襲撃と迎撃~2
温い戦闘ありです
竜使いには2つの戦闘方法がある。1つはお馴染みの竜を使役しタッグ形式で戦闘を行う方法と2つ目は竜を使わず己が力で戦う"戦闘解除"がある。何らかの理由で竜が使えない場合のみ"戦闘解除"が可能でどちらかが戦闘不能(気絶)するまで戦わなければならない
魔導書を片手に凪はウキウキとしている紅月に尋ねた
「で、どっちの相手をするんだ?紅月」
「そうだな···久しぶりにクリストと戦ってみたいな」
「そうか。なら俺はアーリアの相手をしよう」
ニッと互いに笑い合いそれぞれの相手となる者の前に立つ。そして一陣の風が吹いたと同時にお互いの言葉が木霊する
「"白き風天津の槍となり貫け"」
「そうはさせない"春麗六花盾となり守れ"」
紺碧の髪色を三つ編みにし眼鏡を掛けた青年クリストの周りを風が包み込む。その背後、巨大な白い槍が無数に現れ言葉と共に紅月へと放たれる。だがそれは紅月に当たることはなく紅月の目の前色とりどりの花が絡み合い全ての槍を受け止めていた
「流石紅月くんの防御魔法ですね。貫通しきれませんでした」
「そう言うクリスト君こそ攻撃魔法強くなったよね」
「日々鍛錬を怠っていませんでしたので···"白き牙全てを噛み砕け"」
クリストがそう言うと今度は巨大な白い虎が現れ牙を向き紅月へと襲い掛かる。迫り来る虎の牙を軽やかに避け紅月は足元に風を纏わせ言葉を紡ぐ
「そう。けどそれは俺もだよ"疾風"からの”焔波蹴撃”」
「くっ!」
一瞬にしてクリストの目の前に移動した紅月は炎を纏わせた蹴りを放つ。咄嗟に後ろへと上体を引きクリストは紅月の蹴りを避け1歩後ろへと下がった
「確かに衰えては無さそうですね」
「だろ?けどさクリスト···一つ忘れてないか?」
「何をです?」
「養成所で話しただろ?俺の隠された眼の能力」
「!」
紅月の言葉にクリストは自分の身体の変化に気付く。どんなに身体を動かそうとしてもまるで麻酔を打たれたかのように動かないのだ
「まさか...」
「まぁ今更気付いた所でどうにもならないけど。さてと···いくら操られていても俺ん家壊すなよ!!バカクリスト!!!」
「グハッ!」
紅月渾身の一撃がクリストの腹部に見事に入り呻き声を上げクリストは地面へと倒れ込む。ピクリとも反応を示さないクリストにちょっとやり過ぎたかな??と紅月は思ったものの此方は家を壊されたのだ。多少は許して欲しい
「よし終わり。凪の方は大丈夫かな?」
回復魔法をクリストに施しつつ凪の方を見遣れば涼し気な表情をしアーリアの魔法を尽く論破していく凪の姿があった
「流石凪だなぁ···」
紅月とクリストが戦闘を始めたのを見届けた凪は手にしていた魔導書を閉じ暗い目をしたアーリアに向き直る
「ふむ。紅月も始めたようだし俺達も始めようか?アーリア」
「凪···倒す····”蒼紺の波全てを飲み込め”!!」
「打ち消せ”豊穣の盾”」
アーリアの周りを巨大な渦潮が囲みやがては1つとなって凪へと放たれたが、それは凪に届く事無く地面から現れた女神と巨大な盾により渦潮は呆気なく消え去った。それを見たアーリアは『チッ!』と舌打ちをし新たに言葉を唱える
「コレならどうだ!!”深緑の王茨の鞭となり引き裂け”」
「”紅き巨人の炎よ茨を焼き尽くせ”」
地面を突き破り四方八方から茨が姿を見せ凪へと襲いかかる。凪はその光景に「ほぅ···」と関心を示すも笑みを浮かべ手を前に翳すと炎にて茨を全て焼き払った。
「威力は上がってはいるもののまだ使いこなせてないようだなアーリア」
