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白蛇さん

メルヘンチックな童話です。

苦手な方は飛ばしてください。

ここは白蛇さんの悩み相談所。

といっても来るのは小動物たちで、人間ではありません。


白蛇さんはちょっと前まで、普通の蛇でした。

他の蛇よりちょっと長生きで、ちょっと賢い普通の蛇でした。

白蛇神様に憧れて、おやしろに住み着き、弟子にしてもらえるよう頼んだのです。


「弟子???」

白蛇神様はちょっと驚いたようでした。

「そうはいっても弟子なんかとってないしねぇ・・・」

(蛇はあんまり表情がないと思うでしょう?

でもその時の白蛇神様は間違いなく「困ったなぁ・・・」という顔をしていました)


「とりあえず、ね。

お前、蛇以外のことを知らないだろう?

蛇だけじゃなくて、人間、猫、鳥、ネズミ、虫

この世に生きるすべての生き物のことを、勉強してごらん。

それでもまだ弟子になりたかったら、もう一度おいで」

白蛇神様は白蛇さんを見ました。そして

「お前の体がすっかり白くなったら、もう一度おいで」

と言いなおしました。

「色々知ったら、お前は少しづつ白くなっていくからね」


今白蛇さんは半分くらい白くなりました。

頭から順に白くなり、しっぽは昔の名残でまだ緑色。

お腹のあたりはグラデーションで白から緑色に変わっていきます。


自分から人間の生活を覗きに行くこともあります。

相談に来る動物たちから、動物の生活や人間の話を聞くこともあります。


白蛇さんは白蛇神様の弟子になって、自分が何をしたいのか考えます。

白蛇神様のように、色々なモノたちの願いをかなえたりしたいのでしょうか?

白蛇さんは首を振ります。


白蛇さんは、白蛇神様が好きなのです。

とっても尊敬しています。

その尊敬する白蛇神様の近くで白蛇神様のお手伝いがしたいのです。


「私がなりたいのは弟子や御使みつかいじゃなくて、白蛇神様の執事とかメイドかもしれないなぁ」

と白蛇さんは思います。

執事やメイドは最近知った言葉です。

覗きに行った人間が見ていた、テレビの中にいました。


さてそんな白蛇さんのもとにお客さんが来ました。

室内飼いのきれいな毛並みの猫です。


白蛇さんは猫やカラスが苦手です。

ひっかいたり、口ばしでつついたりするからです。

それは「本能」というやつで、ついうっかりしてしまうだけで、悪気はないらしいことはわかるのですが、

真剣に相談にのっている最中に、急に引っかかれたりするのは、やっぱりちょっと不愉快で嫌なのです。


今日のお客様はお行儀のよいお嬢様猫でした。

話ながらたまに手がムズムズ動くのが気になりますが、ちゃんと大人しく座っています。


「白蛇様。今日はお会いできて光栄です」

お嬢さんがそう言います。

「白蛇様ではなく白蛇さん、と呼んでください」

白蛇さんは律義に訂正します。


「様」は尊いあの方にこそつける敬称で、自分はまだまだ「様」と呼ばれるような蛇ではないと思っているのです。


「はい。では白蛇さん。

今日はお願いがあってまいりました。」

白蛇さんは先を促すように尻尾を軽く振りました。


「ワタクシ、下僕に感謝の気持ちを伝えたいのですわ。

あの者は言葉も通じないのに、ワタクシの為にとてもよくやってくれていますので・・・」


お嬢さんの鼻が得意そうにヒクヒクと動きます。

よほど下僕のことが好きなのでしょう。

とても満足気です。


「お嬢さんがそのきれいな尻尾で、下僕の頬をなでてやり

下僕の鼻に口づけてやれば、十分ですよ」

白蛇さんは答えます。

猫を世話するタイプの人間というのは、猫にすっかり骨抜きにされていることを知っていたのです。


「それから、これを差し上げましょう」

白蛇さんは白蛇神様から借りた財布から、お金を出しました。

「人間は動物がお金を持ってくると、驚きますから部屋の隅にでも置いておくといいでしょう」

と白蛇さんがいいました。

「まぁありがとうございます。

下僕もワタクシの気持ちに気付いてくれるとよいのですけど」


そしてお嬢さんは、お嬢さんが心配で

不用心にも窓を開けたまま待っている下僕のもとへ帰っていきました。

覚えのない紙幣が部屋に落ちていたら、懇意こんいにしている動物からのプレゼントかもしれません。

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