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森の調査

「で、何の調査に来てるんですか?」


 三人の後ろを歩きながら調査目的を聞いてみた。


「ああ、ぶ……三浦さん。実はこの森でバッファローメイジの目撃情報がありまして……」


「バッファローメイジ?」

「見た目は上位種のミノタウロスにも似てるんだがあいつと違って魔法に特化したモンスターだ、危険度の高いモンスターだな」

「A級冒険者のパーティじゃないと無理かもね」

「やばそうなモンスターなんですね、ちなみに三人はA級冒険者なんですか?」

「一応ね、君は?」


 あれ、俺あの受付のおっさんからそういう説明受けて無くないか?


「カードはある? そこに書いてあるはずだけど」

「冒険者カードに?」


 見れば確かに存在している。

 名前の横に、Dって


「Dって書いてありますね」

「あー、まあ最初ってそんなもんだよね」

「上がれない人はずっと上がれないけど。特に攻撃魔法も使えない雑魚は」

「こらルウ、嫌味を言わない」


 ミアナさんが窘めるとルウはプイっとそっぽを向く。

 どうやら相当嫌われているようだ。

 別に一時的にパーティ組むだけだから良いが。


 ともかく、歩きながらこの世界の事を色々聞いた気がする。

 この世界には四人の神様が存在している話とか。


「言い伝えとかではないんですね」

「実際にあった人もいるし普通に出会えると思うなぁ」

「え、その辺歩いてれば会えるんですか?」

「それはまあ場所によるみたいだけど」


 ――と話していると先頭を歩いていたカインがピタリと止まる。

 口元に指をやり首で前を指し示す。

 四人で覗くと前には黄色く巨大な虫がいた。

 芋虫に似ているがその体長は子供位のデカさである。


 カインは目配せし、三本指を立て、カウントダウンを始める。

 そして最後の一本が下ろされた瞬間。

 俺以外の三人が飛び出した。


 それはあっという間だ。

 カインとミアナがそれぞれ巨大芋虫に攻撃を仕掛け、最後にルウが詠唱と共に氷の刃を飛ばし芋虫を倒してしまった。

 俺?

 俺は後ろの木の影からただ見ていただけだが?


「イエロークロウラーだな、気づかれる前で良かった」

「気づかれると何かあったんですか?」

「イエロークロウラーは獲物の襲撃前に周囲に巡らせた糸を引っ張って仲間を集めるからね、面倒なのよ」

「へぇ……」


 ミアナの隣でルウが目を細めながらこっちを見ている。


「やっぱり使えない」

「ルウ!」


 ミアナさんが窘めてくれるが実際役にたってないからなあ。


「すいません」


 一応謝っておこう。


「ふん」


 ルウはそのまま先を行くカインの方へ小走りで走って行ってしまった。


☆☆☆


 あれから暫く経つがルウはずっとカインやミアナの傍に来ても決して俺の方へ視線を向けない。

 がん無視である。

 まあ敵視されてるのは分かってるし暴言吐かれるよりは無視してくれて構わないんだけど。

 黙って歩いていると前を歩いていたミアナさんがすすす……と後ろに下がってきてくれた。

 この人何かと優しくしてくれる天使なんだけど、カイン曰く世話好きなだけらしいが気にかけてくれるだけでも今は嬉しい心境だ。


「ごめんね、ルウは臆病だから」


 これまでのあれを臆病って言って良いのか?


「そういえば三人はどうやって知り合ったんですか?」

「私とカインは同じ村出身でね、カインが冒険者になるっていうから私が勝手に付いて行ったの」

嬉しそうに話す感じは恋する乙女である。


 あれだな、彼女へちょっとだけ芽生えてた淡い恋心は捨てよう。


「へえ、同じ村なら幼馴染なんですね」

「腐れ縁だけどね、ただルウは違うのよ」

「というと?」

「ルウはね、一年位前にクエスト先でモンスターに襲われている所を助けたのがきっかけね。どうやら彼女記憶喪失みたいで」


 記憶喪失?


