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第弐拾玖話 ウミノ真実

 もがみを台湾に入航させると直ぐに幸樹ちゃんは獣人っ子三人組を皇居にお連れし、応接室に通した。


コンコンッ


「天皇陛下。お伝えした三名をお連れしました」


「分かった。どうぞお入りください」


 入ってきたのは報告に聴いた通りの獣人の子供だった。この三人と、ウミちゃんを見た感じ、獣人は怒ったり、警戒すると体の一部、特に四肢を元の生き物に近い物に変換できるようだ。それを裏付けるように、三人の手が獣化している。それに、最初会った時のウミちゃんの四肢は狼の物になっていたが、普段のウミちゃんはケモミミが付いている事以外は普通の女の子とさほど変わらない。後は犬歯が鋭いくらい。

 獣人はまだまだ分からないことだらけだ。


「どうぞ、お座りください。有賀中将から事情は聴いております。今回は災難でしたね」


 この部屋は入り口に向かって開くようなコの字にソファーが置かれており、わたしは入り口から見て正面のソファーに座り、獣人っ子三人組はわたしの右側のソファーに仲良く座った。

 するとわたしから見て一番手前に座った狐耳のホムラちゃんが京都弁のはんなりした口調で話し出した。


「あては、ウミ様の家臣のホムラと申します。そして、隣の狸がシグレ、奥の猫がフウカでございます。この度はあてら三人を助けて頂いたうえに、このような機会を設けてくださり、ありがとうございます」


「いえいえ。当然のことをしたまでです。自己紹介が遅れましたね。わたしは、大日本帝国(ダイヤマトテイコク)の天皇、白雪 葵姫と申します」


「それで、葵姫陛下、姫様は今どこにいらっしゃるのですか?」


「ウミちゃんなら、今オズメン帝国に向かっていますよ」


「そこは遠いんですか?」


「そうですね。なんせ大きな海を三つを通りますから」


 獣人っ子三人組はそれを聞いて悲しそうにしていた。


「せっかく国を出たのに姫様に会えなきゃ意味無いにゃ……」


「そうですね……。これ以上同志を待たせるのも……」


「すんません。同志ってのはなんですの?」


「あ~。そういえば、細かいことは言ってませんでしたな。あてらは黄金の国ジパングから参りました」


 それを聴いてわたしは度肝を抜かれた。確かに日本列島から来たことは予想できたが、自分達で黄金の国と称せる事にわたしは一番驚いた。

 実際、日本は東方見聞録によって黄金の国ジパングと紹介された。しかし、実際の日本はそこまで金が採出されていたとは考えずらい。自論だが、恐らく、食料、人的資源、鉱産物、技術力といった豊富な資源全体の事を黄金と例えたのだろう。


「僕達は今のジパングに存在する天皇の悪性に嫌気がさし、その天皇の妹にあたるウミ様を新たなる天皇にするために立ち上がったのです。しかし、現天皇軍はかなり強く、我々は西へ西へ追い詰められてゆき、最後の壇ノ浦という場所で我々新天皇軍は壊滅、逃げ延びた残党の同志達は上手く隠れていると聞きますが、新たに挙兵できるだけの軍はありませんし、見つかり次第、現天皇軍に拷問されているそうです」


「にゃ~達の父達はそんな状況でウミ様をずっと匿うのは難しいと判断したにゃ。そこで、筆頭家臣三人の子供であるにゃ~達を護衛としてウミ様と共に、沖にある島に逃がしたにゃ」


「せやけど、途中で嵐に巻き込まれてしまいましてな。高波に襲われたときに、乗っていた船はひっくり返ってもうて、最初はその船にしがみついていましたんやけど、また高波に襲われましてな。あてらの力は及ばずウミ様はそのまま高波にさらわれてしまいましてん。しかも、あてらは運良く小島に流されて生き残ってしもうた。そん時はあてら三人共切腹しようと考えました。せやけど、あてらはウミ様が生きているという希望を捨てることは出来へんかった。せやからあてらは再び海に出て、漁師のあんさんなんかにこの辺りの海流の事情を聴きながら、船旅をしていました。それで食料が尽きて、もうあかんと思った時に、アルガはんに助けられたんどす」


「そうでしたか。もし良ければウミちゃんが戻るまでこの国でゆっくりなさってください。長い船旅で疲れたでしょう?」


 獣人っ子三人組は顔を見合うと覚悟を決めた顔でホムラちゃんはわたしに話し始めた。


「ありがたいことですが、それはできまへん。あてらは責任をとって、ウミ様が帰って来るまでウミ様が帰って来る浜で待たせてもらいます」


 わたしはまだ小さいのにこんなにも忠誠と責任感に篤い三人を見て胸を打たれた。


「分かりました。ですが、ただ待つだけではまたウミちゃんが危なくなったら助けられないですよ」


「そ、それは……」


「浜で待つのは止めません。貴方方の意志の強さに胸を打たれました。我々に柔術や勉学といった事をあなた方に指導させて頂けないでしょうか?」


「ほ、ほんまでっか!」


「えぇ。勿論です」


 獣人っ子三人組は顔を見合うとわたしに頭を下げてお願いしてきた。


「是非、よろしくお願いいたします!!」


「こちらこそ、よろしくお願いしますね」


「にしても、葵姫天皇陛下。気づいてまんねやろ?」


「せっかく気付いてないふりしようとしたのに~」


「狐は騙すのは好きでも騙されんのは苦手なもんですねん」


 その場にいたわたしとホムラちゃん以外は何の事か分からなかった。


「最初からホムラさんは自分達の過剰なまでの忠誠心を見せて同情を誘い、滞在の許可と何か副産物もあわよくば得ようとしてたんでしょ? 一国の主人も騙すとはね~」


「えぇ。このまま返されては、祖国の同志に顔向けできまへんから」


「子供なのにしっかりしてるね。今回は騙されたけど、次はわたし達がが騙させてもらうよ」


「お手柔らかに」


「やっぱりホムラさん凄い……」


「んにゃ……」


 わたし達はウミちゃんの衝撃な真実を知る事になったが、この真実はわたし達の野望を実現する為の大いなる要素になるだろう……。

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