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パデキアの村

「やだなぁ……」

「まあ、良いじゃねえか。俺らも付き合うからすぐに終わらせようぜ」


 ギルドマスターとの話も終わり外に出ようとしたところでちょっと待てと呼び止められた。


「カイン、お前たちのパーティはこの依頼に行くな」

「何でだよ」

「依頼者は神だがこれはあくまでもギルドの、D級冒険者への依頼だからな、もしお前らAランク冒険者が一緒に行ったらこいつが活躍したとしても評価されない」


 なるほど、不正をしないようにって事か。

 確かにこれがまかり通ったら実力のないD級冒険者でもA級冒険者と依頼に行ってれば何もしなくてもランクがあげられるからな。

 とは言っても俺はすでにマキシマム川崎や向井……は何をくれたのか知らないが祝福を受けているから不正も何も今更感があるけど仕方ない。


「良いな?」

「……分かったよ」


 酒場に戻り待っていたルウとミアナに事情を説明した。


「すいません、そういうわけで今回は一人で行くことになりそうです」

「それならしょうがないわね」

「ああ、俺らは故郷に一度戻るからここでお別れだな」

「……仕方ないね」


 酒場から出て、カインと握手する。


「短い間でしたがありがとうございます」

「こちらこそだよ、またな」


 続いてミアナと。


「ありがとうございました」

「元気でね」


 最後にルウと。ちょっとしてくれないんじゃないかと思ったが普通に握手してくれた。


「ありがとうございました」

「またね」


 皆が見えなくなるまで手を振った。

 短い間だったが楽しかった。

 また機会があれば三人とクエストを受けたいと思った。


☆☆☆


 パデキア。


 行く前に街で聞いた話だと特別何もない静かな村という話だ。

 森や川が近くにあり、魔物も定期的に駆除されているため危険は少ない。

 住民は皆温和でよそ者にも優しい。

 そう聞いていたのだが。


「話が違う」


 まずパデキアへ向かう為の森にはわんさかとモンスターがいた。

 しかも自分より遥かにでかい虫とか屈強そうな熊とか。

 まあ、どれもコンクリートキャノンで一発だったわけだが。

 それにしても俺の使っているコンクリートだが、日本の物より硬いような気がするのは気のせいだろうか?

 ともかく、モンスターを倒しそれなりにレベルを上げながら村まで来た。

 俺のイメージでは日本で言う地方の更に田舎の簡素な村って感じだったのだが。


「貧乳! 貧乳!」

「ムチプリを許すな! 貧相を愛せ!」

「ロリこそ至上! ユウハ様万歳!」


 村に入った途端、目の前を変な集団が変な事を言いながら歩いて行った。

 本当にここはパデキアなんだろうか?

 とりあえず近くの店に入ってくる途中に倒したモンスターの素材を売る事にした。

 モンスターごとにどの素材が良いのか分からないから適当に持ってきたのだ。

 結果としては熊の爪の一部と虫の羽の一部が高く売れて手持ちは銀貨16枚だ。

 とりあえず当座のお金も出来たしいい加減腹も減ったので食べ物屋を探すことにした。


 適当に食べ物っぽい看板のかかっていた店に入る。

 店はフューゲルの街の酒場に比べて狭かったが掃除は行き届いている。

 しかし客はいない。お品書きの料理の種類も少ない。

 とりあえずお勧めと書かれた食べ物を注文してとりあえず食休みにする。

 

 うん、量は思ったより少なかったけど一応満足した。

 最後にお茶を注文して飲む、味が薄かった。

 後ろを見ると細く大人しそうな店員さんが暇そうに立っていたから話しかけてみる。


「すいません」

「はい、ご注文でしょうか?」

「いえ、そうじゃなくてちょっと聞きたいんですけど」


 店員さんはじろじろと俺を見てから微笑んだ。


「あなたは素敵な方ですね、はい喜んで」

「……どうも」


 この感じ覚えがある、多分馬鹿にされた気がする。

 まあ、とりあえず聞きたい事を聞こう。


「この村で宗教が流行ってるって聞いたんですけど」


 邪教徒がいるって聞いたんだけどって言ったらなんとなくやばそうだから一応マイルドに聞いたのだが、正解だったようだ。


「宗教ですか? よく分からないですが私達の価値観を変えてくれた素晴らしい方はいますよ」

「そうなんですか?」

「はい、この村はあまり裕福ではなく食べ物を多く取れない為、四大神の方が来た際に言われたかっこいい人間はいなかったんです。だから私達は神の加護を受けられないと嘆いていました。しかし、別の四大神の従者の方が私達の価値観を変えてくれたんです。貧乳こそ正義、貧相こそ正義。筋肉は悪だと、ユウハ様は素晴らしいお方です。はぅぅ……ユウハ様」

「は、はぁ……」


 店員さんがあまりにも鼻息荒く熱心に言い続けるから思わず引いてしまった。

 だが、この村に来て早々変な奴らがいた理由が分かった気がする。


「ちなみにその素晴らしい方はどこへ行けば会えますか?」

「そうですねえ、きっと村の広場の方にいますよ、ここを出てずっと左です」


 店を出て言われた通りに左へと向かっていくとざわついた声が聞こえてきた。

 近づくとそれは合唱の様であり、もし学校の合唱部に見学に行ってこんな感じだったら俺は速攻で逃げているだろう。

 それ程の熱量のある絶叫が聞こえてきた。

 一人の声がする。


「貧乳を愛せ!」


 続けて多数の野太い声が聞こえる。


「「貧乳を愛せ!」」

「貧相こそ正義」

「「貧相こそ正義!」」

「華奢なロリこそ至上なり」

「「華奢なロリこそ至上なり!」」


 村の住人皆いるんじゃないかと思う程、広場の賑わいは盛況であり、その中で中央の高台にいる人物はメガホンのような物を持って堂々と立っている。

 その姿は頭には兎耳が生えていて、手足は細長く背丈はどう見ても小さい。

 身体自体が細く小さく胸も大きくない、黒髪でそれでいて顔は遠目で見る限りでは可愛い。


「私を信じろ! 私は神の代行者である! 私は断言する、細い貴方達は素敵であると!」


 聞いたことのない打楽器の音が鳴り響く。


「「ユウハ様!、ユウハ様!」」

「…………」


 せっかくの依頼だけど一応調査も済んだし帰ろうかな。

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