第零話 始マリ
「バンザ――――――イ!!!!」
突如として薄暗い部屋響き渡るわたしの歓喜の声。
「どど、どうしたの!?葵姫!?」
「やっとだよ!やっと自衛隊観艦式に行けるんだよ!友美ちゃん一緒に行こうよ!」
「いいよ葵姫。行こ行こ!」
「どうせならこのミリタリー研究部全員で行くってのはどうだ?」
わたし達の会話に割り込む一人の男性の声。
ここはわたし達、高校生のミリタリーファンが集まる部活、ミリタリー研究部だ。
自己紹介が遅れたが、わたしの名前は白雪葵姫。
この部活の部長をしている。
生まれた時から髪が白くなるほど色素が薄くという事以外は普通の十七歳の女子高校二年生だ。
さっきわたしが観艦式に誘ったのは、わたしの幼馴染、山下友美ちゃん。
彼女はスタイル抜群で、しかも髪はさらさらのロングヘア。
わたしは髪質がいいわけでもないし、洗うのもめんどくさいから、ショートヘアにしているけど、正直友美ちゃんが羨ましい。
そして、この突然割り込んできた彼は山本一二三。
こいつもわたしの幼馴染だ。
小さい頃はよくわたし達三人で近所のおじいちゃんから教えてもらった日本軍人の真似をして万歳突撃ごっこをして遊んでいた。
彼は背が低めで、一六五センチのわたしよりも少し低い。
大分コンプレックスなようなので、そこをいじられるとめちゃくちゃキレる。
「その提案は本来、部長である姉さんから言って欲しかったですがね」
この子は白雪葵。
わたしの一つ下の可愛い弟だ。
この子の身長はわたしと同じくらいで、しかも顔もわたしと似ているのでよく双子と間違えられる。
因みに、わたしはよくブラコンだとからかわれるのだが、あまり自覚はない。
「なッ!?こんな姉でごめんね……。
葵……」
「そんなにしょげなくてもいいでしょ。
葵姫」
「葵姫、お前、葵に弱すぎ」
「ブラコン……」
「忠政君。
その言い方は白雪先輩が嫌がるからダメですよ!」
「すみません。
白雪先輩……。
これでいいのか?満月」
「白雪先輩すみません。
これで許してあげてください」
「まぁ、いいよ。
栗林君と牛島さん」
この二人はわたし達の一つ下の後輩である栗林忠政君と牛島満月さん。
この二人は小学校からの仲らしいけど、それ以上の関係にしか見えない。
しかし、二人の間に恋は無いらしく、くっつきそうでくっつかないこのもやもやした関係が、わたし達の目の肥やしになっている。
栗林君の方は前髪で片目を隠し、よく隅の席に座って本を読んでいる暗い感じの人なのだが、背も一七〇センチはあるし、そのクールな感じがかっこいい。
牛島さんの身長は私よりも一〇センチくらい低い一五八センチ程なのだが、顔といい、背丈といい、少し茶色がかったツインテールといい、なんせ可愛い。
しかも何かとは言わないが大きい。
とにかく大きい。
これを言ったら確実に牛島さんに怒られるが、マジで牛並み。
「ちょっと!忠政はんと満月はん!どさくさに紛れてなにいちゃついとんねん!!」
「だよな。
"アリガ"」
「"アリガ"ちゃうわ!"アルガ"や!!」
彼女は有賀幸樹。
彼女もわたし達の一つ下で、ポニーテールがよく似合い、背はわたし位でちょっと気が強い子だ。
関西出身らしく、鋭い関西弁を使っている。
「やっぱり、恋愛は禁止にした方が良かったか?」
「「えッ!?そんなのしてません!!」」
「まぁまぁ。
幸樹殿とひふみん、そこはこらえるべきであります!それに、ひふみんは部長じゃないんだから、そんな権限ないでしょ?」
「そうだがな。
というか瞳。
俺一応先輩なんだからな……」
「え~いいじゃん!よく徹夜でゲームする仲じゃない」
「まぁ、そうだがな……」
彼女は今村瞳身長は一六〇センチ位で、髪型はボブヘア、黒縁の眼鏡をかけている。
普段はあります構文を使っているが、一二三とはよくゲームをする仲らしく、二人は先輩後輩の壁を越えて仲が良く、話し方も大分砕けている。
彼女は銃に戦車に戦闘機、そして戦艦に至るまで様々な分野と時代の武器を熟知していて、うちの知恵袋だ。
この計八名が、わたし達、ミリタリー研究部のメンバーです!!
「まぁまだ、みんな落ち着いて。
今度の観艦式みんなで行こ!あと、恋愛は自由!分かった?」
「「「「「「はーい」」」」」」
「「なんでわたし達の言い分は通ってないんですか!?」」
わたしはなんとか場を抑えられてほっとした。
しかし、突如として私を強烈な頭痛と眩暈が襲った。
すると、それに連動するようにして、突然わたし達の足元に魔法陣が現れた。
みんなが咄嗟にわたしに駆け寄ろうとした瞬間、部室内は眩い光に包まれた。
「う、うう……。
ここは……?」
わたしは気が付くと、さざ波が聞こえた。
頭痛と眩暈は収まっている。
しかし、見た事のない景色に混乱するわたし。
「そうだ!みんな!?」
わたしは立ち上がり周りを見渡すと、みんながわたしの近くに倒れていた。
「みんな!?大丈夫!」
わたしは慌てて一人一人に駆け寄った。
全員息はあった。
このまま放置しても危ないが、正面には海、後ろには森が広がっている。
「いったいどうすれば……」
ガサガサ……。
すると、後ろの森から物音がした。
これで肉食の野獣なんかが出てきたらわたし含めみんな食べられて終わりだ。
わたしは冷や汗をかきながら物音がする茂みをにらみつけていた。
ガサッ!!
そして出てきたのはなんと、長い黒髪にハイビスカスを付けた少女だった。
出典【Picrewの五百式立ち絵メーカー】