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依頼完了報告

「ああ……ユウハ様、行ってしまわれるのですね」

「我々もお供しましょうか?」

「いや、大丈夫だ。村の人達は私の教えを守り信仰心を失わないようにな」

「「はは! 貧乳を愛せ! 筋肉は敵! ムチプリは死罪にしろ!」」


 現在パデキアの村の入り口で村人達によって盛大な見送りをされている。


「お前残らなくていいの? すげえ人気じゃん」

「……殺すよ?」


 ユウハ様は凄むが大して怖くない。

 どうせちょっと反撃したら泣くし。


☆☆☆


 ともかく俺とユウハ様は村を後にしてフューゲルへと向かっている。

 ユウハ様は学術都市に帰りたいらしいから、これからフューゲル経由で学術都市まで連れていく予定だ。


「まさか本当に倒してるなんてな、お前見かけによらず強いんだな」

「強くはないよ、相手が弱かったんだ」

「んな事は無い、奴らは強いよ、私じゃかなわない位にな」

「それユウハ様が弱いんじゃね?」

「…………」

「…………」


 ユウハ様の足がピタリと止まる。


「やるか?」


【コンクリートドライブ】


 前から覚えていたコンクリート魔法である。

 コンクリートの塊を自由に動かせる魔法だ。これにより前方に凄い速度で飛ばすだけのキャノンと差別化出来る様になった。

 そして今、俺とユウハ様の間にコンクリートの塊を浮かせている。


「ユウハ様がそれを望みなら」


 言うとユウハ様は顔を青くしながら身を引く。


「じょ、冗談、冗談に決まってるじゃない。弟子に本気になるわけないでしょう? は、は、は……」


 ユウハ様はわざとらしく笑いながら歩きだした。

 ちなみに弟子というのは俺の事だ。

 何でも特別に俺をユウハ様の弟子にしてやると言い放ったのだ。

 断るたびに聞こえなかった振り、泣き出す、逆切れする、泣き出す、縋りつく、ふてくされる、泣き出すのコンボを決めてきたため俺が折れた形だ。

 弟子に泣き落としをする師匠なんて古今東西見た事が無いが、これもレアキャラの一種なのだろうか。

 世界は広いぜ。


 それにしても……。

 俺はユウハ様を見る。

 彼女が獣人のせいなのか分からないが、服装が非常に際どい。

 黒のドレス調なのだが、やけに丈が短く、しなやかな太ももが半分くらい見えていてついつい目で追ってしまう。

 ちらちら見ているとユウハ様がこちらを見た。


「おい弟子よ」

「なんだよ」

「お前は私を不細工と呼ばないのか?」


 何言ってんだこいつ。


「何で呼ぶ必要があるんだよ」

「そりゃあ……それに私は獣人だぞ? ミニミ族だぞ? 何も思わないのか?」

「思わない」


 そもそも不細工って言葉は俺も言われていたし、ミニミ族は獣人の種族の一つなんだろうが俺には関係ない、だって俺からすれば兎耳付けた美少女にしか見えないからな。


「なんだよ」


 ユウハ様が俺の事をじっと見つめてくる。

 あんまり断言しすぎて嘘っぽく聞こえたのだろうか。


「嘘じゃねえよ、そんなことで嘘なんか言わないから信じろよ」


 ちょっとイラっとしつつ先を歩く。

 すると暫くして小さな足音が追いかけてきた。

 しばし無言で歩いていると後ろから息遣いが聞こえてくる。


「なあ」

「ん?」

「お前、もしかして良い奴?」

「違う、良い奴なんかじゃない。そもそもその質問はずるいと思うぞ、その質問で良い奴って答えると自分で良い奴って言う奴に良い奴はいないし、違うって答えれば良い奴じゃないとなる。結局その質問では良い奴以外にしかならない……と思う」


 実は俺この質問が一番嫌いなのだ。

 言うだけ言ってまた歩き出すと後ろから笑い声が聞こえる。


「ふふ、なんだお前。もしかして私よりめんどくさい性格なんじゃないか?」

「……んな事はねえよ」

「ふふ」

「なんだよ」

「別に」


☆☆☆


 フューゲルの街に着いた。

 早速ギルドに行き受付に向かう。


「いらっしゃ……おお、コンクリ士の坊主じゃねえか」

「略すんじゃねえ……略さないでください」

「悪かったな、それで依頼結果は?」

「完了だ、一応解決もしてきた」

「そりゃご苦労さん、それじゃ報奨金だな」


 小袋を渡された。中を見れば金貨が数枚入っていて首を傾げてしまう。


「あれ、D級用の依頼だったんだろ? その割に金良いじゃん」

「D級の割には……な。普通は名指しで指名の依頼は百単位の金が付くんだ。それに比べたら十分少ないってもんだ」

「ふーん、そうなのか。ところで依頼者の向井さんは?」

「どっか行ったぞ、神様は一か所にずっとはいないからな」

「人に行かせたんだから結果分かるまで待っとけよ」


 無駄にフットワークの軽い奴だ。


「ところで……」


 ギルドマスターのおっさんが声を潜める。


「あの獣人は? ミニミ族だろ? お前奴隷でも連れるようになったのか?」

「奴隷?」


 後ろを見るとユウハ様は離れた所で色んな冒険者を見ているようだ。聞こえてはいないようだ。


「ミニミ族ってのは獣人の中でも少数民族だが見目は美しくそれでいて頭脳も戦闘能力も適性が低い奴が多いからな、結構奴隷になったりするんだ」

「でもこいつ頭良いらしいですけどね、これから学術都市まで連れていくところだし」

「学術都市、キーンまでか。お前そのまま学校にでも入ればいいんじゃないか? お前物知らないし何かしら学んでも良いと思うぞ」

「学校か、うん、正直悪くないかも」

「学費高いけどな」

「いくらですか?」

「一年あたり金貨千枚単位だな」

「ええ……」


 無理じゃん、俺の手持ちじゃ十倍しても足りない。


「まあ、連れて行くだけなんだろ? 良いじゃねえか、観光だけでも楽しんで来い」

「はぁ……行ってきます」


 ぬか喜びだったわ。


「元気ないな、何かあったのか?」

「いや、何でもない。食料とか買う物を買って早く行こうか」

「あ、うん」


 こうして俺はユウハ様と学術都市キーンへ旅立った。

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