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第参話 アルナ

わたし達は翌朝、早速アルゴさんにに協力する事を伝えるためにアルゴさんの家に行こうとした。

するとまだ朝も早いのに村のみんなは祭り事の準備をしていた。

家々は色鮮やかに彩られようとしており、踊りに太鼓や笛の練習も行われていた。

わたしは、近くを通りずがった女性に尋ねた。

「何か手伝うことはありますか?」


すると、女性は笑顔で答えてくれた。

「いえいえ!勇者様方は何もなさらなくて大丈夫ですから」


「そうですか……。

分かりました」


わたしは手伝いを断られたので、とりあえず女子四人を連れて男子寮に凸ることにした。

わたしが男子寮の扉をノックすると、葵が出た。

わたしは葵に抱き着こうとしたが、葵にいきなり扉を閉められ、わたしは扉に顔面をぶつけた。

すると、満月ちゃんが慌てて近寄ってきてくれた


「大丈夫ですか!?」


「うん。

大丈夫……」


わたしの額と鼻は赤くなっていたが特に血は出ていなかった。

わたしがノックをしながら葵を呼ぶと、葵は扉の隙間から少し顔を出した。

わたしは葵に『ごめんね~』と言いながらまた抱き着こうとした。

すると、また葵は扉を急に閉めて、わたしはまた顔面を扉にぶつけた。

今度は誰も近寄って来てはくれなかった。

「葵姫。

さすがにそれは馬鹿よ」


「こりゃ~。

弁護すんのは無理やで」


「葵姫殿!しっかりしてくだされ!」


「葵姫先輩。

わたしはそんな葵姫先輩も好きですよ!」


満月ちゃん以外にはぼろくそに言われてしまった。

そんなわたしを見かねてなのか、男子寮の扉が開くと、三人とも出てきた。

「姉さん。

学んでください」


「昨日のかっこいい葵姫はどこ行ったんだ?」


「人間は学ぶ生き物……」


男子からもぼろくそに言われ、わたしはその場に崩れ落ちた。

「それで、姉さん方は何しに来たのですか?」


わたしは、顔もメンタルもズタズタになっていたが、立ち上がると葵の質問に答えた。

「わたし達はアルゴさんにこの村に協力することを伝えに行くのと、作戦立案の為に台湾の地図をもらいに行こうかと思ってね。

ここに来た理由はみんなで行った方がいいと思ってね〜」


「そういうとこはしっかりしている……。

けど、日常生活があんなことになるのは何故……?」


忠政君の指摘にわたしは何も言えなかった。

今回は満月ちゃんのフォローも無かったので、わたしは大きな精神的ダメージを負った。

みんなからは本当にこいつが天皇で良いのか?というような雰囲気が感じ取れたが、そんなことではわたしはくじけない!わたしは改めてみんなを見て高らかに言った。

「そんなことより行くよ!」


わたしたちは村長の家に行くと、サガちゃんが出迎えてくれた。

「サガちゃん!出迎えてくれてありがと」


「どういたしまして!ゆうしゃしゃま!」


あ。

可愛いわ。

何この生き物。

可愛いわ。

わたしがサガちゃんにでれていると、後ろからポンッと肩をたたかれた。

「お前。

ブラコンだけでなく、ロリコンにも目覚めたのか?」


「僕は姉さんの趣味を尊重しますよ」


するとみんなは何か諦めたような顔つきになり、頷き始めた。

わたしは慌てて、皆の方に向きを変えた。

「違うから!そんな趣味はないから!このサガちゃんはわたし達の命の恩人で、アルゴさんの孫だから!」


「ろりこん?」


サガちゃんが訳が分からない様な雰囲気で首をかしげていた。

すると、一二三がサガちゃんに近づき、サガちゃんの頭を撫でながら、笑顔で言った。

「そんな言葉覚えなくていいからな~。

この悪いお姉ちゃんに何か酷いことされなかったか~?」


わたしは、思いっきり一二三の頭を叩いた。

「してねーわ!!」


「はい!ゆうしゃしゃまはいい人です!」


それを聞いてみんなは安心したようだが、何故かわたしへの冷たい視線は変わらなかった。

わたしはそんなことはもう置いておいてサガちゃんの目線に合わせてかがんだ。

「サガちゃん。

今アルゴさんいる?」


「います!用事ですか?」


