喧嘩
「おい、紬まてって。」
「ついてくんなクソ。」
周りから見るとジョーカーがひとりの女子を追いかけている異様な風景があった。
やばい、このままだと変な意味で注目の的になってしまう。どこか移動しないと。紬は急いで校舎裏に向かった——
紬は人があまり通らない道のりを使って校舎裏に到着した。
ここならみられる心配もないから大丈夫。
「どうしたんだよ、急に。」
蓮は紬の腕を掴もうとしたが、振り解かれてしまった。
「だから、忘れ物したんだって」
「あの話しようとしたから怒ったのか?」
「あの話って?なんのことかよくわかりません。とにかく私は忘れ物しただけなんで、それじゃ。」
紬は校舎裏から離れようとしたが、腕を掴まれた。今度は振り解くことができない強さで。
「あの時は……ほんとごめん。」
あんなに苦しんだ私に言う言葉がそれ?何に対してごめんなの。あなたは多分私がどうしてこんなに苦しんだのか本当の理由を知らないんだね。紬は蓮に対してと同時にあの時何も出来なかった自分に対しての憎しみが混ざり、心の中がぐちゃぐちゃになっていた。
「紬、聞いてくれ。あの時は——」
「紬さん。そろそろお昼が終わってしまいますわ。」
蓮と紬に追いついた楓は蓮に話しをさせないように、会話に入り、紬の手をつかんでいる蓮の手を掴んだ。紬は精一杯の笑顔で楓に答えた。
「そうだね!帰ろう。」
「おい、待って。話はまだ——」
楓は蓮と紬の間に入った。
「すみませんが、蓮さん。時間なので……」
楓は紬に聞かせないように蓮の耳元で囁いた。
「私はあなたがしたことを忘れません。あなたが紬さんを止める資格があるか自分の心で考えてください。」
楓は微笑みながら、話した。
「ほんとお前、俺のこと嫌いだよな」
「嫌いではないです。ただ、あなたの周りを見れていない行動が嫌いなのです。あなたはもう少しあなたの行動で、周りにどんな影響が出るか考えた方が良いですよ。」
「それは、どういう意味?」
「さぁー、自分でお考えください。」
楓は蓮に注意した後、紬の元へ向かい自分たちの教室へ向かった。蓮は一人、楓が言っていたこと、紬についてのことを考えていた。
紬は楓と教室に向かうまで、何もなかったように笑顔で振る舞っていた。
「あの、紬さ——」
「楓、蓮となんの話ししてたの?」
「……少しアドバイスをしただけです。」
「ふぅーん。そういえば、葵は?」
「体調が悪くなってしまわれたようです。今は保健室にいらっしゃると思いますが……」
「え?!それ先言ってよ!保健室行かなきゃ。」
紬は保健室に向かおうとしたが、楓に止められた。
「今はやめといた方がよろしいかと思います。葵さんの分のノートを取って差しあげた方がよろしかと。」
「わかった。そうするよ。」
いつもの楓ならお見舞いに行くんだけどな。紬は納得できなかったが、日頃見してもらっているので、借りを返そうと考えた。
「でも、翼くんに申し訳ないな、お昼一緒に食べるって言ったのに。」
「しょうがないです。後で謝りにいきましょう。」
「そうだね。」
——あちらも複雑そうですし——
「なんか言った?」
「いえ!なんでもないです。いきましょう。」