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”半竜体”と”竜輝邂逅”

フェルが天然になりつつある

「~~!?」


「───~!!?」


「............」


微かに聞こえる話し声を捉え紅月はゆっくりと目を開く。いつ帰って来たのか紅月の目に映るのは見慣れた天井と家具。そして四季折々の花達が咲く庭だった


「うん。俺の家だ」


「目が覚めたか?紅月」


「凪」


スっと影が落ちたかと思えば心配そうに見下ろす親友の姿があり、その手に持つ盆に置かれた水と薬が見えた


「何心配するな。この薬は疲労回復を早める薬だ。先程フーラとフェルとで作った」


「そうなんだ...って凪いつの間にフェルって呼ぶ様になったの??」


自分の聞き間違えでなければ確かに凪はフェルと言った。ジトリと目を細め見つめてくる紅月に凪は苦笑いを浮かばせた


「お前が心配するような事は断じて無い。俺にはフーラが居るからな。呼びやすい名前で呼んでくれと言われたから下の名前で呼んでいるんだ」


「それならいいけど...で、そのフェルは?」


「フェルならもうすぐ来る...「紅月!!」来たな」


ガチャと激しくドアが開きキラキラと紅い瞳を輝かせたフェルとその後ろ疲れ切った表情を浮かべるフーラの姿があった。そして凪を見るや否やガバッと抱き着いた


「凪ぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいっ!!先に逃げるなんてズルいじゃない!!私1人でフェルの相手なんて無理よ!!!」


「任せてすまないフーラ...後で褒美をやるから?なっ?」


「グスッ...約束よ」


「一体フェルはフーラに何したの??」


抱き着いてきたフーラを凪が優しく慰めている様子を横目に紅月は未だソワソワしているフェルに問いかけた


「何もしてないぞ?俺はただ見知らぬ物がいっぱいあって片っ端から聞いて回っていただけだぞ?」


それの何がいけないのだ??コテンと軽く首を傾げるフェルに紅月は何となく想像がついた。山暮らしが長かったフェルには今の暮らしが新鮮だったのだろう。目に映る全てのものを聞いて回っていた筈だ。まぁ流行には疎いだろうしフェル····困ったように笑うも紅月はふと気付いた。フェルが人の姿になっているのを


「今更だけどなんでフェル人の姿なの??竜じゃなくて」


「む?それはだな...紅月達を運ぶのに此方の姿が運びやすかっただけだ。それに本来の姿で街に降りたら辺りがマグマで焼け野原になる」


「あぁ···なるほど」


至ってシンプルな回答で紅月はただ頷くしかなかった。うん、フェルらしいけども...そうこうしているうちに気が済んだのか凪とフーラが声を掛けてきた


「所で2人に聞きたいことがあるんだが」


「俺の姿の事だろ?」


「あぁ。あの時一体何があったのか詳しく教えて欲しい」


何時になく真剣な表情で聞いてくる凪に紅月とフェルは目配せをしあの時何が起きたのかを語り始めた


「何そこまで難しく考える必要はない。アレはお前達が行っている"半竜体(ハーフ・ドラゴノイド)"の上位版と考えたらいい」


「上位版だと?そんな話今まで聞いた事ないぞ!」


「お前達が知らないのも無理はない。あの技は古来から竜王とその使い手のみしか継承されぬ"秘術"なのだからな」



「お前達が行っている"半竜体(ハーフ・ドラゴノイド)"は魂のみで同調する事で互いに力を引き出し合うものだが俺達が行ったのは"魂のみならずその身体も全て同調"する秘術"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"」


「"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"だと···?」


「あぁ」


「っ!?」


それとなくベッドに腰を下ろしフェルは優しく紅月の手を握った。突然のフェルの行動に紅月は一瞬ビックリするも掌を通して伝わるフェルの体温に僅かに口元を綻ばせた


「"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"を果たせば融合した竜そのものの力を自身で使う事ができ更にその竜の特徴が身体に現れる。お前達も見ただろう?」


フェルに問われ凪とフーラはあの時の事を思い返す。確かにフェルの言う通り紅月の見た目や仕草など随分いやかなり変わっていた


「しかしフェル···デメリットの方はどうなる?恐らく知ってはいるだろうが"半竜体(ハーフ・ドラゴノイド)"は魂が直接結ばれているが故パートナーが絶命すれば己も絶命する"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"もそれは適応されるんじゃないか?」


「いいや"半竜体(ハーフ・ドラゴノイド)"のように"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"はそのようなデメリットは無い。"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"の場合、融合した竜が全てのダメージを引き受け竜のみが死ぬ。そもそもお前達が扱っている"半竜体(ハーフ・ドラゴノイド)"はこの”竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)”を元にとある人間が開発した未完全な技だ。故にリスクも高いのだ」


「つまり俺達は未完成の術式を教員に教え込まれたのか··」


「凪···」


俯き拳をキツく握り締め呟く凪に紅月が声を掛けようとした時だった。不意にフーラが椅子から立ち上がりフェルに向かって頭を下げた


「爆炎竜様!お願いします!!私達にも"竜輝邂逅(ドラゴニック・バース)"って言う技を教えて下さい!!どうかお願いします!!」


「..して理由はあるのか?」


一瞬にして纏う気配を冷たくしフェルはフーラに言葉を投げかける。フェルの殺気にビクリと体を震わせながらもフーラはグッと耐え真っ直ぐフェルの目を見つめ答える


「私は凪に死んで欲しくないっ!!凪は私にとって凄く大切な人で···かけがえのない存在なんです。例え私が死んだとしても凪には生きてて欲しい···これでもまだ教えてくれないというのなら貴女と戦ってでも力づくにでも吐かせてあげますわ!!」


「フーラ···」


「フェル」


今にも泣き出しそうになるのを耐えフーラは必死にフェルへと訴える。フーラにとって凪は無くてはならない存在。例えその身が滅びようとも護りたいと願うフーラに見かねた紅月がフェルに声を掛けようとしたがフェルが浮かべたその表情に口を噤んだ


「ククッ...その意気やよし!!気に入ったぞフーラ」


「え?」


「試すような真似をして悪かったな。お前の凪を思う気持ちは本物のようだな」


ワシワシとフーラの頭を撫でながら謝るフェルにフーラや凪、紅月もポカンとする。表情から察するにどうやらフーラはフェルに試されていたようでペタンと尻餅をつく


「っ、怖かったですわ···」


「フーラお前と言う奴は···全く無茶をする」


腰を抜かし尻餅をつくフーラの傍らに屈むと凪は優しくフーラを抱き締めた


「元より竜王祭の時、他の竜王とも話し合っていたのだ。このまま数多くの竜と人が犠牲になるより正しき術式を教えた方が良いのではないかと。我ら竜族は例え肉体が滅びても魂は死なない故に魂さえあれば復活は可能だしな」


「はぁ!?」


サラっと爆弾発言をするフェルに3人の声が重なり合う。今なんて言ったのだ?この竜王は


「む?知らなかったのか??」


『そんな話し知らない(わ)(よ)!?』


不思議そうに首を傾げるフェルに少しだけあざといなぁと思いながらも紅月達は叫ばずにはいられなかった



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