後、一時的にやまとに戻っていた。わたし達はわたし達で今回の戦後処理と我が大日本帝国の今後に関する話し合いをしなければならない。
という事で今回は、思念伝達でやはぎから参加する栗林夫婦を含めた転移組全員、アルナさん、メルテムさんそして本国から呼び寄せた財務大臣アルゴさんと建築大臣ワークナーさん、沖縄総督ショウシさんの大日本帝国の要人の殆どが参加する御前会議inやまとなのだ!
「いや~やっぱりやまとホテルって言われるだけあって良いよね~。幸樹ちゃん。後でみんなにラムネ持って来させてよ」
「その、陛下。実は、このやまとは消火設備も一新されてまして、このやまとには炭酸ガスを発生させるものが無く、その、ラムネ工場はありません!!」
「なんだってー!! おい!! 一二三どういうことだ!!」
「だって現代の消火設備が使えたんだからそっちの方がいいでしょうよ!」
「それはそうだけど、やまとの長所を消してどうすんだよ!」
「そんなもん長所に入れるな!! そもそもあれは『ついで』で付けられたもんなんだから!」
「うるせーーーー!! やんのかチビ!!」
「天皇だからって横暴が過ぎるぞ!」
「今から会議を始めますので二人共落ち着いてください。仲がいいのは分かりましたので。皆さんには
後で私が持って来たとっておきの泡盛を振舞いますので」
「よし。分かった」
「では、お二人が落ち着いて、ショウシさんが陛下の扱いが分かってきたところで、御前会議を始めさせて頂きます。いつも通り、司会はわたくし白雪 葵が行わせていただきます。今回の大きな議題はアラビア半島の領土と例の小銃についてです。
まず、アラビア半島の領土についてですが、栗林さん。牛島さん。現状の報告をお願いします」
「はい。では、牛島から説明させて頂きます。既にこちらは三日前にクウェートの港に到着しており、オズメン帝国のからの引継ぎも完了しています。元々居た官僚の方々にはアラビア連邦国の承認要請書を預けましたので、後ろ盾も大丈夫です」
「了解。それで?原住民の反発は?」
「はい。我々も十分警戒していますが、今のところは特に何もありません。植民地とは言っても、自分達の国家とある程度の自治権はありますし、寧ろ石油プラットフォームによって生まれるインフラの充実化とそれらの雇用増大で歓迎されてるまでありますね」
「それは良かった。原住民への配給なんかも上手く行ってる?」
「正直そこはいまいちですね。ここの原住民の殆どは遊牧民ですし、沿岸部の港とその周囲にしか行き届いていないのが現状です」
「ですが、逆に考えると、遊牧民だからこそ、フットワークが軽く、配給が行われている港やその周囲の集落に人が集まりつつあります」
「なるほど。了解。こちらも出来るだけ陸地の輸送手段と輸送船の量を増やす事に尽力する。出来るだけ多くの、そして奥地の人々に配給が出来るようにして」
「「了解しました」」
「友美ちゃん。砂漠用の車両の用意はどうなってる?」
「トラックなんかは砂漠用に改良して一回目から送ってるけど、戦車や装甲車はまだね。どうしても中の人が蒸し焼きになっちゃう」
「分かった。一応隣国はオズメン帝国とその友好国だけど、万が一があるし、相互安全保障条約を全うする為にも機甲部隊は編制しておきたい」
「了解。尽力するわ」
「一二三も、輸送船の数は増やせるね?」
「勿論。最近は交易する機会が増えてきているので、民間の造船所には急ピッチで輸送船を作らせてる」
「食料の方も我々財務省で資金をかき集めておりますのでご安心ください」
「建築省も今急ピッチで造船所の数を増やしている」
「分かった。とりあえず、食料の方は大丈夫そうだね。それと、防衛面の話になるんだけど、ペルシャ湾からインド洋にかけての防衛の為に中東方面艦隊を編成したいと思んだけど、葵、できそう?」
「それなら、急ごしらえとして、今建造中の古鷹型重巡洋艦一隻、球磨軽巡洋艦二隻、樺型駆逐艦四隻これらの中から回せないことはありません」
「一応、陸軍大臣として聞いておくけど、今回はどんな魔改造させられたの?」
「今回はレーダー性能と艦内環境の改善、それとエンジンは近代的なディーゼルエンジンを採用してあります。本家よりエンジンが稼働するまでの時間を短縮できてますし、燃料効率も上がってるので大日本帝国の本島からアラビア半島の南部までなら比較的余裕を持って航行可能ですが、クウェートまでは正直ギリギリですね」
「おや? 葵殿。今回は随分と控えめありますな?」
「ええ。今回は陛下と一二三さんの助言は本当に助言レベルに抑えておいたので」
「原子力とかVLSとかの技術が無くなってるけどまぁ、可愛い弟の設計だしいいか」
「とは言っても、この世界ではこれでも十分オーバースペックでありますが……」
「一二三的にはどう思う?」
「ああ。現状、我が本土には、長門型戦艦二隻、護衛艦やまと、空母赤城、もがみ型護衛艦四隻があるから、現在建造中の計七隻と現在にいるやはぎを交換する形ならば問題ないと思う」
