第参拾参話 沖縄防衛戦(下)
沖縄の事を聴いたわたしは台湾に残っていた友美ちゃんと瞳ちゃんを急遽呼び出し、御前会議を開いた。
「沖縄の事は二人共聴いたよね?」
「えぇ。まさか、艦隊を囮にするとはね」
「それだけあちらは国力があるという事でしょうか……」
「それで、防衛はちゃんとできてるの?」
「えぇ。満月ちゃんからの連絡によると、琉ロ号作戦は今のところ順調に進んでいるらしいよ。それに、八九式中戦車も居るだけでほぼ効果があるみたいね。前線の敵兵は八九式中戦車を見ただけで逃げ出すレベルらしいから」
「やっぱり、我が大日本帝国の戦車は世界一であります!!」
「まぁ、そもそも戦車があるのはうちぐらいだろうけどね……」
「現場の敵兵はモンスターって呼んでるらしいわよ」
「有効打が有るとしたら至近距離で大砲直接ぶっ放すぐらいでありますから、そりゃモンスター呼ばわりされるであります」
「これも、試行錯誤してくれた二人のおかげだね」
「あたしはもう疲れたわ。ここ最近はほぼ徹夜でスキル使いっぱなしだったんだから……」
「わたしも先住民でも製造できるようにするために、エンジンの制作で難航中であります……」
「二人共、お疲れ様。あ! そうだ! 瞳ちゃん。例のやつ使えそうなら今使ってみようよ!」
「ですがまだあれはエンジンが完全ではなくて……まだ試験段階であります。まぁ、テストの結果だけを見れば使えないことは無いでありますが……」
「じゃ~使おうよ。敵司令部に一発ぶちかまそ!!」
「しょ、承知したであります。命令しておくのであります」
「というか、沖縄が狙われたんだったら、ここも狙われるのもそう遠くないんじゃない?」
「そうだね。これからは防衛じゃなくて、監視の方にも気を配らないと……」
「そのためにも、護衛艦とレーダーを急いで作らないといけないでありますね」
「そうね。レーダーは瞳ちゃんが今、研究してくれてるからひとまず大丈夫として、造船のスキルを引き継いだ葵君は大丈夫なの?」
「うん。もう慣れてもがみ型の四番艦目までできたらしい。今は、わたし達、いや、ミリオタ達の夢であり希望を詰め込んだ物を建造中だよ」
「それは楽しみだね~」
「わたしも楽しみであります!!」
「とりあえず、作戦は順調みたいだし、例のやつを使うこと、満月ちゃんに連絡しといてね」
「分かったであります!! では、わたしは準備するように連絡してくるのであります!」
「あたしもあれを見に行ってくるよ。じゃあね~」
そう言って二人は出て行ってしまった。もうちょっと話したかったな。まぁ、こんな時だし仕方ない。
台湾のとある開けた場所。
ブルンッ! ブルルルルルルンッ!!
『もしもし。満月殿でありますか? 例の開発してた物を使うように葵姫殿から命令が出たので、今から向かわせるのであります』
『あれってまだ開発途中なんじゃ……』
『まぁ、テストもしたし、理論上はいけるのであります!』
『は、はい。分かりました。現場の司令官には一応連絡しておきます』
『よろしくお願いするのであります!!』
ブルルルルルルルルルルルル……。ブルンッ!!
その頃、沖縄では、ブルベル帝国の兵士達は夜まで持ちこたえるのは厳しいと判断され、八九式中戦車が目撃された森に急遽大砲を運んでいた。
「よいっしょ……。これで本当に倒せるのか?」
「うっしょ……。これを直接当ててやられなかったら本当のモンスターだよ。よし。設置できた。後は待つだけだ」
「出たぞーー!! モンスターだ!!」
「お! 出やがった!!」
ド――ンッ!! ド――ンッ!! ド――ンッ!!
「「「「ギャーーーーーー!!」」」」
「ちくしょう!! これでもくらえ!!」
ド――――ンッ!!
ッキンッ!!
「あれ? 今、弾かなかったか?」
「そんなわけないだろ!! こんな東亜の国には贅沢な最先端の大砲だぞ! これが効かないわけがない! もう一発だ!」
ド――――ンッ!!
ッキンッ!!
「「え……」」
ド――ンッ!! ド――ンッ!! ド――ンッ!!
「「ギャーーーーーー!!」」
「た、大砲部隊がやられた……。って、撤退だ!!」
ヒュ――――ン! ド――――ンッ!!
「え? 今どこから飛んできた?」
ド――――ンッ!! ド――――ンッ!! ド――――ンッ!! ド――――ンッ!! ド――――ンッ!!
