第弐拾伍話 結
わたし達はメルテムさんを見送った後、別れを惜しみながらいつもの生活に戻った。
しかし、わたし達とは違った感情を持った者が居た。
その夜。皇居の元満月ちゃんの部屋で満月ちゃんが久しぶりにくつろいでいると、誰かが扉をノックした。満月ちゃんが扉を開けると、そこには忠政君が立っていた。
「忠政君!? なんで!? 今日は部隊の夜間練習があるって言ってたじゃないですか!」
「疲れたから、抜け出してきた」
「抜け出してきたって、司令官がですか!?」
「あぁ……」
忠政君は面倒くさがりだが、根は真面目なので満月ちゃんは現状にかなり驚いていた。
しかし、そんな満月ちゃんを置いてけぼりにして、忠政君は照れくさそうにしながら話し始めた。
「な、なぁ、ちょっと散歩でもしないか?」
「え、ええ。いいですよ」
二人はそのまま皇居の庭へ散歩をしに行った。皇居の庭は静かで既に月明りだけの薄暗い雰囲気になっていた。忠政君は薄暗いからとランタンを持ち、二人でナデシコの花が咲き乱れる庭の小道を歩いていた。
「今日は月明りが綺麗ですね。ナデシコの花も月明りに照らされて可愛らしいです」
「そうだな……」
「でも、これだけ明るければランタンもいらなかったかもしれませんね」
「いや。必要だったよ……」
「え?」
忠政君はさっきからずっと満月ちゃんとは目を合わせようとはしなかった。満月ちゃんはかなり不思議そうにしていたが、久しぶりに二人になれて嬉しかったのもあり、あまり気にしていないようだった。
「なぁ、少し座らないか? そこに屋根もついたテーブルがあるし」
「そうですね。久しぶりにゆっくりお話でもしましょうか」
二人は小道を抜けた先にある屋根のついたお茶スペースに、二人はランタンを机の真ん中に置き、向かい合う形で座った。
ここの周りにはメイドさん達が季節折々のお花を植えてくれるのでわたしもくつろぎスペースとして活用している。
「それにしても、二人っきりになるのは久しぶりですね」
「そうだな。最近は仕事が忙しかったし……。めんどくさい……」
「そうですね。確かに今の状況は大変ですけど、とても楽しいです。沖縄の人達も仲良くしてくれてますしね」
「そうなのか? それなら良かった……」
「忠政君。今楽しいですか?」
「あぁ。楽しい。でも……」
「でも?」
「俺は……。俺は……」
「?」
「俺は満月といた方が楽しい!!」
「ッッ!!」
二人は顔を真っ赤にして、下を向いていた。忠政君は手のひらを横向きに立てたり、たおしたりし、一部の方向にランタンの光を遮ったり、通らせたりするようにした。
どうやら、例の合図が来たようだ。
「な、なぁ、満月!」
「は、はい!!」
忠政君は、席を立ち満月ちゃんの座る椅子の横に膝まづいた。そして、ポケットから小さな箱を取り出した。
「満月。俺、やっぱりお前と離れるのは嫌だ。気持ちだけでも一緒に居たい。お前が俺の太陽なんだ!! お前といると楽しいし、世界が明るく見えるんだ! 満月、お前のこと前からずっと好きだ!! 俺と、結婚してください!!」
「けけけ、結婚ッッッッ!!!!」
忠政君は小さな箱の中からダイヤモンドのついた指輪を取り出して、満月ちゃんにさしだした。忠政君は顔を赤らめながらも、真剣な顔つきだった。一方、満月ちゃんはというと、頭から湯気が出そうな程、顔を真っ赤にして照れていた。
「たた、忠政君!! けけけ、結婚なんてそんないきなり言ったら嫌われますよ!!」
「そうか……」
「まぁ、わたしじゃなかったらですけど……」
「え?」
「不束者ですが、よろしくお願いします」
忠政君は、指輪を満月ちゃんの左手の薬指にはめると、二人はその場で抱き合った。
わたし達はそれを合図に、茂みから飛び出した。
「「「「「「「「「「「「おめでとう!!!!」」」」」」」」」」」」
実はわたしは忠政君から相談されていて、どうせならみんなで祝いたいという事で、アルナさんとサガちゃん、そしてウミちゃんを含めたこの国の要人達をわたしの方で集めていたのだ。
満月ちゃんは恥ずかしがりながらも驚いていた。根本の忠政君はというと、ただただ、恥ずかしそうだった。
「みなさん見ていたんですか! 恥ずかしいです……」
「あんま見ないでください……」
「忠政はん!! 内気やと思ってたけど、あんたも中々やりますな!」
「よくやったぞ忠政!! それでこそ男だ!!」
「幸樹さんもひふみんもあんまりからかうのはやめるのであります! それにしても二人とも今更感はありますが、おめでとうございます!」
「言われてみれば確かにお二人はいつも息が合ってたし、今更感ありますが、さっきのプロポーズすっごくかっこよかったですよ!」
「忠政君もよくやったし、満月ちゃんもその場で返事できて偉かったわね。これから二人で頑張ってね」
「いや~。お二人とも仲が良いとは思っておったのじゃが、無事結ばれて、良きかな良きかな」
「忠政殿とは一度拳を交えて語り合った仲なので、牛島殿をしっかりと守れる事は分かっています。結婚の先輩としては安心です」
「お二人の愛の巣なら最優先で作らせるからよ! いつでも言ってくれよな!」
「沖縄の牛島殿はいつも仕事に取り組んでおられたので、このような、顔は新鮮ですなぁ~」
「「みなさんやめてください!」」
「でも、みんな、ありがとう……」
「あ、ありがとうございます!」
みんなからの一言があらかた終わると、サガちゃんとウミちゃんがお祝いのケーキを運んできた。
「「結婚。おめでとうございます!」」
「お二人までお祝いしてくださるんですか! それにこんなに美味しそうなケーキまで! ありがとうございます!」
「葵姫先輩。いや、葵姫天皇陛下。アドバイスや、サプライズなどで手助けしてくださり、その、ありがとうございました」
「ここでは、葵姫先輩でいいって。それに、わたし達家族みたいなもんじゃない! まぁ、これからは本当の家族をお互い大切にしてね」
「はい!!」
やっぱり、幸せが一番!!




