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第参拾伍話 日土イスタンブール条約

 葵と一二三はメルテムさんとウミ率いる第一近衛師団<桜>の警備の元、イスタンブールを観光することにした。

 メルテムさんに最初連れていかれたのは、ふくよかなおば様が開いているメルテムさん行きつけの小汚いドネルケバブの店だった。


「ここは本当に旨いんだ! 今でこそこうやって来られてるが、昔は屋敷を抜け出してよく食べに来たものだ」


「あら、メルテムちゃんじゃない! 事故に遭ったって聞いて心配してたのよ!!」


「おばちゃんってば~。この通りあたしは元気だよ!!」


「そうかいそうかい。いつも通りのメルテムちゃんならいいんだよ。ところで、そちらのお二人とこの水色の獣人ちゃんは?」


「この方々はあたしの命の恩人なんだ。それに、この子はウミって名前でな。あたしの立派な一番弟子さ!」


「おぉ! そうかい! メルテムちゃんの命の恩人と一番弟子ちゃんなら、負けとくよ。是非食べてってちょうだい」


「えぇ。ありがたく頂きます」


「本場のドネルケバブは初めて食べるな」


「食べ方が良く分かんないのです」


「かぶりつくんだよ。獣人のお嬢ちゃん」


「「「うんまーーーーい!!」」」


「こんなに美味しいドネルケバブは初めて食べました」


「お肉はジューシーでパンはモチモチ、なんて美味いんだ!」


「美味しいです~」


 三人共凄く幸せそうだった。


「うん! やっぱり美味い! ありがとなおばちゃん! また来るな!」


「分かったよ。またおいで~」


 四人は果物や魚といった食べ物は勿論、ガラス細工やお皿といった物の屋台が立ち並ぶ通りも散策し、イスタンブール観光を大いに楽しんでいた。日が暮れる頃には長門に戻り、一二三と葵は眠りについた。 


 翌日の朝、葵と一二三は会談の最終調整をし、準備を終えると二人は長門を降りた。そして、友美ちゃんが戦車の練習用に開発した九四式軽装甲車二台にそれぞれ乗り込んだ。そして、後ろには四十名の音楽隊に偽装した第一近衛師団<桜>が整列していた。

 そして、予定の時間になると団長であるウミちゃんが号令を放った。


「陸軍分列行進曲、並びに、行進始め!!」


 その号令を聞き、一団は勇猛果敢な楽曲を奏でながら、道行く人々をじっくり見るように宮殿へ向けて進んでいった。

 町の人々は陸の乗り物と言えば馬か馬車しか知らないので、装甲車にひどく驚き、更にその後ろを一糸乱れず付いて行く楽団にも見とれていた。

 装甲車はそのまま宮殿内に入って行き、第一近衛師団<桜>もそれに続いた。第一の庭で待っていたアブデュル陛下の前で葵は装甲車から降りて、勇ましく佇み、その少し右斜め後ろに一二三、更にその後ろに第一近衛師団<桜>が整列した。装甲車は邪魔にはならないが、しっかりアブデュル陛下の視界に入る所に停めた。


「全たーい止まれ!」


 ウミちゃんの号令と共に第一近衛師団<桜>は静止した。

 この様子を見て、アブデュル陛下は少し汗を掻いていた。流石の皇帝でも焦っているのだろう。


「この度は会談の機会を与えてくださり、誠に感謝いたします」


「わしも非常に感動しておりますぞ。それにしてもこの楽団にあの乗り物は素晴らしいですな」


「もし良ければ、乗ってみますか?」


「よいのですかな!?」


「えぇ。勿論です」


 アブデュル陛下は家臣達に心配されながらもワクワクしながら、装甲車に乗り込んだ。運転手は最初はゆっくりと走らせて行き、徐々にスピードを上げながら、第一の庭を二週した。


「いかがでしたか?」


「これは非常にいい物だな! 是非我が国にも欲しいものだ」


「では、その事についても今から離しましょうか?」


「そうだな。それではこちらに」


 アブデュル陛下に葵と一二三、そしてウミちゃんは会議室の様な場所に連れられた。


「改めて、この度は我が国民を助けて頂いた事、非常に感謝する」


「いえいえ。人間として当然の事をしたまでです。ですが、少々お願いしたい事がございましてね」


「ほう。何だろうか?」


「我が国の存在を認め、国交を結んでいただきたいのです」


「それでしたら喜んで。寧ろ、貴殿らの様な国を認めないわけにはいきません」


「それは良かった。今後は相互に貿易や文化交流で、互いの国が発展することを願っております」


「我々からも頼みたいことがございまして、まず、一つ目は、陸海共に貴国の兵器の能力を示してしていただきたい。そして、二つ目は貴国の武器を売っていただきたい」


「兵器の能力は今すぐにでも行えますが、武器の売却は我々の一存では決めかねます。天皇陛下のご意見を伺わせていただきたい」


「分かりました。それではそれはまた次回ですかな」


「いえ。今すぐに話は出来ますよ」


「え?」


 葵は一二三と向き合い、頷くと、一二三はわたしと友美ちゃんの思念伝達をアブデュル陛下に飛ばした。実はこの会談の会話は全て一二三の思念伝達を通してわたしと友美ちゃん、そして瞳ちゃんで聞かせてもらっていた。


