Cの5班チュートリアル(1)「メオル視点」
4話目です。投稿ペースが遅すぎると感じたので現在ストックを貯めている所です。今書き溜めている分を分け次第一気に投稿するつもりです。
いつの間に眠っていたのだろう。目が覚め、持ち込んだ目覚まし時計を確認すると午前3時半を少しすぎた頃であった。
前の班では班長が時間に厳しく、午前6時に朝礼を行っていた。遅れると怒鳴られて朝から風当たりが強く、最悪な1日を過ごすことになるのだ。
なので午前4時には起き、時間に余裕をもって身支度を整えるようにしていた。慣れない環境とはいえ習慣は抜けないものだなと一人で少し可笑しくなって笑った。
しかし、この班に朝礼のような習慣はあるのだろうか。特に班長からは何も言われていなかった。
対策部隊は各地に点在しており、それぞれが班という単位で分けられている。奇襲が十八番の真世界団への対策なのだそうだ。
全ての班には要約すると「武器や能力の扱い気をつけろよ、労働基準は最大限守れ、仕事はこうしろ」くらいの取り決めしかない。
班を引き締めるために軍隊のような取り決めを独自に行う班も多く存在するし、実際に人の命に関わる仕事なのでそうした引き締めも必要だろう。
しかし、中には「仕事こなせばいいんでしょ?」みたいに特に独自の取り決めを行っていない班も存在する。
勿論、不定期で審査が入るので不正や怠慢が存在する場合はその際に摘発される。
この班では恐らく、独自の取り決めはないだろうとは昨日の雰囲気から考えられるのだが一応身支度を整えて談話室で待っておくことにする。
身だしなみを整えて、談話室に向かう。
ドアを開けると誰もおらず、静かな空間が広がるだけであった。
1日しか過ごしていないはずだが、あの2人がいないことに違和感を感じる。
起きてしまったので誰かが来るまで待とうとソファーに腰掛けて待つことにした
。
談話室に着いた時点で腕時計を確認すると午前6時を少し過ぎた頃だった。
前の班であれば朝礼と点呼で緊張感しかなかったのだが、この班では人の気配すらしない。
しばらくぼんやりしてから、近くにコンビニがあったはずなので朝食でも買いに行くかと腰を上げる。
談話室を出ると階段からコツコツと規則正しい足音が聞こえてくる。
階段を下りてきたのは背の高い女性であった。キリっとした顔立ちで、綺麗な茶髪を後ろで束ねている。この人はしっかりと隊服を着ていた。
「おはようございます!初めまして、昨日からこの班に配属となりました。マトルア・メオルです!よろしくお願いします!」
とお辞儀をしながら昨日の失礼極まりない先輩を思い出した。この先輩はどうなのだろう。
「おはようございます。私はガルゼン・ナウクリー。よろしくね。」
普通に返され、また驚いたが、辛うじて顔に出るのを抑える。
「しっかり起床できてて偉いわね、ここの班員は9時くらいまで自分の部屋から出てこないから…見習ってほしいものよね。」
予想通りだった。
「ガルゼン先輩は今からお仕事ですか?」
この班で早く起床するということは多分仕事だろうとあたりをつけて聞いてみる。少しでも仕事を把握して、不安を減らしたい。
「そうね、今日は私の当直だから準備しておくの。…まあ、この班は中々仕事が回ってこないけどね。それでも仕事だから仕方ないわね。」
じゃあね。とロッカーの方へ荷物を持って歩いて行ってしまった。
9時まで誰も起きてこないことが分かったので、朝食を買いに行くことにした。
朝食を摂り終わり、目覚ましのコーヒーを片手に談話室のソファーに腰掛けてぼんやり過ごしていると廊下から人の気配がするようになった。
腕時計を確認すると8時になるかならないか程の時間であった。
4人ほどが談話室を出入りしていったので挨拶を済ませる。男2女2であった。どの人も変なところはなく常識的ないい人達であった。
3人は今日は非番らしく、どこかへ出かけるようであった。
自分は当直だというアニ・リンメイという女性が準備を終えてから話し相手になってくれた。
せっかくなので仕事内容について詳しく聞いておくことにした。
班によっては割り振り人数が異なる上に、地域によっては特別な業務が加わることもあるからだ。
幸いなことに、この班の仕事は巡回や応援要請のための待機など一般的なもののみであった。
