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王宮からの招待状

「おい、大丈夫か? 無理するなよ」

「大丈夫だよ、なんとなく身体も問題無いし」


 俺は起き上がり身体を動かす。

 簡単な体操をするが取り立てて異常はない。

 隣でユウハ様が心底心配そうな顔をしている位のものだ。


「何でユウハ様がそんな顔してんだよ」

「だって、お前私を庇って……」

「俺が勝手にやった事だよ。結局死ななかったし良かったじゃん。それよりあれはどうなったんだ? あの死神みたいなやつ」

「ああ、あれは……」

「我が確保した」


 突然開いた扉、そこには不死の王、チェリッシュ・ガイラルが立っていた。


「あ、お前! 手伝うとか言いながらどっか行きやがって、ずっとどこ行ってたんだよ!」

「ふむ、起きたばかりなのに元気だな。それと一つ貴様は知らないだろう貴様の支援者に知恵を与えたのは我だ」

「支援者?」


 そんな奴覚えがない。


「誰だよ」

「頭のおかしい兄妹だ」

「あ……」


 その言葉で壇上での会話を思い出す。


「そうか、あの筋肉連の奴らに入れ知恵したのはお前か」

「いかにも、理解させるのに苦労したがな」


 思い出したのかガイラルはちょっとだけ憂鬱な表情を浮かべている。

 分かるよ、あいつら悪い奴じゃないが思考が下衆な上に言葉が通じるのに通じないからな。


「じゃあ俺はお前に借りを作ってしまったのか? 出来る限りの事ならするぞ」


 しかし、こいつに借りを作ると配下になれとか面倒なことになりそうなんだよなあ。

 そう言うとガイラルは、フッと笑う。


「そんなものは要らん、むしろ我は貴様に借りが出来た」

「え、逆に? 何で?」

「貴様が相手した者は我が部下だ」

「へ、へえ……」

「我は部下が勝手に召喚され契約の下使役されているのを知り、どいつがそれをやっているのかを旅をしながら調べていたのだ」

「あー……」


 そういえば宿で生徒達の話を聞いた時雰囲気変わってたよな。


「あの人間が使役していたのは成熟してはいないが死神だ。あれを使って様々な悪事を行っていたのだろう。分を弁えない愚か者め」


 デルコイか。

 ん?


「それでデルコイはどうなったんだ?」

「罰を与えた」

「罰?」

「我を怒らせたのだ、しょうがあるまい」

「……どういう事?」


 隣のユウハ様を見るとユウハ様はしかめっ面を浮かべているだけで何も言わない。

 んー……これは聞かない方が良さそうなのか?


「ただ一つ疑問が残る」

「疑問?」

「あの者に誰が古文書を渡したのかって事だ。あの者単体で死神は召喚出来ん。古文書……いや、高等な召喚陣が書かれた書物を誰かがあの者に渡したはずだ。悪意を感じる」


 悪意ねえ……あ。


「龍王って奴は? 人間嫌いなんだろう?」

「それは無い、あいつは搦手が嫌いだし、やるなら正面から行く奴だ。唐突にワイバーンを都市に送り込んだりな」

「そういえばそんな事あったな。ワイバーンを街にけしかける位なら街道に滞在させて物流とかをストップさせた方が効率的な気がする」

「ともかく、貴様も気を付けろ。危険とは常に貴様と共にあるものだ」


 お、何かかっこいい言い回しな気がする。


「何言ってるか分からないな」


 後ろでボソッとユウハ様が呟く。

 まあ、簡単に言えば気を付けろよって心配してくれてるんだろう。

 多分。


「では我はここで離れよう、貴様を部下にしようと思ったが借りを作ってしまっては断念するより他はない」

「え、マジで?」


 諦めてくれるの? 助かる。


「うむ、暫く旅をしてから領地に戻る予定だ。もし近くを通る機会があれば歓迎しよう。宴の一つ位は用意してやる」


 ガイラルはニヒルに笑うがそれはちょっと遠慮したいかもしれない。

 骸骨の盃とか出てきたり部下の死霊が腐った肉とか用意しそうだし。

 そうなったら反応に困って口も付けずに苦笑いしか出来ないかもしれない。


「また会おう三浦、そしてミニミ族の娘よ」


 颯爽とガイラルは歩いて行く。

 魔王って言われているが割とまともな奴だった、話も通じるし。

 あれ、魔王ってもしかして神様よりまともだったりするのかな。それともあいつだけ?

 まあいいや、ともかく目的は達成した。


「これからどうしようか?」


 振り返りユウハ様に聞く。


「んん? 私達も少し休憩したら旅に出る……でいいんじゃないか? この街の案内もろくに出来てないしな。良い穴場などを教えてやろう」

「お、良いな。じゃあそうしようか」


 そんな話をしながら学校を出ると。


「んー、流石は僕や先輩が見込んだ君だ。見事……と言っても良いだろう。僕の慧眼が光ったね」


 校門前、ポーズを決めた変態……もといコンスタドール向井が立っていた。


☆☆☆


 目を細めながら警戒の視線を送ると向井は、恥じらうような仕草で短パンを少し上に上げる。

 いや、そんなところ凝視してねえし。反応が普通に気持ち悪いからやめろ。


「何でお前がここに?」

「やあ、久しぶりだね。君と同じく僕も会えて嬉しいよ」

「別に俺は嬉しくないけど」

「実はね、川崎先輩から君がここにいるって聞いて急いで駆け付けたんだ。僕の依頼も完遂してくれたようで……んん! エクセレント! 特別に僕の美しい上腕二頭筋を見せちゃう!」


 相変わらず人の話を聞かない奴である。

 隣を見ればユウハ様が凄い顔してる。完全に引いてるし、ついでに俺への視線もやばい。

 お前こいつと知り合いなのかって目だ。

 風評被害も甚だしい。


「ユウハ様、紹介するけどこいつも一応神様だよ。コンスタドール向井っていう」

「ふふ……向井で良いって言ったじゃないか。君は特別に」

「へえ、神様……三浦は仲が良いんだな」


 よくねーよ。


「……で、何しに来たんだよ」

「実は僕ね、最近まで王都にいてね、君の素晴らしさを宣伝してきたんだよ。君こそが英雄だとね」

「は? 何言ってんのお前」

「そしたらこれさ」


 向井は一通の手紙を渡してくる。

 嫌な予感しかしないんだけど。


「なにこれ」

「僕から君へのプレゼントさ、愛……と変換しても良いけど君は不細工だからね、やっぱりプレゼントって事にしてくれたまえ」


 ウインクをかましてくる向井。

 殴りてえ、神様じゃなかったらこいつにコンクリートぶっ放してえ。


「なんて書いてるんだ?」


 ユウハ様が興味津々で聞いてくる。


 手紙は王宮からの招待状だった。

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