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回復魔法(コンクリート)

「あ……」


 それはあっという間の出来事で俺は自分の手を見ている。

 足止め位になればとか思いながら放ったそれは洒落にならない状況にしてしまった。

 一撃。

 一撃で二体同時に仕留めてしまった。


 俺の魔法強くね?

 え、ていうか俺のスコップの出番は? せっかく装備できたのに活躍の場ゼロ?

 見れば後ろの大木すら余裕で貫通してコンクリートの塊はどこかへ行ってしまっている。

 これ、人に向けて撃ってはいけないな。

 子供どころか大人が見てもトラウマだよ、うん。

 

 急な静けさにちらっと後ろを見る。

 するとあれだけ緊迫して騒いでいた三人が皆唖然とした表情でこっちを見ている。

 口なんて半開きでルウに至っては口元から涎が出ている。

 美少女とはいえ涎を垂らしているのは流石にあほっぽい。


「えっと、あの……」


 恐る恐る三人を見ると三人はハッとしたように立ち上がった。


「す」

「す?」

「すっごい! 凄い凄い凄い!」

 

 ミアナが目を輝かせて俺に駆け寄ってくる。

 語彙力はどこへ行ったんだと突っ込みたい所だが近づきすぎて俺の身体に大きめの胸が当たっているから無粋な事を言うのは止めておこう。


「おおおおお、すっげえ。三浦お前凄すぎだろ! お前そんな魔法いつの間に覚えてたんだよ!」


 カインはふらふらと俺に近づいて来るが数歩歩いてそのまま倒れてしまう。

 そういえばカインは火傷してたっけ、回復魔法とか無いしな。

 そう思いながらふとギルドカードが再び淡く光っているのに気づく。


☆☆☆


ギルドカード

【名前】三浦冬馬

ジョブ コンクリート開拓士

ジョブレベル14

スキル コンクリート魔法 サイレンス無効

習得魔法 コンクリートウォール コンクリートキャノン コンクリートドライブ コンクリートヒール

耐久力 1562

魔力 26500

筋力 217

敏捷力 303

知力 192

運 5


☆☆☆


 ジョブレベルが上がったおかげでよく分からない魔法が増えている。

 コンクリートドライブとコンクリートヒールか。

 ……ドライブはよく分からないけどなんとなくヒールは回復っぽい。

 それにしてもコンクリートで回復ってどうやるんだよ。

 身体が無くなってもコンクリートで代用できますみたいなものだろうか?

 腕を失ってもコンクリートの腕が! みたいな。

 ――要らないな。


「んーと、待っててください」


 治るかどうかわからないがやらないよりは良いだろう。

 俺はカインの身体に触れる。


【コンクリートヒール】


 治れ……と念じながら魔法を口にした。

 すると――。

 薄く白いコンクリートの膜がカインの身体に広がっていく。

 そして次の瞬間。


『パキパキッ』


 小さな音と共にコンクリートは割れ、破片となり地面に落ちていく。


「お、おおおおお!」


 カインが叫びすっくと立ち上がった。

 元気そうに飛び跳ねている。

 なんとコンクリートが覆った部分の火傷がすっかり綺麗になっているではないか。


「……す、凄い」


 見ていたミアナが口に両手を当てて目を大きく見開いている。

 驚愕だ。

 いや、魔法を唱えた俺自身驚愕してるんだけどね。

 なんとなく傷の上に出来るかさぶたみたいだなと思った。


 しかし、分かった事がある。

 このコンクリート開拓士というジョブ。

 もしかしたらこれ習得魔法がチート並みに強力かもしれない。


 しかし、強いが、魔力の値に反して耐久力はそう多くない事から恐らく俺が即死するほどの攻撃を受けたら魔法唱える事すら出来ず普通に死ぬと思う。

 チート並みではあるが死ぬ確率がゼロじゃない時点でチートじゃない。

 ちょっと俺強いんじゃないかと思ったがそんな事考えて油断したらすぐ死ぬ。

 そう、コンクリートキャノンだってもし一体にしか当たらなかったらもう一体に瞬殺されててもおかしくなかったのだ。


 勝った直後は調子に乗りかけたがこれはいけないな。

 謙虚に、そう男はクールに行こう。

 ――と、そういえばルウは何も言ってくれないな。

 そう思いながら隣を見ると。


「…………」


 ルウが無言で俺を見ている。

 なんか睨んでいるように見えるんだけど前より敵意は感じない気がする。


「怪我とかありませんか? あるなら治しますけど」

「無い、大丈夫」


 ルウは俺と目が合うとすぐに逸らした。


「そうですか、もし後で痛かったりしたら言ってくださいね」

「…………」


 結局返事を返してくれなかったけど小さく頷いてくれた。


☆☆☆


「そこでさ、言うわけよ。その谷を行こうってよ」

「へえ、その危険だっていう谷を行ったんですね」

「私は止めたんだけどね」

「でも行ってよかったじゃねえか、今三浦に話してんだから変な所で茶々入れんじゃねえよ」


 カインとミアナが俺の隣で騒いでいる。

 現在街に向かって戻っているのだが、行きと違ってやけにカインの距離が近い、ミアナも最初以上にどんどん話しかけてくる。

 まるで俺パーティに入ってるみたいだ、いや、入ったんだけど。

 きっと力を認めてもらえたという事なんだろう、嬉しいな。そんな事を考えながら歩いているとぼんやりしていたからだろう、出ていた木の根に躓いてしまう。


「あ」


 転ぶ! と思った瞬間、左手を掴まれ支えられたおかげで転ばないで済んだ。

 見ればずっとカイン達の反対側、俺の隣を無言で歩いているルウが咄嗟に掴んでくれたみたいだ。


「ありがとうございます、ルウ」

「……別に」


 礼を言うが目が合うとすぐにそっぽを向いてしまう。

 こちらは相変わらず好かれていないようだ。

 しかし、転びそうな時に腕を掴んで助けてくれたのなら一応仲間とは思ってもらえているのだろうか、もしそうなら嬉しいけど。


「おいおい、バッファローメイジとバッファローナイトなんつう強敵を倒した英雄様が木の根でこけたらだせえぞ」


 カインが茶化してくる。


「英雄じゃないですよ。ていうかつまづいたの見られてたんですね、恥ずかしいです」

「三浦さんは魔法があるから良いの、多少ぼけてる位の方が可愛いし」


 可愛い? 俺が? 不細工じゃなかったの?


「でもこいつ不細工だぞ? って、何だよルウ、分かった、悪かったよ」

「…………?」


 ルウを見るがルウは何事もなかったかのように前を向いている。


「あ、ほら街が見えたわ!」


 ミアナの指さす方を見ると街が見えた。

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