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Chapter1 花火
戦争がまた始まった。
上空を見上げれば、宙にいくつも浮かんだ戦闘飛空船が次から次へと砲弾を西へと飛ばしていく。
かと思えば西からも砲弾が飛んで来て、宙に浮いていた何艇もの戦闘飛空船が派手な爆発音を上げながら弾ける。
「まるでいつかどこかの集落で見た花火みたい」
それらを見上げながら人間の少女、チトは、アホっぽく口を開けながら呟く。
「呑気なモンだね。自分の国の船がやられているというのに」
「それを言うならアナタもでしょう?」
チトは上空から真下の足元に居るバケモン、モダに視線を移して問う。
「ボクはいいんだ。国の人間どころか、人間じゃないんだからね。でもキミは違うだろう」
ふうんと興味なさそうに相槌を打って視線を外した。
「だって私もこの国の人間じゃなくなったし。亡命ってそういうものでしょ?」
「まあ、ね」
モダの適当な返事を聞くと、会話はそれで終わった。
チトは五センチ大のパン屑をモダに与えた。