襲撃と迎撃~1
仕事で2日空いての投稿·····
「操り人形····」
「そんな事って·····」
「それだけでは無い。”暗黒星”は”狂王”の欠片云わば分身体の様なもの。そのまま放置すればやがて”狂王”の思念に飲まれいずれお前達が”狂王の使い”と呼んでいる黒き竜となり輪廻永劫”狂王”の傀儡として成り果てるのだ」
「なっ!?」
「ちょっと待て!!その話が事実なら俺達が今まで戦い倒してきたあの黒き竜は····」
「お前達と同じかつては竜使いだった者たちとそのパートナー竜だ」
フェルから語られる衝撃の事実に3人は上手く言葉を発する事が出来ない。つまりなんだ?俺達は同士である竜使いを、その命を手にかけて来たと言う訳か···唖然とする紅月達にフェルは一息付きながら話を続ける
「お前達が何を思い詰めているかは知らないが狂王の傀儡に成り果ててしまったら”暗黒星”事倒す以外に彼等を救う手立てはない。そうしなければ彼等は永遠に狂王の糧として生きねばならないのだからな」
「糧··?」
「そうだ。狂王の使いに成り下がった時点で彼等は狂王の供物となる。魂を闇に喰われ意識があるまま人を殺しその際発生する絶望や悲しみ嘆き恨み怒り憎しみ等の負の感情を核たる”暗黒星”に取込み程よく熟した所で”暗黒星”を取り出され魂が入ったままの状態で狂王に捧げられるのだ」
そうなれば彼等に救いなど無い。取り込まれた魂は永遠に狂王の糧となり続けるしかない。あの子の様に─····
「あの子って?」
「む?あぁ···それはだな」
ドオォオン──·····!
フェルの声とほぼ同時に響く爆発音に紅月達は慌てて外を見る。そこに広がるのは爆発に寄って破壊された壁や石柱などの瓦礫が積み重なり庭先の菜園は炎に包まれていて火の粉が舞っていた
「一体誰がこんな事を··─!」
「っ!!アレは!!」
「なっ!!」
凪の視線の先に居たのは同級生でありながら親友でもあるクリストとアーリアの2人とその竜。狼狽える紅月達を他所に2人と2匹は淀んだ瞳で真っ直ぐ紅月達を見据え再び攻撃体勢に入った
「一体2人がどうしてっ!!」
「今は議論している暇などない!!フーラ!!」
「え、えぇ!凪捕まって!!」
「フーラっ!」
「フェル!?」
フェルの掛け声と共に擬態を解くとフーラは凪をフェルは紅月を抱え空へと舞い上がる。その次の瞬間紅月達が居た場所が跡形もなく吹き飛んだ
「俺の店兼マイホームがっ!!」
「木っ端微塵になっちゃったわね」
「アレはターナの”アクアボム”とリリアの”ウィングフレア”か」
「ふむ。相手は水と風属性か。だが俺の敵では無いな!!」
それぞれが思い思いに叫んでいると高らかに咆哮を轟かせ白銀の竜と薄水色の竜が4人に向かって突進してくる。それを見たフェルはグルルッと唸ると尻尾で2匹の竜を薙ぎ払った
「フェル?!」
「大丈夫だ紅月。ちゃんと加減はしている」
「あの、フェル。やっぱりクリストとアーリア達は·····」
凪を背中に乗せたフーラが不安そうに瞳で訴えてくる
「奴等は"暗黒星"に操られているな」
「そんな···」
「どうにかしてクリスト達を正気に戻せないの?」
「多少荒療治にはなるが···」
吐き出されるブレスを同じようにブレスで相殺しながらフェルは続けた
「拳で止めろ」
つまり力いっぱいぶん殴って止めろ!!とフェルは言っているのだ。なんというかフェルらしくて紅月達はただただ苦笑いを浮かばせる事しか出来ない
「随分物理的な解決方法だねフェル」
「あぁ···」
「なんて言うかクリスト達ご愁傷様としか言えないわね」
「仕方あるまい。それしか解決策がないからなっ!!フーラ!俺に続け!!」
「分かったわ!!」
噛み付こうとするターナを力任せに拳で殴り付けるとフェルは威嚇と言う名の咆哮を放つ。その覇気に動きを止めた2匹の竜を掻い潜りフェルとフーラは紅月と凪をクリスト達の前に降ろす
「紅月下はお前達に任せた。あの2匹の竜使いは俺とフーラが相手になろう」
「任せてフェル。あの二人は俺達が止めるよ!」
「紅月のフォローは任せろ。フーラ、フェルのサポートしっかりな?」
「凪の頼みなら完璧にこなしてみせるわ!!」
ニッと互いに微笑み合うとフーラを連れ立ち空へ戻るフェルを見送り紅月と凪はクリストとアーリアに向き直る。そう言えば随分と久しぶりにペアを組んだな·····
「そう言えば凪とコンビ組むなんて何時ぶりかな?」
「5年と4ヶ月だ紅月」
「もうそんなになるんだ。それじゃあ久々に····」
「始めよう」
『"戦闘解除"』
竜使い同士による戦闘が今切って落とされた──·····
新たな出会いと竜が増えました