「一二三殿! 沖縄総督のわたしから言わせていただくと、そんなにも新造艦を送って本国の守りは大丈夫なのでしょうか? 交易も広まっていますし、前回の以上の大艦隊が押し寄せてくる可能性もありますぞ」
「本国の防衛はわたくし、海軍大臣山本 一二三が責任を持って行いますのでご安心ください」
「あたくし、陸軍大臣山下 友美も補償いたします。もしもそこのチビがうち漏らしても水際で瞬時に撃退して見せます」
「ん? 今チビって言ってか?」
「言ってない」
「言っただろ! てめー!」
「ははは! 流石、陛下の両翼、いや、両山のお二人は頼りになりますなぁ。分かりました。防衛はお二人に託して、これかも沖縄を益々発展させて見せましょう」
「頼りにしていますよ。ショウシさん」
「はい!」
「それと、アルナさん。中東方面の部隊の訓練はどうなっていますか?」
「はッ! 環境の変化にも強い臣兵を中心に中東派遣大隊を編成しております。翌日の一番に出発する補給船と共に派遣する予定です。トラックなども既に現地に送っているため、入植はより順調に進むものと思われます」
「分かった。これからも尽力して欲しい」
「はッ!」
「では、丁度防衛面の話になりましたし、例の小銃の話をしましょうか」
「そうだね。まずみんなには鹵獲された実物を見て欲しい」
葵は部屋の隅に置いていた小銃を持ってみんなの前に掲げた。
「こちらが例の旧ジパング王国天皇軍が使っていた小銃です」
「ちょっと待って! それって! あたしの目がおかしいんじゃないわよね!」
「わたくしからすると、我が国の物と似ているような気がしますが」
「いえ。父上。わたしは三八式をずっと見てきましたが、これは全くの別物です」
「やんな! あれやんな! こんなん絶対あれやんな!!」
「いったい何なのです! 我々にも分かるように言ってくだされ」
「ワークナー殿。これは三八式歩兵銃に並ぶ名銃モシン・ナガン」
「そうです。初期型とは言え、これは紛れもないモシン・ナガン」
「かの白い死神シモヘイヘも使用したというモシン・ナガンが既にこの世界にはある」
「せやけど、この世界の技術レベルを考えたらオーバースペックやろ! まだ火縄銃使ってんねんぞ!」
「そう。でもこれがジパング王国に譲渡された事は事実。それも大量に」
「葵君どこから譲渡されたかは分かってるの?」
「ええ。不確かではありますが、遠い北の国から来たカミツレと名乗る銀髪の女性がこれを置いていったそうです」
「遠い北の国でモシン・ナガンね~。メルテムさん。オズメン帝国の北部に広大な土地を持った大国ってあります?」
「ありますとも! モスコーロア帝国という大国が」
「あ~。絶対そこね」
「メルテムさん。その帝国が急に軍備を増強し始めたとかの情報は無い?」
「はい。陛下。確かに軍備は増強していますが、このような小銃は使っていませんし、どちらかというと反乱に備えてという感じですね」
「その反乱勢力がどんなのかって分かる?」
「そうですね。社会主義とか言う労働者の為の思想の集団がメキメキと力を付けてきていると聞きましたが、とても労働者ごときが国家への反乱を成功させられるとは思いませんね」
「「「「「「「はぁ~……」」」」」」」
「ど、どうしたのです? みなさん?」
「メルテムはん。その集団の組織名って分かります?」
「ええ。噂には聞いた事があります。確か~、なんでしたっけ……」
「当ててあげましょか? さあ、みなさんご一緒に!!」
「「「「「「「「ボルシェビキ!!」」」」」」」」
「あー!! そうです! そうです!! よくみなさん分かりましたね。もしかして、人の心を読むスキルもあるんですか?」
「いや、これはわたし達の世界にも昔存在した組織でね。なんとびっくり、帝国への反乱を成功させて世界で初めての社会主義国家を建国しちゃったのよね……」
「え。だとするともしかして……」
「そうね。しかも恐らくわたし達と同等レベルの技術は持ってそう。それどころか、わたし達と同じ異世界からやって来た人物が主導している可能性がある。いや、ほぼ確実にある……」
……。
「メルテムさん。そのモスコーロア帝国が領土をどこまで東進させてるかって分かる?」
「わたしが最後にオズメン帝国を出た時の情報ですと、大きな山脈に苦戦しているとか」
「ウラル山脈だな。だとしたらまだ太平洋側には未だ着いていないはずだ。どうする。陛下」
「よし。ジパング王国と協力し、迅速に北への領土拡張及び、入植を開始せよ! 忠政君は引き続きアラビア半島の発展を進めて! 満月ちゃんはオズメン帝国を介してモスコーロア帝国とコンタクトを取って。悪いけど、葵にはまた向こうに行ってもらわないとね」
「姉さんの代わりに色んな物を見て聞く事が僕の役目ですから。お任せください」
「うん。頼んだよ」
「急を要する事態になりましたので、今回の御前会議はこれにて終了いたします。各自、関係機関との連携を取って事態に対処してください」
「「「「「「「「「「「はッッ!!」」」」」」」」」」」
謎の女性カミツレね~……。一度会ってみたいね……同士カミツレ……。