「あれ、ルウって名前は?」

「うーん、名前だけは憶えてたみたい、だけどそれ以外の今までどこで何をしていたのかとかはさっぱり忘れちゃっているみたいで……」

「そうなんですね」

「だからなのか一時的にパーティに人が入るとすぐ攻撃的になっちゃって……臆病でしょう?」


 あー……なんかわかってきた。

 臆病っていう意味が分かった。要するに記憶喪失である自分にとって唯一の居場所である二人の隣を部外者に奪われるのを怖がっているんだ、だから一時的にパーティ組んだ俺の事もある種追い出そうとしてるのか。


「なんとなく分かったような気がします」

「困った子よね」


 ミアナは笑うがそれを聞いたら確かに仕方ないような気もしないでも……いや、分かんねえ。


「まったく、私とカインとだってずっとパーティでいられないのに」

「え、そうなんですか?」

「実はあと何回かクエストが終わったら一度故郷の村に帰ろうと思ってたの」

「へえ、どうしてまた」

「カインの妹が結婚して子供が出来たみたいで、その子は私とも同じ年で仲良かったから挨拶に行きたくて、でもルウは記憶喪失でしょう? 私とカインがルウの知らない繋がりを持っているっていうのは……」

「疎外感……を与えちゃうからですか?」

「そう、そうなのよ。だから誰かがそのままルウとパーティを組んでくれたらなあって思ってね」


 ミアナさんは俺を見るが俺は蛇蝎の如くルウに嫌われているから無理だと思う。


「俺じゃ無理ですよ、嫌われてますし」

「そうかしら? 結構いい感じになると思うけどねえ」


 どの辺を見ての感想だろう。

 多分ルウを一人にしないように適当な事を言っているのだろう。


 ――なんて話をしていると少し前を歩いていたルウとカインがピタリと止まり、それぞれ走ってくる。

 そして――


「横に飛べ!」


 カインが叫んだと思った瞬間、俺はミアナさんに捕まれ、そしてルウはカインと共に横に飛ぶ。

 その直後、四人のいた場所一直線を大きな水の玉が飛んでいった。

 しゅうしゅうと煙のような水蒸気が地面から上がっている先。

 巨体がある。

 杖を持った大きな牛である。

 恐らくあれがバッファローメイジだろう。簡素だが魔導士のような服装をしている。


「やべえ、ありゃバッファローメイジだがそれだけじゃねえ」


 そうなのだ、隣に剣を持った同じく筋肉隆々な牛が立っているのだ。


「あれ、ミノタウロスですか?」

「いや、あれはミノタウロスに似ているがバッファローナイトって呼ばれる近接戦闘がべらぼーに強いモンスターだ、どちらか一体でもきついのに二体相手か……」


 言っている最中に横で詠唱が始まる。

 ルウが大きな氷の刃、しかも十本近くをバッファローメイジに飛ばす……が、バッファローナイトに全て弾かれてしまった。


「そんな……」


 ルウの喉から息が漏れる。


「くそ、ナイトの方を近接戦で対応出来なくすれば……ぐっ!」


 カインが盾を持ちバッファローナイトの足を止めようと前に出るが今度はバッファローメイジの火の玉を受けてこっちまで飛ばされてくる。

 ミアナはと言うと後ろで呆然と立っている。


 待って、これ詰んでね?

 全滅の二文字が脳裏をよぎる。


 ただでさえこの人らはA級冒険者なのだ、俺より遥かに強い冒険者なはずなのだが、

 彼らが勝てないなら俺でも勝てないだろう。

 だって俺、ただのコンクリート開拓士だし。

 冒険者ランクだってDだし……。

 ふとギルドカードを出してみるとカードが淡く光っている。


☆☆☆


ギルドカード

【名前】三浦冬馬

ジョブ コンクリート開拓士

ジョブレベル2

スキル コンクリート魔法

習得魔法 コンクリートウォール コンクリートキャノン

耐久力 562

魔力 9800

筋力 44

敏捷力 70

知力 82

運 3


☆☆☆


 あれ? なんか俺新しい魔法覚えてないか?

 コンクリートキャノン……キャノンか、多分コンクリートを飛ばすんだと思うけど、とはいえ剣と魔法とモンスターがいるこの世界じゃあまり強そうに見えないのだが。


「……くそ、ミアナ、ルウ、三浦も逃げろ。俺がこいつらの足を止めておく。その間に逃げるんだ」

「そんな……その火傷じゃ無茶よ、私が」

「ルウはまだちょっとだけ魔力が残ってる。次こそは……」

「無理だ、あいつらは強力なモンスターだ。俺らじゃ」


 どうしよう、やって良いのかな? どんな魔法か分からないけど……とりあえず掌を前に出して……


「くそ。妹の花嫁姿、見たかったぜ……ミアナにも……」


 丁度二体重なってるな、まあいいや。


「コンクリートキャノン」

「…………ッ!!」


 唱えた瞬間。

 掌の前で生成された拳大のコンクリートの塊が凄まじい速度で正面のバッファローメイジとバッファローナイトへと飛んでいき。


 そのまま二体の身体を突き抜けたと思った直後、それぞれが口から血を吐いて前のめりに倒れた。


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