Chapter8 死
ここ最近、チトがボクに与えるパン屑の大きさが明らかに大きくなっている。
ついに限界が来たか。
最近のチトは何だかふらふらとしていておぼつかない。
やはり人間は貧弱だ。ボクらと違って食事を摂らないと死ぬんだから。
いつかは来ると思っていた。急速にパンの減りが早くなり始めるのを。
チトの手に持ったパンは残り二十センチといったところか。
チトはあろうことか、それを千切ろうともせずにボクに投げようとしてくる。
「言ったはずだよチト、ボクは人間に食われるなんて下らない理由で死ぬつもりはないって」
喉奥で火の粉の塊を作る。
これくらいじゃ殺すことは不可能だけど、目くらまし程度にはなる。
だから、いざとなったら……。
吐き出そう。
----としたら、途端、チトが倒れた。
「チト!」
喉奥の火の玉を飲み込んで、倒れたチトに駆け寄る。
何度呼びかけても応答がない。
つまり、そういうことだった。
どこかで想定していた事が起きただけだ。
チトが倒れた拍子に、背負っていたリュックが口を開けて中身を吐き出しながら傍らに横たわっていた。
そこにあったのは――――
大量の缶詰やお菓子、パンといった食糧類と、
その中に紛れるようにしてあった一通の手紙だった。