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第肆拾伍話 ジパング開放戦(下)

 第二フェーズが完了した翌日、その事を聴いたわたしは、みんなに向けて命令を下した。


『ジパング本州、そして四国に上陸を開始せよ。第三フェーズを開始する』


 その命を受けた近衛師団の友美ちゃん率いる桜とウミちゃん率いる梅及び新天皇軍は福岡から山口に上陸し、四国への上陸はアルナさん率いる第一師団が行う事になった。

 そしてそれぞれの上陸支援だが、本州隊は幸樹ちゃん率いる第一艦隊、四国隊は一二三率いる第二艦隊が行う事になった。

 それぞれの部隊が支度を済ませ、輸送船が出発。輸送船内ではウミちゃんが下を向いていた。


「ウミ様。どうかしましたかにゃ?」


「え?」


「ウミ様。あんた、今更思い詰めても遅いで」


「でも、わたしのせいで皆さんが……。それにこれからも……」


「そんなの、ウミ様のせいではありません! 僕達は自分の意志で動いています! この度の事で誰かが責任を取らなければならないのであれば、我々が取ります。なのでウミ様。そんなに気を落とさないでください」


「ありがとう。シグレ。みんな、頑張りましょう!」


「「「おーーーー!!」」」


 するとウミちゃんの下に わたしから思念伝達が届いた。


『ウミちゃん。今頃海上でしょ? だったら、一緒にいつものやろうよ!』


「え!? 葵姫ねえ様! ちょっと待っ」


『せーーーーのッ!!』


『「皇国の興廃この一戦にあり! 各員! 一層奮励努力せよ!!」』


「「「「「おおおおぉぉぉぉーーーーーーッッ!!」」」」」


 海上な為、ウミちゃんにはそこまで聞こえなかったが、みんなの強い思いと希望声は良く聞こえた。

 上陸しようとした時、本州では少数の兵しか待ち受けていなかった。やはり敵内部は大混乱になっているのだろう。第一艦隊のヤマトともがみは港ごと破壊する勢いで支援砲撃を繰り返し、本州隊は山口の港を無傷で解放した。一方、四国隊だが、こちらは逆に予想以上の数、約一万五千の兵が港で待ち受けていた。四国は狭いが為、地元愛を沸き立たせやすい。よって、統率がしやすく現地の大名が上手く結束できたのだろう。

 一二三はその敵数に頭を抱えていた。


「こりゃ厄介だな。零戦の機関銃で掃射するにも時間がかかるし、かといって無理やり上陸するには数が多くてかなりの損害がでる……」


 そこに、くまのからの連絡が届いた。


「一二三さんよ! こいつら、あたしらがやるぜ!」


「今回は我々の船に慣れてもらう為に、特別に乗船している事を忘れたのか? あなたには決定権は無い。メルテムさん」


「でもよ! 事実上今はあたしがくまのの艦長だし、くまのなら一瞬だろ?」


「それもそうだが、流石にあの量はな……」


「ここはドーンと行くべきだ!」


「分かりましたよ。ではまず、もがみの対艦ミサイルを十発撃ち込んでから、上陸を開始し、それと同時に零戦による機関銃掃射を行う」


「了解! 対艦ミサイル一番から十番まで発射準備! 目標港に蔓延る賊軍共!」


チリリリリリンッッ!!


「うてーーーーッッ!!」


プシューー!!……ド――――ンッッ!!……。


「対艦ミサイルの着弾確認! 航空隊発艦開始!!」


 一二三の号令で赤城の航空隊は港に飛び立ち、機関銃掃射を開始した。それに合わせて四国隊は港に上陸、混乱する敵に対し、三八式の鉛弾と新規採用した九九式軽機関銃をお見舞いした。

 これにより、四国隊には多少の負傷者が出たが、それ以外には殆ど損失は無かった。

 こうして、上陸自体は成功と言えるだろう。上陸した三師団はそれぞれ補給地点を整えると、東へ東へと進軍していった。本州では機甲大隊で前線を素早く突破し、敵を歩兵と協力しながらみるみる包囲そして殲滅していった。その頃四国では、アルナさん自らが先導し、進軍していた。偶発的に敵と遭遇したが、この時もアルナさんは自ら前線に立ち、「かかれ」の号令を放ちながら己も敵に鉛玉を撃ち込んだ。

 この時の様子と日々の教官としてのアルナさんを見て兵士達はアルナさんの事を「かかれアルナ」、「鬼神アルナ」と呼ぶようになった。

 このアルナさんの行動は兵士達を鼓舞させ、主力を失った敵四国軍では足止めにもならなかった。

 一方その頃、長崎を始めとした九州の空港や赤城から発艦した航空隊は前線を中心に日本全土の軍事施設を爆弾や機関銃で攻撃していた。当然、民間人にはなるべく危害は加えないようにしてある。そんな事したら、ジパングを開放してから問答無用で極寒地獄送りにしてやる。

 わたし達は本州と四国上陸から二か月もかからずに機内に入ろうとしていた。え? 九州の時はもっと早かっただろうって? あの時は九州を前哨基地として素早く開放したかったし、ウミちゃんの同志の多くが九州各地に収容されている事が分かったからね。その場所を探す為にも急いだってわけ。まぁ一番大きいのは機内から離れてるってのもあって、裏切ってこっちに着く家が続出したから実のところ、殆ど九州を横断しただけなんだよね。

 そして今回無理のない範囲にしているのは敵に恐怖と不安を与える時間、そして、敵を裏切ってこっちに着く時間を与えてるってわけ。報告によると敵の戦力は関東を中心に全体の約三割が離反してるみたいだから、うまい方には行ってるね。

 さて、現天皇は今どんな顔してるかな?


