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対能力者部隊 Cの5班  作者: 木ノ村 定
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Cの5班配属初日(3)「メオル視点」

3話目ですね。今回は長くなってます。

自分で書いていると面白い、読みやすいお話を書く方々の凄さが身に染みて実感できますね。

見ている人からすると話が遅々として進まないから退屈かもしれないなぁ。と思いながら書いた部分です。

食堂の観音開きのドアを押し開けて中に入る。厨房と直接隣り合っており、すでに調理に取り掛かっている班長が見える。

テルシアはカチャカチャ音を立てながら食器の準備をしている。


「私も手伝います!」

と班長に近づく私であったがその腕をむんずと掴む手があった。

いつの間にやら後ろにいたテルシアであった。

「新人さん、お手伝いならお米を炊く役があるよ。」

心なしか言葉から圧を感じたので大人しく従っておく。


米を研ぎながら、料理をするのは久しぶりだなとぼんやり考える。

米を炊くだけだがこれも料理といえるだろう。うん。

電気がまのスイッチを入れ、後は班長の調理が終わるまで待つことにした。


手持無沙汰でいるのは申し訳ないので、何かしら手伝いたいのだが、テルシアに阻まれるため、大人しくテルシアと座って待つしかなかった。


調理が終わり、食卓に3人分の料理が乗る。

米と野菜炒めとスープという質素な献立であった。品目が少ないせいか、それぞれの量が多くなっている。

班長の量が私とテルシアの分よりもやたらと少ないので聞くと「小食なんですよ。」と返された。体格を見るにもっと食べたほうがいいと思ったが口には出さなかった。


料理が並ぶとテルシアは早速食べることに集中し始めた。向かいに座る班長も食べ始めたので、つられて野菜炒めを口に運ぶ。

美味しかった。「美味い!」と思わず出るような味ではないのだが、実家の味という言葉がしっくりくるような落ち着いた味であった。

「美味しいです。」

「それは良かった。テルシア以外に作ったことはなかったので口に合ってよかったです。」


テルシアは黙々と食べ続けている。提案した時は歓迎会的なニュアンスに聞き取れたのだが、手料理を食べる大義名分で言ったのでは…という疑惑が浮かぶ。

まぁ、ご相伴にあずかることができたので、ありがたく思うことにした。


特に会話らしい会話もなく、私も黙々と食べていたのだが、ふと疑問を思い出したので聞いてみた。

「テルシアって何歳なんですか?私よりかなり若く見えるんですけど。」

身長はもちろん、言葉遣いや振る舞いも幼く感じていたのだ。部隊に入っているなら少なくとも18歳ではあるはずなのだが、彼女はそれより幼く見える。


「14歳だよ。」

「14!?」

驚いてそれ以上の言葉が出てこなかった。法律に詳しいわけではないが、正規雇用できるのは18歳からではなかったか。それも危険の伴う仕事である。親御さんは許しているのだろうか。

「特別監察対象ですよ。」

班長から補足が入る。


特別監察対象。一応知ってはいる。

「アールア・シカトル」、通称「真世界団」と呼ばれる危険組織が存在する。危険組織とはされているがその勢力は国家レベルとなっている。


その勢力を国家レベルと言わしめるまでにしたのは個人の持つ特殊能力である。

元々少ない能力持ちではあるが、その中に一人で世界レベルで影響を与える能力を持つ者も存在する。真世界団はそんな強大な能力者を複数人抱えており、6つの国家全てに脅威を与え続けている。


特別監察対象制度とは、影響力が高すぎる能力者を真世界団に取り入れられる前に国で囲っておこうとする制度だ。

指定するためには、明確な根拠が必要であり、さらに国の機関に移すには両親と本人の承諾が必要なのだ。


特別監察対象に指定され、国の機関に移されると多少の検査を受けることになるが、生活は保障され、本人の意思があれば部隊に参加し仕事を得ることもできる。


勿論、そんな危険な能力者がゴロゴロいるわけないので、初めてお目にかかった。

「危険だけど怖くないの?」

きっと彼女も強い能力を持っているのだろうが聞かずにはいられなかった。

「別に?私が生きる理由だもん。怖くなんてないよ。むしろありがたいかも!」


また、食事に戻る。平気でそんなことをいう彼女が歪に見えてくる。

「でも…テルシアちゃんはまだ若いし…他にもやるべきことがあるんじゃないかな?」

口にし終わって異変に気付く。テルシアの顔から表情が消え、ギラギラした目でこちらをまっすぐ見ていた。

「…お前も邪魔するの?奪われて大人しく引っ込んでろって言うの?私は耐えられない、うずくまるくらいなら死んだ方がいい、絶対に。邪魔するなら…」


沈黙が続く、彼女の口から次の言葉が紡がれるのが怖かった。どうしようもない狂気と決意を孕んだその言葉が

「テルシア」

班長が制止に入る。内心とてもホッとした。

「メオルさんは何も知らなかったんだから、ね?」


テルシアはうつむいてしばらく黙っていたが、やがて顔を上げる。

「…残り、貰ってっていい?」

「もちろん、ちゃんと冷蔵庫に入れておくんだよ?」

テルシアはうん!と頷き、料理の残りをどこからか取り出した容器に詰めて食堂から出て行ってしまった。


班長は席を立ってお茶を淹れてきてくれた。隣に座り直すとぽつぽつと話し始めた。

「テルシアは監察対象として発見された当日に真世界団に両親とも殺されていたんですよね。それもかなり残虐だったのかな。見たでしょう?普通の女の子があんなにまでなるなんて。

きっとあの襲撃がなかったら彼女は普通に、幸せに過ごせただろうし、監察対象になることもなかった。」


確かに、見た目も幼いが、振る舞いはさらに幼い。なのに垣間見せた異常な狂気。かなり違和感を抱いたのは事実だった。


少し間を開けて、班長は言葉を続ける。

「彼女の生きる意欲を突き動かしてるのは復讐だけなんですよ。だから邪魔しないであげてほしい。無責任かもしれません。けど、彼女に復讐の代わりになるものを与えることは、少なくとも俺にはできない。」


班長の言葉を聞いて考える。確かに、何も知らなかったとはいえ、無責任すぎた。ただ幼い子が戦うという事実に対する義憤だけで彼女の意思を蔑ろにするようなことを言ってしまった。怒るのも当然であろう。


「…浅慮でした…すみません…」

「まぁ、怒ってはいたけど、引き摺るような子じゃないからとりあえず謝っとけば大丈夫じゃないですかね。これから気を付ければいいと思いますよ。」

じゃ、おやすみなさい。班長も帰り、私は食堂で一人になった。


その日はテルシアを見ることは無かった。

自室に戻り、入浴を済ませ、簡易ベッドに寝転がる。最初の班に配属された時は任務へのプレッシャーや慣れない環境で眠れなかったものだが、今日は部隊とは思えない雰囲気やテルシアとの出来事、班長の言葉が頭でぐるぐる回って、すぐに寝付くことは出来なかった。


3話目どうだったでしょうか。異動初日が終わりました。

前書きで書いた通り長いし、3話で進むのが1日。「話の進みが遅い!退屈だ!」って方いたら感想に書いて下さると助かります。

お話自体は1章分を書き終わっていますので、このシリーズとは別のお話を書く際に指摘とかどこが面白くないとかを参考にしていくつもりです。

一言でもいいので感想おねがいします。

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