「うん。

アルゴさんに報告とお願い事があって」


「わかりました!どうぞ!」


わたし達が家に入ると、前と同じく玄関前直ぐにある大広間でアルゴさんが座っていた。

ここがアルゴさんの定位置なのだろう。

「アルゴさん!おはようございます」


「おはようございます。

勇者様方。

どうぞ、座ってください」


その時サガちゃんがてきぱきと人数分の座布団を敷いてくれ、サガちゃんはわたしの膝の上に座った。

アルゴさんは慌てていたが、わたしは『全然大丈夫ですよ』と答えた。

「それで、今回はどういったご用件で?」


「今回はご報告と、お願い事がございまして」


「それは如何なる内容ですかな?」


「わたし達は、この村に全面協力致します。

共に我らに害するものを倒しましょう!」


すると、アルゴさんは飛び上がり、喜んだ!


「これでこのイルゲイナ村は安泰じゃ!」


あ。

この村の名前ってイルゲイナって言うんだ。

そういえば初めて聞いたな。

アルゴさんは永遠に喜んでいるので、わたしは話を進めた。

「それでアルゴさん!お願い事なのですが」


「ああ。

そうでしたな。

すみませんすっかり浮かれておりました故。

それで、なんですかな?」


「作戦立案の為に、この辺りの地図が欲しいのです」


「勿論献上いたしますとも!作戦を立てるなら、この辺りをよく知る兵士がいるといいじゃろう。

これサガ!アルナを呼んで来るのじゃ!」


「はーい!分かりました!」


サガちゃんは立ち上がると、そのまま走って家を出て行った。

わたしはサガちゃんが帰って来るまでにアルゴさんに素朴な質問をした。

「アルゴさん。

サガちゃんはだいぶしっかりしていますが、歳はいくつですか?」


「あの子は今年で十一になります。

今は背が低く幼子の様ですが、きっと母親のように美しい娘になりますよ」


結構背が低かったのと、喋り方が幼かったので八歳くらいかと思っていたが、意外だった。

でも、十一歳でもしっかりしている方ではないか?

そんなことを話しているとサガちゃんが大人の女性を連れて帰ってきた。

その人は、麻でできた服とショートパンツに申し訳ない程度の防具を施していた。

そして、褐色の肌と引き締まったボディが輝いて見えるほどに美しく、顔もモデルみたいだ。

黒のポニーテールがよく似合っている。

その人は、アルゴさんの隣に座り、サガちゃんは当然のように私の膝の上に座ってきた。

女性もアルゴさんと全く同じ反応をされたので、私も全く同じ返しをした。

「勇者様。

紹介いたします。

この子はわたくしの娘で、サガの母にあたり、この村で兵長をしているアルナといいます」


するとそれに続いて大人の女性の匂いがプンプンする声でアルナさんが話し出した。

「先程ご紹介あずかりました。

わたくしはアルゴ=イゲイナの娘で、サガ=イゲイナの母であり、この村では兵長を務めております、アルナと申します。

この度はこの村にお力添えをしていただき、ありがとうございます。

それに、サガにも良くしてくださっているようで感謝が絶えません。

今回は隣のインス村への作戦計画と聞きました。

大変非力ながらお力添えいたします」


なんて、大人なんだ。

わたしはアルナさんの挨拶に戸惑いながらも、返事を返した。

「よろしくお願いします。

白雪葵姫と申します。

サガちゃんに良くして頂いているのは寧ろこちらですし、今はアルナさんの知識と経験が何よりも力になります」


ミリタリー研究部のみんなはわたしにこんな返しができることに驚き、唖然としていた。

しかし、そんな事はお構いなしに話は進む。

「そう言っていただき、何よりです。

それでは、さっそく、“防衛作戦”を考えるとしますか」


わたしはその発言に笑みを浮かべて答える。

「もちろん、その線も考えますが、我々がメインで考える作戦は“侵攻作戦”です!!」


 その時、アルゴさんとアルナさんの空気ら凍りついたが、わたし達の空気は当たり前だと言わんばかりに燃え上がっていた。

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