幽霊女王
調べてみるとルーズの国へは特に通行証などは必要なく、案外近い位置に在った。
行くのはヒロ、ミナ、信玄、謙信、ヘルナ………
しかし…………
「や~!!」
「これ!!言うことを聞かんか!」
「や~ら!!父上と一緒がい~い~!!」
リリがごねてしまったのだ。
リリはまだ幼い。父親とした信玄が暫くいなくなると知るとごねてしまったのだ。
「お土産買ってくるから」
「や!!」
「うーん、困ったなぁ」
誰が何を言ってもこれである。
「へっちゃんも父上も行くならリリも行くんだもん~!」
泣き出してしまう有様だ。
へっちゃんとはヘルナリナの事だ。
実はヘルナリナとはとても仲が良い。オヤツもよく一緒に食べているし、ヒヨコも一緒に戯れる。
「仕方ないわね………連れて行きましょう」
「うむ。ワシもそう思うた」
「なに!?」
信玄とヘルナリナの発言にヒロは驚いた!
先はまだ見ぬ地だ。その上、ゴーストタウン!
子供には刺激が強いのでは?
「………いいの?」
「その代わり、途中では帰れぬぞ?」
「お姉ちゃんと一緒にいれる?」
「うん!!リリ、いーこにする!!」
そう言うと、リリはいつも通り信玄の肩に乗ると無邪気に笑った!
「しゅっぱぁ~つ!」
「はぁ…………」
ヒロはため息をついた。
「仕方ないな。じゃあ、アルス、エルナ、城は頼んだぞ。」
「任せておけ。」
「お任せを!」
「ニカウ、例の件、頼んだぞ。」
「まぁ、やってみるっす」
「よし、じゃあ、出発だ!」
一行は亡霊都市ルーズを目指し、旅立つ。
旅立ってから都市までは半日もあれば着く予定だ。
距離はそう遠くない。一行は雑談を楽しみながら行く。
「謙信………」
「なんだ?」
「もう傷の具合はいいのか?」
「心配無用。軍神はそんなにヤワにできてはおらん。それに、またミナを一人にしてしまうのではないかと心苦しくてな。ハゲと一緒なのはシャクだが………」
「ふん!ワシだって、貴様と一緒はイヤじゃ!」
「まぁ、喧嘩するなよ………。何かあっては困るから戦力になるお前達2人に頼んでいるんだから」
「私1人で!」
「ワシ1人で!」
「何をう!?」
「やるのかハゲ!!」
いつもの雰囲気になると信玄に肩車されていたリリが怒り出す!
「めっ!!」
「あ痛!!なにするんじゃぁ!」
「ビシャモンのお姉ちゃんも、めっ!!」
「ぬぅ…………」
「喧嘩はめっ!!ダメ~ッ!!」
幼い子に言われて、ぐぅの音もでない2人。
「はい、すいません………」
「ご、ごめんなさい………」
これにはミナもヒロもヘルナもクスクスと笑った。
龍も虎も形無しである。
「あ、そうだ!アメちゃんあるよ?」
ミナは腰の巾着からアメ玉を取り出し、ヒロに渡した。
「お!サンキュ!」
「はい、ヘルちゃんも」
「ありがとう」
そして、リリ、信玄、謙信にも配る。
「ウマいな」
「実はこれはアルスが作ってくれたのです!」
ふふん!と何故か自慢気なミナ。
何故、お前が自信満々なんだ。
「あやつ、なんでもできるのぅ」
「まったくだ。出来過ぎではないか?」
そして、リリ以外の全員が口を揃える。
「ロリコンじゃなければなぁ……」
そうして、またみんなで笑う。
旅路は順調だ。天気は快晴。何事もない。
しかし、突如辺りが暗くなり初めて来た。空に雲はない。
急に夜がやってきた。そんな感じだ。
「おかしいな、夜にはまだ早いワケだが」
「ルーズの国境を越えたのよ。」
ヘルナが補足を口にした。
「ルーズは亡霊国家。領地は普段、昼夜が逆転しているの。普通の国が夜の時はルーズでは昼。ルーズが夜の時は普通の国は昼なの。亡霊は活動が基本的に暗いところという事よ。」
「へぇ………」
念の為、持ってきておいたランタンに火を灯し、足を進める。
歩き続けると街の門に到着した。
そこへは衛兵が立っていた。衛兵は普通の人と変わらないが、顔色は悪い。死んでいるからだ。頭に矢が刺さっていたりする。
「ちちうえ~!あのひと、頭に何か刺さってるよ~」
「アレはああ言うモンなんじゃ。マネしちゃいかんぞ」
「うん!」
ふと門を通りかかると、人が女性が門に寄りかかっていた。
「ねぇ………」
話しかけられる。
「なんだ?」
「何しに来たの?」
「女王とやらに会いに来た」
「はぁ?」
女性は本を片手にし、目にはモノクルをかけ、気怠そうにこちらにやってきた。頭を掻きむしりながら、ぼそりと言う。
「また間の悪い………」
「なんだ?」
「アンタ達、今、この国がどうなってるか知らないの?」
「……………?」
何か、意味ありげな感じだ。
どんな事情かは知らない。
「まぁ、いいわ………アンタ、なかなかイイ男だし」
その時だった!
━━━━ガンガンガンガン!!
鐘のなる音が鳴り響き、法螺貝が鳴り響いた!
「敵襲!!敵襲だ!!」
「ちっ………ホント、間の悪い」
女性はまた舌を打つ。周囲の雰囲気が物騒になり、守備隊が門に一気に集まる!
「アンタらは逃げな。客人を戦わせられないからね………」
「俺達は戦わないとは言っていない」
「はぁ?」
敵襲と聴いて逃げているワケにはいかない。
それに、状況的に加勢しておいた方がいいだろう。
「来るぞぉ!!」
門の外は森だ。その木々の間からやってきたのは黒い人型の何かだ!
イドの魔人に似ている!
「ヘルナ!アレは!」
「イドの魔人よ。」
やはり!
既に皆には魔人対策用の装備はさせているが、他の兵達は違う!
追い払うのでやっとのはずだ!
「いくぞ!みんな!」
リリはヘルナに預け、一気に駆け出す!
相手の数は目に見えるだけで100は下らない!
多すぎる!
「へぇ、アンタら、符を持ってるのね………」
火球を無数に放ちながら、門の女性は言う。
火球は魔人を撃ち抜くと、消滅させた!
「アンタもか!」
「もちろん………。アタシは文華。アンタらのお手並み、拝見させてもらうわよ」
敵を斬り、殴り、はたまた魔法で貫き、燃やし、イドの魔人を消滅させていく!
しかし………
「キリがないぞ!ハゲ!」
「ええい!何匹いるんじゃぁ!」
「クソ、何かないのか!!」
「何か、何か………あっ」
ミナは思い出した様に声を上げた!
「何かあるのか、ミナ!」
「アルスがピンチになったら使えって!」
「なら早く!!」
ミナは腰巾着から何かを取り出した。
それは小さなホイッスルみたいな何かだ。
それをミナは勢いよく吹いた!
━━━ヒュゥゥゥゥゥ!
肩すかしな音が空に鳴り響き、天に大穴のような黒い点が現れる!
「えぇい!!前口上など結構だ!!」




