第拾話 シコウ
四人で話した翌日、わたしは友美ちゃんと一緒にわたしの寝室にいた。友美ちゃんは何か不満そうな顔をしていた。
「買い物に行けると思ったんだけどな~」
「わたしも行きたいって言ったんだけどね~。流石に女王と、陸軍大臣が買い物なんか行ったら大騒ぎになるし……」
「そうね~。そうだ葵姫! 本土を取り戻せればいくらでも行けるかな?」
「確かにね。その時は一緒にまた買い物とか行こ!」
「そうね!」
トントン
「失礼します。ドレスの候補をいくつかご用意いたしました」
「は~い。入って」
メイドさんが持ってきたドレスはざっと見て洋風に、アジアン風に、中国風といい計十着も用意されていた。わたしと友美ちゃんはわくわくが止まらなかった。
わたしは色々着てみたが、やっぱりシンプルな白のアジアン系のワンピースが気に入った。メイドさんにはチャイナドレスや、洋風の派手なのを進められたが、やっぱり普通の女の子だったわたしには厳しかった。それに、案の定友美ちゃんもわたしと同じような水色のアジアン系のドレスにしていた。
メイドさんたちに流石に地味すぎると言われたので、髪やドレスなどを花で飾ってもらうことにした。
するとわたしたちは一気に華やかになり、大人な雰囲気になった。
「お二人とも大変お似合いにございます」
「そう? ありがとう。でも、友美ちゃんは元からスタイルいいし、大人っぽいからやっぱり綺麗だな~」
「そんなことないよ。葵姫は可愛いタイプだし、葵姫だってスタイルもいいじゃない」
「えへへ。そうかな?」
「お二人とも、お綺麗ですよ」
「「ありがとうございます」」
わたし達はドレスを決めると、その後は優雅にサンルームでお茶会をすることにした。
「葵姫?」
「何?」
「あなた。何か企んでるわね?」
「え~。そんなことないよ~」
「いいえ。分かるわよ。長い付き合いじゃない」
「友美ちゃんには敵わないな~。まあね。先日の沈没事件があったでしょ?」
「まさか、捕虜にして……」
「違う違う。そんな黒いことをするんじゃなくて、今度建設が完了する港と、艦艇を見てもらおうと思ってね。あの人達の国の文化も取り入れてますます国を発展できるかもしれないし」
「できなかったら?」
「その時はさっさと国に返して国自体に恩を売って使節団の派遣と、貿易を取り付けるよ」
「流石葵姫……。どんなけ先のことまで見えてんのよ」
「これはあの事件に似てたからね。このチャンスは逃さないよ」
「あの事件? あ~!! エルトゥールル号か!!」
「せいか~い! 元の世界では食料も無ければ、国もあまり関係を築こうとしなかったけど、わたし達は違う。食料面は大分力を入れて改革してるからまだ余裕はあるし、我らが日本王国の後ろ盾ができるチャンスじゃない?」
「なるほどね~。でもそれまでにはせめて沖縄くらいは制圧しておかないとなめられちゃうよ」
「確かにね。まぁ、最悪、噂ではまだ他国はガレー船の時代っぽいから艦艇の圧力で!!」
「黒船来航ね!!」
「そうだね」
「でも外交も考えるとなると、人材も足りなくなるんじゃない?」
「そうなんだよね~。だから、人材探しも込めて沖縄に早く行きたいんだよ……」
「なるほど。じゃ~。沖縄にはわたしを行かせてよ」
「友美ちゃん。あなたは陸軍大臣なんだから、ここにいてもらわないと困ります」
「そうか……」
「でも、沖縄が手に入ったら二人で視察という名の旅行に行こうね」
「うん。そうね」
「そうだ。あたしの方からも報告しないといけないことがあってさ」
「ん? 何?」
「あたしが生産した歩兵銃なんだけど、それを使って訓練をしていたらある日突然銃弾が装填されないようになっちゃって、気になって調べてみたの。そしたら、練習場周辺半径一キロの範囲内にあった金属鉱石が無くなったらしいの」
「それってどういうこと?」
「分かるでしょ? あれは銃弾を必要としない代わりに、金属鉱石を弾に変換して撃ってるの!」
「ってことは、戦闘になったら金属鉱石持ち歩かないとだめなの?」
「まぁ、そういうことになるわね」
「因みに、一発につき何グラム必要なの?」
「十グラム」
「それ、弾薬も勝手に作ってくれる事を考えても効率悪くない? シンプルに重いし」
「そうなんだよ! それに為しに国の職人さんに銃弾を弾頭だけ作ってもらってみたらさ、それも普通に元手として使えたの! しかもそれを使えば周囲の金属鉱石の消費量は一発につき二グラムに減らせたの!」
「それって、金属鉱石を変形させるのに余分な金属鉱石を消費してたって事?」
「そう! つまり、弾頭だけ作れれば、あたし製の銃で一から生産するより、少量の金属鉱石を使って発射できるって事!」
「でも、今は職人さんにも、少量だけど三八式歩兵銃は作ってもらってるしさ、銃弾で統一した方が良くない?」
「それはそうなんだけど、生産の工程がめんどくさくなるし、まだ弾薬を作る技術が未熟だから、あたしのはやっぱり弾頭だけにしようと思ってね」
「それって、戦場で混乱しない?」
「まぁ、生産ラインとハーバー・ボッシュ法を現在進行形で瞳さんが模索してるから、全部弾薬有りになるのは、それが安定したらかな。だから混乱しないように今使ってる銃は全部あたし製」
「それなら今のところはいいかな。海軍の急速な増強は難しいから、陸軍の増強には期待してるよ」
「誠心誠意頑張ります! 女王陛下」
「「あははははッッッッ!!」」
こうしてわたしたちは笑い合い、久々の休暇を楽しんだ。わたし達はこれからまたややこしいことに巻き込まれるとも知らずに……。




