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あわ

作者: 小雨

朝起きると、僕は泡状の何かになっていた。なぜか眼鏡はかけたままだった。


記憶を辿ってみたが、昨日は何か特別な事をしたというわけではないように思う。

いつもどおり残業をし、会社から帰った後は軽く食事をとり、床についた。


こんなことは初めてだった。

これはどうすれば治るのだろう…現在解明されている、どのステータス異常にも当てはまらないような気がした。


どうしようもないので、とりあえず会社に向かう。


いつものように電車に乗ろうとして、ふとためらいを感じた。

よくわからない僕みたいな泡状の物体が満員電車に乗ったら、色々と大変なことが起きるのではないか。


●踏まれる

●電車とホームの間を越えられない(最寄り駅は異常に間が広いため)

●どこかに染みこんでしまうかもしれない


etc...


少し考えただけで様々な事態が発生するような気がした。

そもそも、泡状になってしまった異端者はどのような扱いをうけるのだろうか。

何が起こるか未知数すぎたため、通勤経路を下水道にすることにした。

ここなら、むしろ泡の一匹?や二匹?いる気がしたからだ。

僕と同じ様な影を見たような気もしたが、気のせいだと思うことにした。

下水道は意外と混んでいて、少し遅刻してしまいそうだった。

遅延証明書出ないですよね?


会社に着くころには泡状態はすっかり治っていた。何だこのステータス異常は。

この状態を便宜的に泡と名づけることにする。

上司に遅刻の理由を聞かれたので、泡になってしまっていた旨を伝えると納得してくれたらしく、それ以上問いただされることはなかった。

それと、どうやら遅延証明書は貰えるらしかった。

泡のままだったなら仕事をしなくて済んだかもしれなかったので、少し残念な気がしないでもなかった。

同僚に遅刻した事を謝罪し、業務に入った。


業務中に、緊急度の高い障害が発生した。厄介な顧客と連携をとりながら速やかに障害復旧を行わなくてはならない、極めて面倒な障害だ。

「やっくん、早く早く顧客に早く電話して!」

同僚のやっくんがリーダーに指名された。僕は正直、「指名されなくてよかった〜」なんて思いながらやっくんの方にチラッと目をやった。


すると、やっくんは泡になっていた。

やっくんが変化したと思われる泡には、彼のトレードマークであるヒゲが生えていた。

「やっくん、泡になってます!」

「じゃあ君でいいや、早く早く顧客に早く電話して!」

結局僕が指名されてしまった。

やれやれ…理想的なタイミングで泡になったってわけだ。


後でやっくんに話を聞いてみると、わざと泡になったわけでは…

ないらしかった。

ただタイミング的に申し訳なく思ったのか、

「今度障害発生したら、泡になってていいですよ。僕が対応するんで」

などと言っていた。やっくんはヒゲを生やしているが、意外といいやつなのだ。

最も、僕は泡への能動的な変化の仕方がわからなかったので、曖昧に返事をしておいた。

自ら変化できるということは、ステータス異常というわけではないのだろうか。


あれから数ヶ月が経過するが、泡になる状態が再発することはなかった。

一体あれはなんだったのだろうか。多少の疑問は残ったが、次第に僕は泡について考察することをやめ、普段の生活に戻っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  どうも、ジンダイです。  「あわ」ってなんなんでしょうね?心の膜…かな?何か強い精神的なショックでああなったとか?  主人公以外の人は「あわ」のことを知っていて、自分の意思で変化できるって…
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