第弐拾壱話 帰宅
わたし達は長門の騒ぎを落ち着かせた後、出港の準備をしていた。港には沢山の人々と、満月ちゃん率いる第五師団が見送りに来ていた。
「満月ちゃん。最初の方は政治や軍隊の面で苦労するだろうけど、頑張ってね」
「はい。せっかくの役目です。全力で頑張らせていただきます」
「それと、暗殺とかには気負付けてね」
「大丈夫ですよ。わたし達は師匠のおかげで肉体的にも、免疫的にもかなり鍛えられてますから」
「それもそうだね。あの爺さんも元気かな~」
「きっと元気いっぱいですよ」
「そうだね。じゃ~。そろそろ出港だから行くね。頑張ってね!」
「待ってください。最後にこれを忠政君に渡してくれませんか?」
満月ちゃんがわたしに渡してきたのは、一通の手紙だった。
「よし。分かった。この調子じゃ、早く天皇の代わりになる郵便係雇わないとね」
「も~。葵姫さんこんなに皮肉が上手かったですっけ?」
「ハハッ。そんなことないよ~。今回は仕方ないから引き受けるよ。じゃ~ね」
「ありがとうございます」
わたしはそう言って沖縄を後にした。やはり、カップルの間に物理的な距離を置かせるのは気が引けたが、彼女達なら大丈夫だろう。
帰宅途中、ウミちゃんは色んな物に興味を持った。特に船旅の最中はずっと艦内を走り回って船の色んな所を観察していた。ウミちゃんは船に興味があるのかな?
わたしと一二三と友美ちゃんは走り回るウミちゃんを抑えながら皇居に戻った。
「は~。やっぱり家が一番落ち着くね」
「それはそうだけど、次はオズメン帝国と、ブルベル帝国の兵士達を送る準備をしないといけないんだからね」
「分かってるけどちょっとくらい休ませてよ。あれ? そういえばウミちゃんは?」
「それなら、皇居に入った瞬間にメイド達にさらわれてたよ」
「なんで止めなかったの!!」
「だって、お風呂と着替えが準備してあるからって連れてったから大丈夫だろうと思って」
「なら大丈夫か」
「そうだ。一二三。新しい船の様子はどう?」
「それなら二隻ともいい感じに進んでいる。だがやっぱりこの時代で、二番艦はオーバースペックだろ……」
「いいの! ロマンだよロマン! それに、外交に国民の士気なんかにも大いに影響すると思うよ」
「それならお前のスキルがあるだろ」
「毎回毎回わたしが出れるわけじゃないんだから、いいじゃん」
「まぁな……。だが、本当に製造した段階で燃料が満タンの状態で本当に良かった。原子力で動くにしてもそもそもの燃料がないとだめだからな」
「そうね。最低二十年以内には供給できるようにしないとね」
「確か、台湾には少量だけど、石油やウランも出たと思うよ」
「そうだとしたら、急いで砿業を発展させないとな。これは、誰に任せる?」
「これはひとまず瞳ちゃんに任せようと思う」
「「分かった」」
コンコン
わたし達がこうして話していると、誰かがドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
扉を開けて入ってきたのは、メイドさんに連れられた純粋な真っ白のワンピースに身を包んだウミちゃんだった。
「葵姫お姉さん。どうですか?」
すると、メイドさんが慌ててウミちゃんの肩を引き、怒り始めた。
「駄目ですよ! 葵姫様はこの国の天皇。つまり一番お偉いお方なのです。葵姫様に親し気な言葉で易々と話せるのは七大天使の方々だけなのです」
いつの間にか国民の間では皆の事、そんな風に言われてたんだ。友美ちゃんと一二三の表情を見るとどうやら、本人達も知らなかったらしい。
「ごめんなさい。葵姫様」
「いいよ。いいよ。わたしの傍に置くつもりなんだから、親し気の方がいいよ」
「その事なんだけど……」
ウミちゃんがもじもじしだした。
「どうしたの?」
するとウミちゃんは下を向いていた顔を一気にこちらに向けて、力強く言った。
「ウミ。海に出たい!」
その時のウミちゃんの目は輝いていて、希望と決意に溢れた目だった。溺れてたんだから、海への恐怖心もあるだろうに、ウミちゃんがそれをも乗り越えようとしているのがわたしにも分かった。
「よし。分かった。じゃ~今度の任務にはウミちゃんにも一緒に行ってもらう。それでいいね? 海軍大臣さん」
「あぁ。構わない」
「ありがとうございます!!」
「だけどウミちゃん。二つ条件がある」
「何?」
「それは、言葉遣いも含めて勉強する事。それと、アルナさんに訓練してもらう事。この二つ」
「分かった! ウミ頑張る!」
「よし。そのいきだ」
あの計画のついでにもなるからいっか……。




