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第弐拾陸話 新婚

 翌日、沖縄の統治を担当している人は予定通り沖縄に帰ることになった。勿論、満月ちゃんも同様だった。


「どうしてなんですか!!」


 この日は朝早くからわたしの事務室には忠政君が来ていた。


「まぁまぁ、忠政君の気持ちは分からんでもないけど理解してよ」


「でも、満月の帰航を一週間位伸ばしてくれてもいいじゃないですか!」


 この時、忠政君はわたしの机に手を付けて前のめりになってわたしを凝視していた。それに珍しくこの時の忠政君の発言には熱が入っていた。


「その一週間の間に敵や、反乱分子が沖縄に現れたらどうするの? 今の沖縄ではその可能性は十分にある。そんな状況下で七大天使である司令官が不在の状況を長時間つくるわけにはいかない」


「でも、第五師団も駐屯してるし、ショウシ殿もいるじゃないですか! 防衛は十分可能ですよ!」


「君の言いたいことも分かる。わたしだって新婚さんを離させるのは嫌だよ。でもね、君達の個人的な都合で国民を危険にさらすことはできない」


「なら、俺にも行かせてください!」


「だめだ。君にはまだ台湾の防衛に尽力してもらわないといけない! それに……」


 わたしが話そうとすると、忠政君が焦って割り込んできた。


「どうしてですか! もう台湾の住民のインフラ整備の技術は確立されてますし、後は海軍が行うべき仕事です!」


「まぁまぁ、落ち着いて。まだ話には続きがあるの! まだ忠政君には台湾に居てもらおうと思ったけど、満月ちゃんも今は沖縄本島だけで大変だろうから、尖閣諸島の防衛の指導は忠政君にしてほしいの」


「ということは俺は尖閣諸島に滞在することになるのですか?」


「それは忠政君に任すよ。勿論、尖閣諸島に泊まる方が勝手がいいだろうけど、ちゃんと仕事をしてくれたら、沖縄本島や台湾に行ってもわたしは何も文句言わないよ」


「ありがとうございます!!」


「君達栗林夫婦に沖縄の防衛は任せた」


「はい!」


 忠政君は元気よく挨拶すると、部屋から出て行った。今日は忠政君の意外なというか、珍しい一面を見ることが出来て、わたしは終始驚いていた。


「人ってのは、最愛の人ができると変わるもんだね~。ね? 満月ちゃん」


 すると、机に隠れていた満月ちゃんが顔を真っ赤にして出てきた。実は忠政君が来る前に、満月ちゃんがわたしに帰航する前の挨拶に来ていたのだ。それも、忠政君を沖縄に派遣して欲しいという相談もセットでね。


「葵姫先輩、いや、葵姫天皇陛下。ありがとうございます」


「だから、プライべーな時は葵姫先輩でいいって」


「いえ。今回は敬意を示したいのです」


「そうか。なら、その気持ちきっちり受け取っておくよ。栗林 満月中将、お幸せにね」


「ありがとうございます。それと、栗林で中将が二人いるとややこしいので、仕事関連の呼び名は牛島のままでいいです」


「分かった。みんなにも言っとく。それじゃ、沖縄でも元気でね」


「はい!」


 満月ちゃんがわたしの部屋から出ていき、暫くすると窓の外に手を繋ぎながら皇居を後にする一つの夫婦の背中が見えた。

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