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使っても無くならない財布の使い道 小心者地味女子の場合  作者: 入間秋生
小心者地味女子 瀬田ミドリの場合
2/16

そうだ。会社辞めよう。

ケイタイのメモ機能を開き、リストを作る。

うわ・・・手が微妙に震えてるし、すごく冷たい・・・

いやー緊張するよね・・・ちらりと3億をみてそう思う。


・マンション買う

・貯金


あ。貯金はしなくていいのか。

「貯金」というメモを消す。


・なじみの養護施設への寄付

・子ども食堂の運営


私は養護施設のボランティアを趣味にしている。

子どもたちはかわいく週末の楽しみの一つだった。

だけど最近はボランティアに参加できていない。


転職したのが失敗だったのだ。

毎日ほぼ終電。たまに始発。

土曜か日曜のどちらかは出勤。

残業代は見込みで月二万。

転職して2年。

子どもたちとも会えないし、ボランティア仲間とも会ってない。

そういえば、最近は本屋にも図書館にも行ってない。

最近の楽しみって、もしかして通勤中の「なろう小説」とまとめサイトだけかも!?


私は急にさみしくなった。

最近人と話したのっていつ?

会社、コンビニ、飲食店しか思い出せない。

会社の人との話は仕事のことだけで、ここ最近で楽しかった会話が思い出せない。


リストの一番上に追加

「会社を辞める!」

なんといってもこれが一番初めだ!


次の日私は退職願と退職届をもって出勤したが、二つ返事で受領

というわけにはいかなかった。


まぁ想定の範囲内だけど・・・

終電まで仕事して休日も出勤しているのは、私だけではない。

つまり今うちの会社は病的なまでに人手不足なのだ。


あっさり辞められるわけがない。


「時短勤務にする」

「外注として定時で上がれるような雇用にかえる」

などいろいろ言われたけど、もちろん却下だ。

みんなが終電まで働いてそれでも仕事が回らないのを知っていて、時短勤務なんてできるわけない。


上司二人に囲まれての攻防戦・・・

仕事辞めるのも一苦労だな・・・


なんとか退職願を受け取ってもらい、検討するとの返事をもらう。

本当ならこのまま届の方も受け取ってもらいたかったのだけど、さすがに無理か。

結局この日も終電まで仕事をし、帰宅。

お金が出てくる財布と3億あるのに、使う時間がないなんて悲惨だ・・・


普段なら帰ったらシャワーを浴びてすぐ寝てしまうところだけど、

今日はリストの続きを考えながらベッドに入る。


エステ行こうかなぁ・・・

リゾートスパでゆっくりもいいなぁ・・・

特にここ2ヶ月は忙しくて、ろくなもの食べてないんだよね。

カロリーフレンドとかゼリー飲料とか、そんなもので食事を済ませていたので、痩せたけど。

せっかくだからこの体形を維持しよう。

そんなことを考えながら眠るのは心地よかった。


結局1週間後に退職届が受理された。


代休と有休をフルで使い、最終日の今日。

チームで仕事をしているので、引継ぎの必要がないのはありがたい。


最後にお世話になった工場長に電話をすると

「東京支店の働き方は、無理がある。

そんなやり方じゃ、お前だけじゃなく誰も続かない。

体に気をつけろ」

と言われちょっと泣きそうになってしまった。


確かに東京支店は本社や工場と比べて、離職率がかなり高い。

実際私が働いていた2年間でも、何人か入れ替わりがあったなぁ・・・


しんみりした気持ちと、晴れ晴れした気持ちを胸に私は、入社して初めて明るい時間に会社を出た。


辞めるときに雇用条件や労働環境のような、改善できるものを理由にすると

引き止められてしまうので、あまり得策ではないそうです。

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