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ライブラハートみくにゃん

 ライブラハートみくにゃん。

 この世界で知らない者は少ない四大神の一人である。

 筋肉を愛し、向井と共に人は筋肉をつけるべきだと声高に言っている俺からすれば相当やばい奴である。

 正直関わり合いになりたくない。

 王様に依頼されたしいちいち俺達に優しいバルトが張り切っているから着いてきたのだが。


「ここか」


 案内されたのは南東地区の大きな宿屋だが、その最上階の部屋全てを貸し切りにしているらしい。


「借りてるの一部屋じゃねえの?」

「全ての部屋を借りているみたいです。どうしてかは分かりませんが」


 この階だけでも十部屋はあるんだけど、どれノックすりゃいいんだよ。

 端から順々に……なんて思っていると部屋の扉が開いた。

 出てきたのは男だ。

 その姿は半裸で身体の至る所がうっ血している。

 男はふらふらと歩いてから壁に身体を預けながら倒れ込んだ。

 すかさず近づく。


「どうした?」


 声をかけると男は顔を上げる。

 その表情は真っ赤で汗をかいていて息切れすら起こしている。


「俺は……」

「うん」

「俺は既婚者だ」

「は?」


 いきなりどうでも良い事聞かされたな。


「俺は……俺は……」


 それだけ言い男は立ち上がり走っていく。


「なにこれ」

「……………」


 ユウハ様を見るがユウハ様は真顔のまま何も言わない。


「とりあえず行って見ますか?」

「あ、ああ」


 バルトに促され、俺は男が出てきた部屋をノックする。

 どうぞというので中に入った。

 中はなかなか上等な宿の一室だ。

 だが問題はベッドの上にある。

 褐色肌の綺麗な女性だ。胸は大きく先がつんと真っすぐよりやや上を向いている。

 髪は黒に赤いメッシュが入っていてその表情は妖艶でエロイむっちゃエロイ。

 そんな女性が一糸まとわぬ姿のまま寝そべりながら顔だけこっちを向けている。

 思わず俺は後ろを向く。

 どうぞって言ったじゃん! 人が来るんだぞ? 何で裸でお出迎えしてんのこいつ。これが客人に対するおもてなしなの? くそ、グッジョブ!

 内心喜んだのだが、ハッと横を見ればユウハ様が俺を虫を見るような目で見ていた。

 い、いかん。ここは嘘でも慌てなければ。


「ふ、服着ろ!」


 後ろ手に叫ぶと女性はんん? と甘い声で唸った後、童貞か……可愛いな。

 ――ぼそりと呟いて響く衣擦れの音。

 最初からそうしてくれないかな。


「良いぞ」


 言われて振り向く。

 上下薄い生地の服で服着てるのか着てないのか分からん。

 いやま、部分部分が一応隠れてはいるんだけどね、服の長さ合ってなくないですか?


「それで、なんの用だ?」


 足を組みなおすと太ももが丸見えでなんていうか気を抜いたら目がそっちを向いてしまう。

 我慢だ、今は我慢だ。


「夜な夜な出歩いては男を襲っているって聞いたんですけど事実ですか?」

「いかにも」


 認めるんだ。


「じゃあそれを止めてもらっても? というのも王様から言われまして」

「断る!」

「ええ」

「そもそもだ、何が悪い?」

「それは……」


 あれ。


「なあバルト、そういえば何で悪いんだこれ」

「被害者は既婚者が多いんです、だから離婚問題になったりとか」

「へえ」


 それはいけないな。


「既婚者に被害者が多いらしくてそれが問題というか」


 言うとライブラハートみくにゃんはため息をついてから立ち上がる。

 たゆんと胸が揺れた。


「いいか、よく聞け。私は人間が好きだ。神として愛を持って接している。それ以上に私はセックスが好きだ。快感という愛を感じられるからだ。更に、私とした者はやっている間はずっと幸せそうだ。それの何が悪い? もし問題があるとするならばそれは後で考えれば良い事だ。ヤってから考える。というかヤった後の事なんか知らん。欲望に忠実に、それが私にとって唯一無二の行動指針だ!」

「なっ!」


 こ、こいつ……本当に神かよ。

 欲望に忠実とか俗物過ぎないか?


「神様が言うならば正しいのかも」


 バルトが真剣な顔でごくりと唾を飲む。

 いやいや、それっぽい事言ってるだけでこいつ相当自分勝手な事言ってるぞ。


「正しいって本気で言ってる?」

「すみません、四大神様が言うならば絶対かと……」


 お前神に弱すぎない?

 駄目だ、バルトじゃ話にならん。ユウハ様ならガツンと正論を言ってくれるはず。

 そう思っていた時期が俺にもありました。


「セッ……セッ……」


 ユウハ様は両手で顔を隠してしゃがみ込んでいる。耳まで真っ赤で。

 あ、駄目だ。こっちも使い物にならなそう。


「それより……」


 不意に手を引かれてベッドに倒れ込む。

 そこからは早かった。

 あっという間に俺は下に敷かれ両手足を抑えられマウントを取られてしまう。


「な! ちょっ!」

「先日食い損ねた雄じゃないか。ふふ……ありがたく頂こう」


 ああ! またこれだ! 俺食べられちゃう。抵抗しなきゃー……。


「おいやめろ!」


 ユウハ様の声、止めに入ろうとしたが俺の上半身があらわになるとユウハ様は顔を真っ赤にして目を逸らす。

 いやいや、そこは止めた方が良いと思うよ。

 バルトに至っては僕に力があれば……とか言いながら床にへばりついている。

 こいつ神の前だと本当に使えないな。

 ーーとそうこうしている間にみるみるうちにはぎとられていく俺の衣服。まさに早業である。

 そして遂に下着に手が言った瞬間。


「待ちたまえ!」


 突然開く扉。

 部屋に響くイケボ。

 ライブラハートみくにゃんの身体の脇から見えたその姿は見覚えのある半裸にマフラー姿の。


「待たせたね、三浦。助けに来たよ」


 俺をこの状況に陥らせた元凶コンスタドール向井が立っていた。

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