不思議なのがこのCの5班の担当区域はCの3班と4班の担当区域に跨るように位置しており、完全な担当区域というものが存在しないことであった。
2つの班の補助という立ち位置であるらしい。
と、情報収集を行っていると班長が談話室のドアを開け、入ってきた。
やはり片手にはマグカップを持っていた。
「おはようございます。昨日は寝れました?」
俺はぐっすりでした。と言いつつ定位置らしき席に座る。
「緊張してあまり眠れませんでしたね。アハハ…」
「それはよくない。早く慣れてぐっすり寝てくださいね。睡眠不足は健康の天敵ですよ。」
リンメイさんは班長の奇妙な物言いに慣れているのか苦笑いを浮かべる程度であった。
どうも、会話がかみ合ってない感じがするのだ。返し方は不自然ではないが何故だろう。
少し首をひねっていると、談話室のドアがバーンっと音を立てて乱暴に開け放たれる。
そこにいたのはテルシアであった。
「いってきます!」
と一言、また乱暴に扉が閉められた。
昨日のことを謝ろうとしたが、呼び止める間もなかった。
周りを見ると他二人は特になにも気にしていないようである。いつものことなのだろうか。じゃあ、やることあるのでそろそろ行きますね。とリンメイさんも席を立ってしまった。
「…テルシアちゃん、何か急用でもあったんですかね…?」
んー、後で話します。と班長はマグカップの中身をちびちび啜りながら、相変わらずくつろぐのであった。
無言の時間が数分ほど続くと、また談話室の扉が開く。
入ってきたのは体格はいいが若干太り気味の男性であった。短く整えた茶髪に目つきの悪い顔。
初対面なので挨拶をする。
「初めまして!昨日から配属になりました。マトルア・メオルです!よろしくお願いします!」
男はこちらをジロジロ見てから口を開く
「モズ・グルーカだ。」
続けて小さく舌打ちし、「初日から挨拶しに来いよ…」と小さくつぶやくのが聞こえた。
また失礼なやつだ…と内心苛立つが顔には出さないようにする
。
「班長、テルシアは?」
モズ・グルーカと名乗った男はそのままムスッとした顔で班長に話しかける。
班長はそんな態度を気にするでもなく答える
「さあ、急いで出かけちゃったけど急用でもできたのかな。」
またか…とブツブツ言いながらグルーカは談話室から出ていった。
私は少し苛立ちながら班長に話しかける。
「なんですか?今の人」
「モズ・グルーカ、戦闘員の人ですよ。テルシアによく話しかけてたけど、あまり好かれなかったようで、避けられてるみたいなんですよね。」
あ、機嫌が悪いのはいつものことだから気にしないであげてくださいね。と付け加える班長の声を聞きながら、先ほどのテルシアの行動に納得する。
あんな失礼なやつに絡まれるのは耐えられないのかもしれない。
この班大丈夫かなぁ…と不安になっていると、班長が思い出したように声をかけてくる。
「そうだ、任務とか当直のこと話してませんでしたね。」
そうだ。で済む話じゃないだろうに…。若干呆れながら話を聞く。
「先任者と同じローテーションに組みますので後で作戦室のボードで確認しておいてください。名前は書き替えておきました。基本二人で連絡を取りつつ巡回です。ルートは範囲指定した地図を渡しますので担当区域内を隈なく見回ってくださいね。」
良かった、前の班とそんなに変わらない任務だった。
場所は違えども慣れ親しんだ仕事ということでいくらか肩の荷が下りる。
「分かりました。…そういえば訓練場が見当たらないんですけど、どこで訓練するんですか?」
普通は各班の拠点には、訓練場が隣接されているのだが、この班では見かけなかったので不思議に思っていたのだ。
銃や能力などを扱う以上、訓練は必須であるし、もう1週間近く銃を触っていないので腕がそろそろ鈍っていそうで不安だった。
「狭いですけど射撃訓練場はありますよ。でも、この班には広い訓練場はないのでCの4班の訓練場を使わせてもらえることになってます。もし、利用したい場合は言ってくださいね。話は通しておきますよ。」
…銃声が聞こえなかったので訓練場があるとは分からなかった。防音加工がしてあっても漏れ聞こえてくるものなのだが…。
私の銃は今日の昼に持ち切れなかった荷物と一緒に届く予定なので、訓練場を使わせてもらうことにする。
4話目はどうでしたでしょうか。
もし良ければ一言でもいいので感想もらえると嬉しいです。