『もしもし? 聞こえますかね? わたしが大日本帝国(ダイヤマトテイコク)天皇、白雪 葵姫です。この度はこのような形での挨拶になってしまった事をお詫びいたします』


 するとアブデュル陛下は慌てふためいて混乱していた。


「何だこれは!? 頭の中に声が!!」


「これは我々の連絡手段です。名のった方は本人で間違いないですし、体に害はないので、ご安心ください」


「わ、分かった」


 葵の説明を聞き、アブデュル陛下は落ち着ついた。だが、まだ慣れないようで、アブデュル陛下の声はダダ漏れだった。


『武器の売却についてですが、我々としては条件さえ飲んで頂ければ、行いたいと考えております』


「その条件とは?」


『まず一つ目は他国に我が国の武器を売却及び譲渡をしない事。二つ目に、貴国で我が国の武器を生産しない事。三つ目に、アラビア半島の東部と中央の砂漠地帯の領土の統治権を我が国に譲渡する事。この三つの条件が破られた場合、武器の売買は取り止めます』


「それは承認しかねますな。いくら砂漠しかない領土とはいえ、アラビア半島も列記とした我らの領土だ! その条件は飲めない」


『では、これはどうでしょう? 先程の条件に加えて、相互安全保障条約を結ぶというのは?』


「つまり同盟を結ぶと?」


『そう言う事です。貴国は隣国との領土問題を多数抱え、しかもそれに加え一部の民族による反乱の予兆もあるとか』


「そこまで調べていたのか……」


『外からも内からも攻められては流石の貴国でも苦しい状況になると思われます。そこで、いざというときには我々がお手伝い致します。これでどうでしょうか?』


「分かった。一部を犠牲にして国その物を守れるならその条件を飲もう」


『多大なるご配慮感謝いたします。互いの国が更に反映することを心から願っております。それでは、失礼いたします』


 わたしはアブデュル陛下との思念伝達を終えると、皇居のわたしの部屋に居た友美ちゃんと瞳ちゃんとハイタッチをした。


「よっしゃー!! これで文字通り、アラブの石油王だーー!!」


「やったわね! 葵姫!」


「これで燃料問題は解決されるでしょうから、航空機などの研究も捗るのであります!!」


「頼んだよ二人共!! 莫大なお金と石油が手に入るんだから、どんどん研究して造りまくっちゃって!!」


「「はい!!」」


 喜びに溢れているわたし達とは裏腹に、イスタンブールの宮殿内会議室では緊張が走っていた。


「それでは、わたくし、白雪 葵がこの度の条約の内容をもう一度改めさせていただきます。


一。大日本帝国はオズメン帝国への武器の売買を認める事。


一。オズメン帝国は大日本帝国で製作された武器を他国へ売却、及び譲渡する事を禁ずる。


一。オズメン帝国は大日本帝国で製作された武器を自国内で複製、及び生産する事を禁ずる。


一。オズメン帝国はアラビア半島の東部沿岸部から中部の砂漠地帯に至るまでの領土の統治権を大日本帝国へ譲渡する事。


一。大日本帝国とオズメン帝国は相互安全保障条約を結び、双方は当事国の要請に応じて、軍を出動させなければならない。尚、軍の数量や兵種はその軍を所有する国が判断するものとする。


一。以上の事が破られた場合、この条約は破棄される。


以上の事を、この土地の地名に因み、日土イスタンブール条約とする。この条約に異論のある者は直ちに名乗り出てください」


……。


「いらっしゃらないようですので、アブデュル陛下、こちらにサインと印をお願いします」


 アブデュル陛下と葵は互いに書面にサインをし、日土イスタンブール条約が両国間に結ばれた。

 こうして、大日本帝国は国家としての承認と初めての国交、そして油田地帯を手に入れた。

 アブデュル陛下はサインをし終え、葵と握手をすると話を切り出した。


「良かったら、貴国の軍の能力をお昼を食べた後にでも見せて頂けないだろうか?」


「良いですよ。どのような形式で行いましょうか?」


 アブデュル陛下は少し悩んだ後に、ポンッっと手のひらを叩いた。


「この町の郊外にもう使われていない要塞がありましてな。そこを制圧するというのはどうだろう?」


「ただ制圧するだけでは面白くないので、城壁の上にでも人形を置いておきましょう。その人形を全滅させるというのも加えましょう」


「いいだろう。では早速準備させよう」


「ありがとうございます。それと、そこの地形の地図はありますか? もし良ければ頂きたいのですが」


「分かった。それも準備させよう」


 一二三と第一近衛師団<桜>は例の要塞周辺の地図を受け取ると、一旦長門に帰り、準備に取り掛かる事になった。葵は少しの護衛と共に、宮殿に残りアブデュル陛下との昼食を楽しんだ。

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