「うるさい!!アレからボクは強くなった!紅月よりも凪よりも強く!!コレが証拠だよ凪っ!!」
ニヤリと笑いアーリアは上空へと手を伸ばす。するとアーリアの頭上に巨大な黒い雲が現れ徐々にその姿を変えて行く。やがてそれは巨大な黒い剣へと変わり禍々しいオーラを放つ
「終わりだよ凪”漆黒の剣あらゆる命を虚無へと還せ”」
勢い良く振り下ろされた黒い剣は凪を完璧に捉え凄まじい轟音と共に地面を斬り裂いた
「あはっ!やった!!凪を倒した!!次は紅月を倒したらボクが一番最強だぁ!」
砂埃が舞う中アーリアの声だけが響く。興奮冷めぬ内にとアーリアが凪から紅月へ標的を変えようとした瞬間顔面スレスレに矢が落ちる
「え、?」
「ふむ、先程の攻撃には驚かされたぞ。やれば出来るじゃないかアーリア」
「なん、どうして····生きて·····」
「しかしまだまだ詰めが甘いなアーリア。直ぐ調子に乗るのがお前の悪い癖だ」
「っ!?」
一つまた一つ。アーリアを取り囲むように光を纏った矢が落ちていきやがてソレは一つの柱へと変わる
「だが悪くない攻撃だった。褒美に少しだけ俺の本気を見せてやろうアーリア」
”天乃御剣の槍”
「うわあああああああ!!」
数多の光の矢がアーリアを襲いそして光が収まる頃には地面に伏せるアーリアの姿があった。気を失い動かないアーリアを横抱きにし凪は紅月の元へと歩み寄りクリストの隣へとアーリアを寝かせ座り込む
「一応任務達成かな?俺達は」
「みたいだな。後はフーラ達だけだが」
チラッと上空を見上げる凪に釣られるよう紅月も空を見つめる。そこには激しくぶつかり合う4匹の姿があった
「大丈夫かな?フェル達」
「恐らく大丈夫だろう。試しに応援してみればいい意外と早く決着が着くかも知れないぞ?」
「応援か...試してみる価値は有りそうだ!!よし...」
そう言って紅月は大きく息を吸い込むと力いっぱい叫んだ
「フェル──!!負けたら許さないからな!!それとフーラ──!勝ったら凪がキスしてくれるって!!」
「はっ!?」
紅月の声が届いたのか数秒経たずにフェルとフーラが地上に降りて来た。その手には気絶しているターナとリリアの姿があった
「紅月お前の応援には不思議な力があるのだな!!」
「凪!私、勝ちましたよ!!リリアに!!」
まるで褒めてと言わんばかりかキラキラと目を輝かせ報告する2人に紅月と凪は思わず口元を抑え身悶えた
「相変わらず可愛いなフーラ...」
「コレがギャップ萌えってやつなのかな...フェルが可愛すぎて辛い」
「紅月??」
「凪???」
こてんと同じ方向に首を傾げながら身悶える2人の名を呼ぶフェルとフーラ。一体彼らに何が起きたのだろうか??
「だから仕草!!」
「っ~~!」
そんなやり取りを交わしていると気絶していた4人が目を覚ます
「ん、アレ?ここは何処だ??」
「私達は一体...」
「頭が痛いにゃ」
「頭だけじゃないわよ...全体的に痛いっーの」
一体全体何が起きたのか分かっていない4人に紅月達が声を掛けた
「目が覚めたみたいだね皆」
「!?この声紅月!!」
「やぁ久しぶり」
「俺も居るぞ」
「何で紅月くんと凪がいるのよ?!」
「私達は確か"ユナイト"に居た筈なのだが!!」
「全く記憶がねぇ...」
「一体何が起こっとんじゃよ...」
「それについては今から説明するよ」
混乱する4人に紅月達はフェルから聞いた話を全てありのまま説明する事にした
戦闘シーンは苦手だったりする!!