明日以降のしあわせ
潮風がささやく喫茶店に入った
もう何年か前のことだから
キミの前では
過去のことは振り返らないと
こころに決めていた
・・キミのほうは喫茶店をやりたいという
夢が叶って良かったな
その言葉の裏には
僕はまだ自分の夢をあきらめていないからと
強気に見せたがる
昔と変わらない自分がいる
話が途切れてしまうのは
今日は人手が足りないらしく
こうして話している時間も
キミにとっては惜しい時間となるだろう
あちらこちら視線を配るのは
そのせい
ふたりの過去がたとえ美しくても
過去に戻りたくなっても
僕はキミの明日以降のしあわせも
祈っている
流した涙の存在も
ここにはない
さっき、偶然に
薬指に光るものを見つけたから
喫茶店近く、
砂浜に降りたってみた
景色をひととおり見る前に
涙が少し、こぼれた
あれだけ、好きだった
ずっと、好きでいてくれた
だけど、叶わないことだって
たくさんあるんだね
またひとつ、
涙がこぼれた
申し訳ないけど
この涙は
潮風のせいにしよう
そのくらい、許してくれるだろう