Cの5班緊急出動(2)「メオル視点」
7話目です。やっと戦闘シーン登場です。
進んでいくうちに後ろにいた装甲車は班長の指示を受け、別の方向に走っていった。
目的地についたらしく、装甲車が止まる。
装甲車を下りて、周りを見回した。
ビルの立ち並ぶ通りで視界が悪いので先に標的を察知するのは難しそうだ。
普段は車や人の通りが多く、喧騒に包まれているのだろうが、避難し終わっているので、シンと静まり返っている。
二人はどうかな?と後ろを振り返るととんでもない風景がそこにあった。
装甲車を下りたテルシアが荷台から降ろしたコンテナを背負って、装甲車の上部に取り付けられた機関銃を取り外す所であった。
コンテナは一抱えほどの大きさがあるのだが、リュックのようなベルトが何故か付いており、テルシアはそれを背負っていた。
さらに驚くことに、取り外した機関銃を片手に装甲車から飛び降りる。持って動けるような重さではないはずなのだが、彼女は自身の身長ほどもある機関銃を片手で持っていた。
よくみると銃の上部にグリップと引き金代わりのボタンが付いている。
通常は左右にハンドルとボタンが付いているものだが、特注品だろうか。
背中のコンテナから弾丸の連なったベルトを取り出して機関銃にセットする。
自分用の銃も持ってきていたようだが使わないのだろうか。
下りてきた班長の方を見ると、いつに間にか顔にいつもの微笑が戻っていた。
よく見ると左手に持った端末以外に何も武器らしき物は見当たらない。
「…班長、武器はないのですか?」
「現場指揮に専念するので必要ないですよ。」
「でも、何かしら持っていた方が…」
「私がいるからだいじょーぶ!」
横から機関銃を持ったテルシアが元気そうに言う。本当に大丈夫だろうか。
聞く気はなさそうなので諦めることにした。
インカムからオペレーターらしき男性の声が聞こえてきた。
「…班長側に2機…その他の班に1機ずつ…」
初日に廊下ですれ違ったあの男の声であった。相変わらずやる気0である。
オペレーターは拠点のオペレータールームからドローンの映像を確認、分析して現地の戦闘員に情報や指示を出す役職だ。
だが、このオペレーター、情報を出してから何も指示を飛ばさない。
指示は後ろにいる班長が出していた。
ビルの壁沿いを歩きながら周りを警戒する。咄嗟に避難する場所も常に意識に入れる。
機械兵は基本的に機関銃を装備しているので、もし弾丸を使い切っていないのなら、視界に私たちを入れ次第、撃ってくるだろう。その時に咄嗟に隠れる遮蔽物がなければミンチの完成である。
班長が指示する方向に向かっていると目の前にT字路が見えてくる。
するとガシャン…ガシャン…と微かに金属のぶつかる音が聞こえてきた。自然と緊張で体が強張っていく。
「こっちに向かってきそうなので、ここで張りましょう。」
班長の指示に従い、ビルとビルの間にある路地に身を隠す。
段々と音が近くなってくる。銃を握る手に力が入ってくる。自分の心臓の音がうるさく感じる。
身を隠して、2分が経っただろうか、体感ではもっと長く感じた。音がかなり近くなった。
すると突然、向かいの路地に身を隠していたテルシアが飛び出し、T字路へ全力疾走を始めた。
「テルシアちゃん!?」
機械兵に肉薄するなど正気の沙汰ではない。班長の方を振り返るが全く焦っている様子はない。
テルシアが手近なビルの窓に足を掛け、跳躍する。
人が持って移動できるはずのない機関銃を片手にビルの3階ほどの高さまで飛び上がった。
「メオルさん!銃を構えて!」
現実離れした光景に頭がついて行かないが、後ろから聞こえてきた班長の声で我に返る。
すぐに銃を構える。
同時にT字路から機械兵が姿を現す。
高さは4mほどだろうか。4本の脚に2本の腕。全身が銅色の装甲で覆われており、片方の腕には巨大な銃器が装着されている。
頭は体に比べて小さく、カメラレンズが3つ光っている。
姿を現した機械兵の頭に跳躍したテルシアが飛び掛かる。
機械兵のカメラはセンサーのような特殊な装置は搭載されていないようで、単純に視界に入ったもののみを認識する。
建物の影になっていたテルシアの不意打ちは避けられなかった。
テルシアは機械兵の肩に着地するや否や、カメラに向かって機関銃を撃ち込む。
機関銃の駆動音と破壊音が1秒ほど、テルシアが機械兵をそのまま踏み台にして飛び去ったあとには頭がスクラップになり、フラフラしている機械兵が残された。
機械兵は胴体にある機関部分を一定以上破壊しなければ動きを止めることはない。視界を奪われて行動不能になっているが少し経てば、視界が利かなくとも手当たり次第に暴れるだろう。
反撃される危険性が薄い今が好機と見て、狙いを腹の装甲の隙間から見える機関部分につけて撃つ。銅色の機械兵は数が多い代わりか装甲の隙間が広く、破壊難易度は比較的低い。
着弾すると、弾が爆発し機関を破壊する。1発では止まらないので別の個所に狙いを変えてさらに1発。
限界が来たらしく、機械兵は動きを止めてガラガラと崩れ落ちる。破壊した機関部分は消失していた。残されて転がった装甲も少し経てば消えるだろう。
機械兵は真世界団の能力者によって作成されているようで、壊れると能力が解除され消えるのだ。
機関部分と装甲は別々の能力で作られているらしく、鉱物資源を必要としないので主要な戦力となっているようだ。
1機を片付けて、先に行ったテルシアの後を追う。T字路を曲がると、そこには既に機関部分を破壊されて装甲のみになった機械兵と残骸に座っているテルシアの姿があった。
どうやら1機目の撃破は私に譲ってくれていたらしい。
「他のメンバーも撃破は終わったようですね。まだ状況自体は終わってないから4班からの要請に備えて待機していましょうか。」
休憩のために近くのビルの壁に背を預けて座る。
激しい運動はしていないが、緊張が疲労感を増加させていた。
激しい運動といえば…と先ほどまでとんでもない重量を片手に飛び回っていたテルシアの方を見るが涼しい顔である。銃を地面に置いて水筒に口をつけていた。
「テルシアちゃんの能力って身体強化?」
「そうだよー。」
身体強化とは文字の通り、身体の能力を底上げする能力だ。
筋肉だけでなく、骨や皮膚の強度も上げることができる。人が扱えないような武器を持って縦横無尽に駆け回れるのでかなり重宝される能力である。
一口に身体強化といっても様々なタイプがあるのだがテルシアは一般的な全身の筋肉、骨、皮膚の強化だろう。
しかし、身体強化という能力自体は重宝はされるものの能力としては珍しい部類には入らない。そんな能力を持つ彼女がなぜ特別監察対象に指定されているのか、さらに分からなくなった。
同じく特別監察対象の班長も今回は丸腰参戦で戦っていないのでどんな能力か知ることはできなかった。
7話目どうだったでしょうか。
テルシアを強く見せるため、というのと情報を詰めすぎて訳が分からなくなるのを防ぐため。ということで戦闘シーンはかなり簡潔になっているかなぁと。
戦闘シーン求めて見てくれている方がいたら申し訳ないなぁと思いつつ投稿。
もし良ければ一言でも感想をいただけると幸いです。