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古城

作者: 空知 縹

苔むした岩壁に手を付き、私は倒れる。


どこかで猛る馬の嘶きが耳に入り、大砲の音が一発鳴ると、世界は静寂に包まれた。


もう疲れ果てた。


生きていくための気力なんてものは無い。

失うものは全て失った。なのに、なぜ私の心臓は脈動する? 呼吸を続ける? 涙が落ちる?


突然の地響きが使い物にならないこの身に走って、生命力を欠いていく。吐き気を覚えて呻きをあげたが、誰の耳にもこの声は届かない。


大砲の音が鳴る。


意識は遠のき始めていた。この音が大砲のものなのかも、私にはわからない。


腐った肉に集るハエにうんざりとした。その肉は私だった。ハエは手を擦り合わせて羽休めをする。その様子を見届けて、私は力尽きた。



私の哀れな死体は、数週間後に見つかった。

もしも生まれ変われるのなら、美しく、可憐で、自由を求める蝶を望む。


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