真実と発覚
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「知らないも何も竜は人に生み出された存在で契約者が死ぬと同じく竜も死に2度と生き返る事はないってのがこの世界の伝承として伝わっているんだ」
「あぁ。だから俺達、竜使いはパートナーである竜を敬い崇め奉る心を忘れず竜に全てを捧げる事を誓い契約を結んでいる」
「うんうん」
そんな事がある筈ない。竜が生き返るだなんて···と首を振る3人にフェルは俯き切れ長の目を更に細め『やはりな』と小さく呟いた。そして再び3人に視線を戻すと語り始めた
「その伝承は全て偽りの伝承だ。そもそも俺達は人から生み出される事など有り得ぬ事だ。本来竜族は数多の生命の元となる”魔素”が水、火、風、大地、光、闇、空や海、植物など様々なものに宿り誕生した一種の生命体なのだ。故に肉体が滅びようとも”魔素”さえあれば何度でも蘇る事が出来る。お前達が教えられたという伝承とやらは全て都合のいいように書き換えられた偽りの歴史なのだ」
迷い無く言い切ったフェルに凪と紅月はお互いに顔を見合わせた。明らかに自分達が聞かされた伝承とフェルが語る伝承とでは意味も内容も全て違いすぎる...そもそもだ、"半竜体"の説明時から自分達とフェルとで食い違っていたのだから
「だとしたら一体····?」
「誰が何の為に歴史を書き換えたんだ?」
「心当たりならあるぞ」
「え!?」
「それは一体誰だい?」
しれっと言い切るフェルに2人はすぐ様反応する。凪の隣に居るフーラも興味ありそうに身を乗り出していた
「お前達も知っている筈だぞ。歴史を作り替えた連中は暗黒竜"狂王"を崇め奉る”黒星院”なのだからな」
「なっ!?」
「そんな馬鹿な!!”黒星院”は”平等院”と和解し共にこの世界の平和の為に尽くしているんだ!!そんな彼等が歴史改変などっ!!」
「凪の言う通りよ!教祖様と国王様はこの世界の救世主で私達の為に尽くしてくれてるわ」
「ふん。その認識が間違いなのだ。いや、正しくは記憶を改竄されているが故にか」
クッと喉を鳴らしフェルはゆっくり立ち上がり凪とフーラの前に立つと2人の額に指を立てる
"解除─·····"
そうポツリと呟かれたフェル言葉に合わせ凪とフーラの身体に電気が走る。一体何が起きたのか...唖然とする2人の足元には小さな黒い宝石が転がっていた
「宝石?」
「触るなよ紅月。それは"狂王"の鱗から造られた魔石。人や竜の体内に埋め込む事で記憶の改竄や埋め込まれた人や竜を意のままに操れる"暗黒星"通称"ブラックスター"だ」
忌々しそうに"暗黒星"を見下ろしながらフェルは躊躇う事無くその黒い宝石を踏み潰し唖然としている2人に声を掛けた
「気分はどうだ?」
「何だか身体が軽くなったような気がします」
「あぁ、まるで何かから解放された気分だ」
心なしか表情が良くなった2人を見ながら紅月はチラッとフェルを見上げる。それに気付いたフェルはフッと微笑み紅月の頭を撫でた
「安心するといい。お前の中にあった魔石は"竜輝邂逅"の時俺が破壊しておいた」
「ありがとうフェル···それでその話が真実なら俺達はいつその魔石を埋め込まれたんだ?」
「確証は無いが埋め込む隙があるとしたら何らかの儀式の最中だと俺達は思っている」
「儀式の時にか...」
「儀式···」
ふむっと顎に手を当て凪と紅月は記憶を手繰り寄せる。儀式ねぇ···そう言えば入学式の日、教会から使徒が来て何か石みたいなの額に押し付けられたような??すぐ消えたけど·····あれも確か黒い石だったような─·····
ハッとし凪のほうを見遣れば凪も気付いたらしく静かに相槌を打つ。もしアレがフェルの言う”暗黒星”なら俺達が埋め込まれた時は·····
「竜使い適性検査の時か─·····!!」
「それなら誰にも気付かれず魔石を仕込む事が出来る!!」
もしそれが事実ならあの学校に入学した人や卒業した人達は─·····
「”黒星院”の忠実な下僕。憐れな操り人形だな」
不穏な空気の中切る