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第参拾陸話 印象

 一二三と第一近衛師団<桜>が戻った長門ではアブデュル陛下から頂いた地図を元手に作戦会議が開かれていた。参加者は四名。長門艦長兼第一艦隊長官一二三、長門副艦長カナリさん、第一近衛師団<桜>師団長ウミちゃん、第一近衛師団<桜>師団長補佐官兼副師団長ドーガンさん

 議長は一二三、副議長はドーガンさんが行う。ウミちゃんは日々の特訓の成果もあり、戦術には長けているけど、戦略はまだまだだ。

 え? じゃーなんでそんなウミちゃんを師団長にしたのかって? それはこれから日本列島に進出したら獣人がわんさか出て来るのに、獣人に対して偏見や差別をされては困るからね。だから正直、ウミちゃんを師団長にした理由としては、お飾りと象徴の面が大きい……。え? ただの贔屓じゃないかって? ……。え~。記憶にございません……。


「さてと、ここで圧倒的な力を見せねば、俺達の国は欧州から舐められることになるぞ」


「それに、オズメン帝国に見限られては、せっかくの条約も無かったことになるやもしれません」


「ここは、万が一の為に持って来た九〇式野砲五門に、九四式軽装甲車が十両ある。それを使おう。どうせなら八九式中戦車を見せてやりたかったが、開発が間に合わなかったんだから仕方ない」


「そうですね。だとすれば、マニュアル通りで良いのでは? 歩兵の後方に九〇式野砲を設置し、敵が怯むまで砲撃を続け、敵が怯んだところを九四式軽装甲車で弾幕射撃をしながら素早く突貫し、それに続く形で歩兵が突撃するという、正に我々らしい戦い方」


「確かに、大まかな作戦はそれで良いが、九〇式野砲の砲撃は控えめにしていただきたい」


「その心は?」


「せっかくの機会だ。長門と、陸奥の威力も見せておきたい」


「まさかですが長官!?」


「あぁ、陸軍の能力を見せつけ、全員が退避した瞬間、この要塞に艦砲射撃する」


「しかし、もし流れ弾などが出たら……」


「わたしの部下に、動かない大きな的を外すような者はいない」


「分かりました。わたしも、長官と部下達を信じます!」


「よろしい」


「これで陸海の作戦は決まったのです! 後の細かい指示はウミに任せてくださいなのです!」


「なんか、喋り方変わってないか? ウミ……」


「葵姫お姉さまがおっしゃっていたのです! こう喋ればみんなに気に入られると!」


「まぁ、確かに……。解釈は違うけど……」


「?」


「まぁいい!! この作戦でいく。総員準備開始!」


「「「はッ!!」」」


 作戦会議はこれにて解散となった。

 葵とアブデュル陛下が昼食を食べ終わり、見物の為に小高い丘に行くと、既に第一近衛師団<桜>と第一艦隊は配置についており、いつでも作戦開始は可能だった。

 葵は思念伝達を使い、作戦開始を命令した。


『作戦を開始せよ!! 皇国の印象この一戦にあり! 各員一層奮励努力せよ!!』


「「「「「おおおおぉぉぉぉーーーーーッッ!!」」」」」


 兵士達の雄叫び共に、九〇式野砲五門による砲撃が開始された。それらは、少し荒廃していたとはいえ、頑丈な城壁に数分程で大穴を開けた。

 野砲は要塞中央や、側面の城壁に砲撃目標を移動し、城壁の大穴への敵の援軍を阻止していた。そしてその期を逃がさず、ウミちゃんを筆頭にした七量両の九四式軽装甲車が弾幕射撃を行いながら大穴めがけて突貫を開始した。それに歩兵が続く。

 九四式軽装甲車は歩兵の盾にもならねばならないので、歩兵に合わせる形で少し遅めの速度だった。

 無事突貫に成功した歩兵は要塞内の部屋を一つ一つくまなく索敵した。

 開始から要塞全体の安全化が完了し、安産地帯まで撤退するまで時間は四十分だった。

 まだまだ削れるな。特訓は更に厳しくせねば。

 この時、ウミちゃんには何故か悪寒が走ったらしい。

 作戦の様子を見て圧巻するアブデュル陛下。


「なんて速さだ。それにあの威力。素晴らしい……」


「アブデュル陛下。感動成されているところ申し訳ございません。もうこちらの要塞は用済みなのですよね?」


「あぁ。おかげで解体作業が少し楽になった。礼を言う」


「いえいえ。まだですよ。まだ無事な人形が隠れているかもしれませんしね。それに、せっかくなので完璧に解体いたしますよ」


「何の話だ?」


「せっかくなので、海軍の威力もご拝見ください」


『一二三さーん!! 陸軍の安全地帯までの撤退が完了しました』


『承知した』


 葵からの連絡を受けた一二三は気を引き締め、背筋を伸ばした。長門艦内全体では、緊張感は走っていたが、失敗する予感は誰も感じなかった。


「主砲偏差撃ちよーい!」


「主砲偏差撃ちよーい」


「目標、荒廃した要塞」


「目標、荒廃した要塞」


「一発も外すなよ!!」


「分かってますよ!! 長官!! わたしは部下を信じてますから!」


「応!」


チリリリリリン!!


「って!!」


「って!」


ドゴーーーーーーーーーンッッ!!


 とんでもない爆発音に驚愕するイスタンブールの人々、アブデュル陛下も例外ではない。家来達が陛下と葵の周りに集まり、周囲を警戒している。


「どうした!? 何があった!?」


 それを横目に葵は冷静に佇みながら答える。


「あ~。大丈夫ですよ。それよりも、見逃しますよ」


「なにをだ?」


 葵はふと空を見上げ、叫んだ。


「だんちゃーーーーく、今!!」


ドゴーーーーーーンッッ!! ドゴーーーーーーンッッ!! ………………。


 その轟音と共に、立派な要塞は地面を抉る様にして消えた。その場に居たオズメン帝国の要人達は、口を開けたまま、呆然とそれを見ることしかできなかった。しかし、それ見ていたのはオズメン帝国の要人達だけではなかった。ブルベル帝国の監視員が茂みからその光景をこっそりと見ていたのである。まぁ、我々からしてみればバレバレなのだが……。

 そのブルベル帝国の監視員は正気を取り戻すと、急いでオズメン帝国に居るブルベル帝国大使の元へ報告に向かった。葵は当然その行動には気づいていたが、恐怖心を広めるためにも、わざと見逃した。

 そして、最後に葵はオズメン帝国に居る全大日本帝国(ダイヤマトテイコク)軍に向け、思念伝達で言葉をかけた。


『皆さん。お疲れさまでした。今日は宴です』


「「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーッッッッ!!!!」」」」」」


 なんで、葵の激励の時よりも声出てんの……まぁ、いいや。うちの子達は宴好きだしね。

 その夜はオズメン帝国の要人達は揃って寝込んでしまったそうなので、大日本帝国(ダイヤマトテイコク)軍は現地民を入れて大宴会を港で開いた。

 わたしも参加したかったな……。

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