「「「「ギャーーーーーー!!」」」」
「隊長!! 砲弾です! 砲弾の雨です!!」
「馬鹿な!! モンスター大砲はそこに居るし、大砲でこんな撃ち方できる物なんて……」
「隊長!! そんなことより早く撤退しましょう!!」
「そうだな。撤退だ!! って、あれ?」
撤退しようとした瞬間、突然砲弾の雨が止んだ。
「今だ!! 撤退だ!!」
そう隊長が命令すると、前線の兵士達は一目散に撤退した。しかし、彼らにはまだ地獄を味わってもらわないといけない。
ブルルルルルルルルルルルル……。
沖縄の司令部のある首里城では、緊張した雰囲気はありつつも、満月ちゃんはお茶を飲みながら冷静に現場の状況を整理していた。
「牛島中将!! いえ、失礼しました。栗林中将!!」
「紛らわしいですから、牛島のままでいいです。それで、どうしましたか?」
「敵兵は九〇式野砲の砲弾の雨に耐え切れず、そのまま司令部のある方向へ撤退しました」
「なるほど、わざわざありがとうございます。では、さがっていいですよ」
「はッ!」
兵士が部屋から出ていくと、満月ちゃんはにっこりと笑っていた。その状況を司令部に居た沖縄の役人達は不思議に思っていたが、こればっかしは笑うしかない。何故なら……。
ブルルルルルルルルルルルル……。
『こちら第一航空隊。敵司令部上空間もなくです』
『こちら、今村 瞳。攻撃態勢に移れ。後、爆撃隊が先でありますよ!』
『分かってますよ。それではいきます!』
『健闘を祈る。通信終了』
『よし! 爆撃隊! 爆弾投下!』
ヒュ―――――――――ン! ド――――――――――ンッ!!
ヒュ―――――――――ン! ド――――――――――ンッ!!
ヒュ―――――――――ン! ド――――――――――ンッ!!
……。
『よし! 爆撃隊は先に帰還しろ! 後から追いつく! 攻撃隊は高度落として機関銃で敵を薙ぎ払え!』
ブ――――――ン!! ババババババババババババ……!!
「よし! 目標達成。帰還する!」
そう。我々は秘かに航空機、しかも零式戦闘機と、九九式双発軽爆撃機を開発していたのだ!! 何故航空機だけがかなり進んだ機体になったのかというと、零式戦闘機はあまりにも有名なため、元の世界では資料も多く、下手に昔の機体を創るよりも簡単だった。そして、爆撃機というのは第一次世界大戦の後の方に出た物で、日本ではまともに使える機体など、殆ど無かった。そんなポンコツを創っても仕方ないので、新しめの九九式双発軽爆撃機を開発したのだ!
しかし、両方ともまだ試験段階の為、三機ずつしかない。しかし、どうやら十分な成果の様だ。
「司令官殿! お逃げ下さい!!」
「「「「ギャーーーーーー!!」」」」
「何が起こっている!?」
「分かりません!! 鉄の鳥が飛んできたかと思えばこの有様です」
「馬鹿な……」
司令部のあった場所は第一航空隊によって焼け野原となっていた。司令官達はなんとか林に隠れて難を逃れたが、最初二千人いた兵士は今の奇襲を合わせてもう二百人程になっていた。
「撤退だ!! 急いで船に乗れ!!」
司令官がそう命令すると、兵士達はそそくさと逃げ出した。しかし、そのままわたし達が逃がすわけないだろう……。
わたしは、珍しく玉座に座り、ラスボス感を出しながら、前線の兵士達に思念伝達を飛ばした。
『我らの勇敢なる兵士達よ!! 敵を一人たりとも逃すな!! 全員捕まえるのだ! 総員! 一層奮励努力せよ!! 突撃ーーーー!!』
「「「「おおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーッッッッ!!」」」」
わたしの号令と共に、兵士達の目は真っ赤に染まり、筋肉も増強された死ぬまで前進し、命令をこなすだけのバーサーカーとなった。
わたしのスキルには「超鼓舞」というものがある。これは文字通り、旧日本兵、いや、それ以上の精神力と肉体を兵士に付与する化け物スキルだ。
もうこうなった兵士達はわたし以外、誰にも止められない。目標、つまり今回は敵兵を全員捕まえるまで前進する。例えどんな環境だろうが、四肢をもがれようが、顔の半分を失おうが、兵士達は絶命するまで前進する!!
「隊長!! 奴ら悪魔です!! どれだけダメージを与えても倒れません!!」
「急げ! 急いで船に乗るんだ!!」
しかし、そんな健闘虚しく、海上は既に第二艦隊によって封鎖され、陸にはバーサーカーとなった兵士達。彼らは戦う気を無くし、降伏し、投降した。
我々の勝利だ! 我々は、世界最強と言われる帝国の海軍陸軍双方に勝ったのだ!!




