第弐拾捌話 漂流者
ある日、沖縄本島の近海を幸樹ちゃん率いる第二艦隊がパトロールしていると、小舟が漂流しているのを見つけた。
「有賀長官! 九時の方向に漂流している小舟を発見いたしました。救助いたしますか?」
「勿論や。とりあえず近づくで。取舵いっぱい!」
「取舵いっぱい!」
「よーそろー!」
「よーそろー!」
「両舷半速!」
「両舷半速!」
「よし。ボート出せ! 何が乗ってるか分からへんから十分注意するようにな!」
「はッ!」
幸樹ちゃんの判断んで出されたボートは小舟に近づいた。隊員が船を覗き込むと、そこにはわたしよりも少し小さい、ローブを纏った子供が三人寄り添って倒れていた。
「おい! 大丈夫か!!」
……。
「息はあるが意識がない。急いでもがみに連れ帰る!」
隊員達の賢明な救助活動により、三人共もがみの救護室に運び込めた。
しばらくした後、幸樹ちゃんは救護室に現れた。
「失礼するで。救助者さん達の様子はどないでっか?」
「はい。運ばれた当初は全員かなり体が冷えていましたが、現在は体を温めたことにより容体は安定しています。ですが……」
「ん? どないしてん?」
「見ていただければ分かります」
「これは……」
船医がカーテンを開くと、そこには猫と狐の獣人の少女、そして狸の少年が二つのベッドに男女別れてぐっすり眠っていた。ウミちゃんよりも少し大きい位だろうか?
「こいつらは、ウミはんと一緒の種族なんか?」
「そのようです」
「そうか。ならウミはんの時みたいにいきなり暴れられたら敵わんな。くまのは残してもがみは沖縄に帰航するか」
「そうですね。ここでできる検査と処置は限られますし、それが賢明かと」
「ほんなら、目覚めた時用に、暖かい物を烹炊班に作らせとくのと警備兵を二人付けとくから、何かあったらその二名に言ってな」
「了解しました」
幸樹ちゃんはそう言うと艦橋に戻ってくまのを残し、もがみを沖縄に帰航させるように命令した。
もがみが沖縄に到着し、丁度幸樹ちゃんが様子を見に来た時、三人の内の狐の女の子が目を覚ました。
「お。目~覚めた?」
「ここは? うちらはどないしましたん?」
狐の女の子は黄金色の綺麗な毛並みでおかっぱ頭で黒の瞳のつり目に正に美しい狐顔だ。因みに喋り方は京都弁っぽい。
「ここは護衛艦もがみの救護室や。あんたらが漂流しているところを救助したんや」
「そうでしたか。わざわざありがとうございます」
「へ~。ウミみたいに暴れへんねんな」
「ウミ?」
「あぁ。この前狼の獣人族が砂浜に漂着してるところを救助してん」
「それほんまですか!?」
「あぁ。ほんまやで。ひょっとしてお仲間かいな」
「はい!! あてら、そのウミs……ウミを探しに国を飛び出しましてん! ウミは、ウミは今どこにおりますん?」
「ウミなら、今オズメン帝国に向かってるところだな。うちの天皇がかなり気に入ってな、速攻でお役目もろてんねん」
「そうでしたか。ほんなら、帰って来はるんは結構後になりますん?」
「そうやな。後ニ、三ヶ月は帰ってけえへんやろな」
「そうでっか……。それまで、あてら待たせてもろてもええやろか?」
「ええで。せっかくやからまた今度うちの天皇にも合わせたるわ」
「そりゃ嬉しゅうございます」
二人がそうして話していると、残りの二人も目を覚ました。
「お~。後の二人も目を覚ましたか」
「ふぇ~。ここどこですか!?」
「なんにゃ! 何があったにゃ!」
「落ち着きんさい二人共。この方々があてらを助けてくれはったんや」
「ほんとかにゃ! ありがとにゃ!」
「あ、ありがとうございます!」
「そうや。助けてもろたのに自己紹介がまだでしたな。あては狐の獣人のホムラと申します」
「何が何だかまだよく分かりませんが、僕は狸の獣人のシグレと申します」
狸の獣人の少年は茶色のおかっぱ頭に黒い瞳の目の周りには狸を彷彿とさせる黒い模様があった。正に狸顔だ。
「にゃ~は猫の獣人のフウカにゃ!」
猫の獣人の少女は白のおかっぱ頭で黒の瞳、口は猫の様で牙が少し見えていた。
「うちは大日本帝国海軍中将有賀 幸樹っちゅうねん。よろしくな」
ホムラちゃんはベッドの上で土下座をする形で、話し始めた。
「この度はわたし達のみならず、ウミまで助けて頂き、ありがとうございます」
残りの二人はかなり驚いたようだ。
「「え!?」」
しかし、ホムラちゃんは淡々と話す。
「あら? そういや言うてなかったな。この方々はウミまで助けてくれはってん」
「えッ!? ウ、ウミ様まで助けて頂いたんですか!!」
「ウミさみゃまで助けて頂いたにゃんて、にゃんとお礼をすればよいのか!」
その瞬間落ち着いていたホムラちゃんがいきなり慌て始めた。
「あんたら!!」
「そういえば、なんでホムラさんはウミ様の事呼び捨てなのですか?」
「そうにゃ。ホムラが一番忠誠が篤かったはずにゃ」
「アホ!!」
その瞬間幸樹ちゃんは大体事情は把握した。
「なぁあんたら、ウミってほんまはなにもんなんや?」
「そ、それは……」
「ウミ様は我らが姫です!」
「そうにゃ! 戦に負けて、にゃ~達家臣と一緒に逃げる為に船に乗って海に出たのに嵐に巻き込まれるわ、ウミ様はいなくなるわ、大変だったにゃ!」
「このドアホ共!! 全部話しよって!」
「その様子じゃ、ほんまみたいやな。すまんな。お宅らの姫を使ってもうて」
「いえいえ。僕達の代わりに保護していただいただけでありがたいです」
「本当にありがとにゃ!」
「もうあてはあんたらの世話すんのに疲れたわ」
幸樹ちゃんはこの状況はかなり使えると判断した。
「ほんなら、もう大丈夫そうだから、烹炊班に伝えて何か暖かい物持って来てもらうな」
「「「ありがとうございます」」」
幸樹ちゃんは救護室から出ていき、警備兵に烹炊班に連絡するように命令した後、艦橋に戻った。そして、わたしに連絡し、先程聞いた内容を全て話した。
『という事らしいですわ』
『そうか。悪いけどこれは使わせてもらうほかないね。そのお客さん達を直ちに皇居にお連れして』
『承知。ほんなら、また』
『気を付けてね』
『了解やで!』
それからもがみは直ちに出港の準備を仕上げて台湾に向かった。