 京の宮城ではみな出陣の準備で大忙しだった。そんな中、現天皇はという城内で暴れまわっていた。


「おのれーーーーーー!! あの出来損ないの妹が! 世に刃向かいよって!! 源ノ宮家が巨大な鳥に壊滅されなければこうはならなかった!!」


 そこに、慌てて家老のおじいさんが慌ててやって来た。


「陛下ーーーー!!」


「なんじゃ! なんじゃ、じいか。まさかあ奴らが攻めてきたのか?」


「いえ。北のはるか遠くの国からわざわざお越しくださった方がおりまして、我らに大量の何やら変わった火縄銃を渡したいと申しております」


「真か!? 今は少しでも武具が欲しい。ぜひ会いたい!」


 現天皇の待つ部屋に入って来たのは、色白の肌に、長い銀色の髪を持った若い女性だった。


「この国で挨拶はこんにちはですよね? こんにちは。わたしはここから遠い北の国からやってきました。そうですね。カミツレとでも名乗っておきましょう」


「この度は遠いところお越しくださり、誠に感謝いたす。残念ながら少々立て込んでおるゆえ、まともな歓迎も出来ずに申し訳ない」


「いえいえ。その気持ちはよく分かりますよ。ところで、この国はホルス帝国に武器を供与されているとか」


「はぁ」


「それはいけない。あれらの国は現状悪者達がはびこっています。直ちにやめて我々の援助を受けてください」


「折角来ていただんじゃ。受けさせて頂きたい。このいざこざが終わったら是非とも贔屓にしていただきたいものじゃ」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 女性はそう言うと、大量の銃を置いて宮城から出て行った。

 その頃、我々はというと、本州隊は元の世界の兵庫県と京都府の南の境目と京都北部から京を挟み撃ちするように迫っていた。そして四国隊は淡路島に上陸後、その日の内に元の世界の大阪へと上陸を果たした。

 この時、わたしもジパング王国に上陸し、前線の司令部で友美ちゃんと共に全体の指揮を執っていた。それに京に入る時はウミちゃんとわたしが一緒に入れば協力関係が住民にもよく分かるしね。

 この報告を聞き、現天皇軍はここしかないと判断し京の郊外で待ち受けることにした。

 そして恐らくこの開放戦の最後の戦が幕を開ける。こちらの戦力は近衛師団の桜、梅、第一師団、そして新天皇軍、合計五万人程。それに加えて日本海に展開する赤城の航空隊と長崎の空港から爆撃隊が戦場支援として参加する。対して敵の兵数は約八万人。不安定な情勢の中、周辺から無理やりかき集めたのだろう。それに、中には現天皇軍にしては珍しい銃を持っているとの報告もあった。

 だが、わたし達はそんな事を気にしても、そこまで戦況に変化は無いだろうと判断した。

 わたしは丘の上に立ち、いつものやつをすることにした。


『総員に告ぐ!! 今こそ新たなる日が昇る時なり!! 各員一層奮励努力せよ!!』


「「「「「おおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!」」」」」

 敵から攻撃を開始したが、やはり射程が全然違う。火縄銃を撃ち込んだり、刀で切りかかるよりも先に敵には鉛玉のカーテンが飛んでくる。当然こちらに着く前に敵はほぼ壊滅。

 唯一気にかかったのは例の銃を装備した部隊だった。彼らの銃は三八式歩兵銃と同程度の射程と威力有している。予備の備蓄が盗まれたのだろうか? まぁそんな事を言っていても仕方ない。わたし達は機甲大隊をその部隊の対処に当たれせた。流石に大和魂式装甲でも多少改良してるし銃弾位は耐えれるだろう。多分!

 その作戦は結果的に吉となり、例の銃を装備した部隊は八九式中戦車の砲撃とその装甲の前に壊走。

 これによって殆どこの戦いの決着はついた。敵天皇はそれを聴いて逃げ出したが、航空隊が追尾した。敵天皇は新天皇軍の皆さんが急いで追いかけて、我々の情報提供もあり、直ぐに捕まった。

 そしてわたし達はウミちゃんとわたしを先頭に堂々と整列し抜刀隊を熱唱しながら京の宮城に向かって行進した。

 わたしは住民には恐れられると思っていた。その予想はあながち間違っていなかったが、ウミちゃんの姿を見ると人々は安心して我々を迎え入れた。

 一先ず、これにてジパング開放戦は終了と言えるだろう!

 みんな。お疲れ様!!


 京から少し離れた場所に丁度戦場を見渡せる山があった。その山頂付近ではこの時、一人の銀髪の女性とメイドが共にお茶をたしなんでいた。


「やっぱりしっかり訓練しないとだめね。それにしてもこの世界に戦車がもうあるなんて意外ね。それもこんな極東に……。あの演説してた白髪の子、なかなか侮れないわね。もしかしたらあの子は……」


「ご主人様。この後はどうなさいますか?」


「こうなったら仕方ないから、一旦祖国に戻るわ。手ぶらなのは癪だけど。それと、ご主人様ってのはやめてよね」


「承知しました。同志」


 ここで銀髪の女性はジャムを舐めると、紅茶を一口飲んだ。


「はぁ~あ。まあいいわ。今日のお茶は美味しいし」


「荷物になると思っていましたが、折角ですし、にほ、いえ、ジパングのお茶も持ち帰りましょうか?」


「そうね。緑茶もなかなか美味しいし」


「それでは、そろそろ行きましょうか」


「えぇ。祖国の同志ちゃん達が待ってる。それじゃ~元気でね。白髪の同士ちゃん」

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