第拾玖話 目覚メ
わたしは式典が終わって、宮殿に戻ろうとした時、一人の兵士が走ってきた。
「女帝陛下! ご報告します! 長門にて保護していた少女が目覚め、現在艦内で暴れております!」
「「「なにーーーーッッ!!」」」
「ここはわたしに任せて、葵姫さんと友美さんは行ってください!」
「分かった。ありがとう。行くよ! 友美ちゃん」
「了解。じゃ君、早く馬車を会場の裏に回して」
「はい! 直ちに!」
その兵士は直ぐに馬車を会場の裏に回してきてくれた。わたし達はその馬車に直ぐ乗り込むと、馬車は走り出した。
わたし達が港に着くと、長門がとても騒がしかった。わたし達は馬車から急いで降りると、兵士に反対されながらも、無理やり小舟を出してもらい、長門に乗船した。すると、入り口には一人の兵士がわたし達を迎えてくれた。
「天皇陛下そして、山下陸軍大臣。わざわざお越しくださり、ありがとうございます」
「堅苦しい挨拶はいいから、現状を教えて」
「はッ! 例の少女は目を覚ました瞬間、恐怖からか突然暴れだし、医務室から脱走。その際にけが人を五名出してしまいました。少女は現在、船首に移動し、艦長が説得を行っています」
「分かった。ありがとう。わたし達も船首に行く。それでいいよね? 友美ちゃん?」
「勿論!」
「危険です! おやめください」
「わたしが拾ってきんだ。わたしが責任を取って説得する」
「お~。葵姫かっこいい~! 流石我らが天皇陛下だね~」
「……。承知しました。ではご案内いたします。こちらです」
「ありがとう」
わたし達は兵士に連れられ甲板に出ると、船首の方に人が集まっていた。わたし達は急いで、その人だかりに向かった。わたし達が来るや否や、皆が道を開けてくれた。
人だかりの中央には突出して、一二三が例の少女と向き合う形になっていた。
「一二三。お疲れ」
「長門って、随分と騒がしくて、大変そうね」
わたし達は、一二三の肩を叩きながら、話しかけた。
「なんだ。葵姫と友美か。誰のせいでこんな事になってると思ってる」
「確かに、拾った責任者はわたしだから、わたしが説得する。いいね?」
「あぁ。それはいいが、よくあいつの事見てみろ」
わたしは例の少女をじっくりと見た。すると、ローブからは鋭い爪と、水色の毛並みがはみ出ており、水色の髪にサファイアの様な美しい青色の瞳、それと、水色の毛で覆われた獣の耳が生えていた。わたしはど肝を抜かれた。
「一二三。あれって……」
「あぁ。そうだよ葵姫。メルテムさんが言ってたみんな大好き狼のケモミミ獣人ちゃんだよ」
「嘘でしょ。そんなことってあるの……」
「あるもないも、友美も見ての通り、実際あるんだから受け入れろ」
「でも、わたし達には人種なんて関係ないよね!」
「お~。葵姫のくせにいいこと言うな」
「スピーチして直で来たから、テンションがそのまんまなのよ」
「なるほど。だからか」
わたしはそれを聞いて顔を真っ赤にした。
「ちょっと! やめてくれる!!」
「「ごめんごめん」」
この陸海コンビ、帰ったらたっぷりお仕置きしてやる。
わたしは一歩、また一歩と慎重に前に出た。その度に警戒する例の子。
「こんにちは。わたしは白雪 葵姫。君が浜辺で倒れているところを拾ったんだ。その分だと大分回復したみたいだね。名前を聞いてもいいかな?」
「グルル……」
だめだ。完全に警戒しきってる。
それでもわたしは一歩、また一歩と慎重に前に出る。
「お腹は空いてない? ご飯食べようよ」
「天皇陛下! 近づきすぎては危険です!」
「ガウ!!」
「イッテ……」
「「葵姫!!」」
「「「「天皇陛下!!」」」」
わたしは近づきすぎて右腕に噛みつかれてしまった。銃を持っていた兵士達がそれを見て一斉に銃の照準を女の子に合わせた。
しかし、わたしはそのままその女の子をそっと抱き包んだ。それを見た一二三は兵士達にジェスチャーで銃を下すように伝えた。
それによって警戒が少し解けたのか、目元とわたしの右腕に噛みついていた口が少し緩んだ。
「ほら。誰もあなたを傷つけない。寧ろあなたを守りたいんだ。牢獄にも入れないし、美味しいご飯も食べさせてあげる。だから、落ち着いて。ね?」
「グルルッ……」
バタンッ!
例の子は緊張が解けたのか、喉を鳴らしながらまた気を失ってしまった。
グ~ッッ。
どうやらお腹が空いたらしい。わたしは、女の子を抱きかかえながら振り向いた。
「お~い。ここに烹炊班の人いる?」
「はッ! 天皇陛下! わたくしが烹炊班班長であります!」
「よし。じゃ~命令します! 直ちに美味しいご飯を作りなさい!! みなさんも緊張しっぱなしで、ろくにご飯食べてないでしょ? みんなでご飯にしましょう」
「「「「はい!!!!」」」」
それにしてもこの子、怒った顔は怖かったけど寝顔は可愛いな。




