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白昼夢のヒメ!!~夢魔の姫とカケラの王子~  作者: ブラボー
幽霊(ゴースト)
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………おかしい?

事件が解決すると、早速、仕事は詰まっていた。

倒壊した家屋や街の修復、人員の補充、金銭管理、被害状況などの事後報告、書類や仕事は山積していた。


「…………ふぅ」


ここまで来ると、もはや国だ。

兵の管理をしたり、移住者の管理、貿易などに手を出せば、段々と移住者は増えたりして仕事は増えたりする。

にもかかわらず、最近はミナリアの様子がおかしい。

あまり口を聞きたがらないし、今日も部屋からあまり出てきていない。

1人ではこなす仕事にも限界がある。

当面はひとつある…………。


「う~ん…………」

「………おや?どうなされましたか」


そこへアルスが茶を入れて持ってくる。


「あぁ、アルス。いや、実は人や費用が足らなくてな」

「またそれですか。いい加減、徴兵でもなさいますか?」

「いや、しかし……………」


実は信玄と謙信が自分の屋敷などを建てさせる手前、教育しているおかげで、ウチの兵は元・ならず者とは思えない万能さだ。

日曜大工どころか、宮大工レベルだ。古風だが、見ていて分かるほどのしっかりした腕前だ。おまけにエルフ兵はエルフ兵で頭はいいのに、手先が器用なのでちょっとしたものならお手の物だ。

近々、信玄・謙信両名の別邸をエルフのセンスとウチの兵の腕で改修する計画すらあると報告があった。

街の修復には兵を割いている。


「そう言えば、謙信は?」

「あぁ、今日お目覚めになりましたよ。3日間も寝ていましたからね。優れないのか、優しいものを食べられ、今はまた寝させました」

「そうか………」


謙信は3日間寝込み、一向に目覚めなかった。

本領のミコさんが言うには「後遺症のようなもので、心配ない」と言っていたからあまり心配はしていなかった。

街に対してはアレが謙信だとは言っていない。むしろ、今回は駆けつけていないビシャモンさんを心配する記事が出るくらいだ。

信玄は信玄で「なんでワシが」などと言いつつ、兵に謙信の様子を逐一報告するように命じたのは…………。

ここだけの話にしておこう。


「金銭的に他国はどうやって回してあんなに効率よくいくのか。人は間に合わないのでは…………」

「奴隷ですよ。その半分は人間も含まれる魔界では弱小な種族ですね。魔界の人間はヒロさんやあのお二人のように向こうの人間と違い、貧相で教養もないですから。」

「………奴隷か」


普通、奴隷と聞くと嫌悪以外はないだろう。

しかし、奴隷とは労働力であり、古今東西で似たような者は歴史上、溢れていた。歴史上の偉業を達した者もその歴史を辿れば利用していた者は少なくない。古代ローマなどもそれに当たる。

概要としては他国への侵攻の上で他国民を連れ帰り、無慈悲に奴隷にするのだ。


「………そう言えば養鶏場は?」

「あぁ、あれですか。ヘルナさん、必死でしたからね」

「なんで動物霊は管轄じゃないんだ、アイツは……」


養鶏場とは、先日のミナリア引き籠もり事件で窓から生まれたヒヨコ達だ。ヘルナが「殺すな」と涙ながらに訴えるので殺処分は諦め、せっかくだから養鶏場を作った。名ばかりで、実際には広い敷地に柵を作り、放逐しているだけである。

卵や巣を作る棚などは設置し、偶然、農家出身の奴が兵にいたので、そちらを斡旋したところ、嬉々として取り組んでいる。


「いくつかの卵は繁殖用に残し、残りは今朝方にはお出ししましたよ?」

「あぁ、アレか。」

「ふふふ!ヘルナさん、毎日ヒヨコと戯れてますよ」

「…………ほぅ。」

「まぁ、街中に販売品として出し始めてはいますが、まとまったものになるのは先でしょう。」

「そうか、じゃあちょっと様子を見に行こう」


飲んでいた茶を一気に飲み干すと、席を立つ。

まずは、養鶏場からにしようと思う。

その前に………


「ところでアルス」

「はい?」


「まさかお前、最近ミナに相手されなくなってきたからって、ヘルナに乗り換える気じゃないだろうな?」

「違います!!私はロリコンはロリコンでも姫さま一筋です!」


猛烈否定………。


「そうか。最近、信玄の娘が来たろ?」

「あぁ!りーちゃんですね!可愛らしいですよね!ヘルナさんと、ヒヨコを見に行ったり、謙信さんの様子を見に行ったり、ふふふ………!ハッ!違います!私は姫、一筋ですからね!」


「まだ何も言ってねぇぞ………」


取り乱し過ぎだろ。

確かに毎日、屋敷中を走り回る姿は可愛らしいが…………

りーちゃんってなんだ。


とにかく、まずは養鶏場に寄る前に行かなければならない。

それはミナの部屋だ。

部屋の前まで行くと、扉をノックする。


「ミナ、いるか?ちょっと外へ様子を見に行くんだが………」

「………………。」


辺りは静まり返り、物音ひとつない。


「………いないか。また塞ぎ込んでなければいいが」


仕方ないので養鶏場などには一人で向かうことにする。


━━━━しかし、その背中をこっそり部屋の扉をわずかに開けて覗き込む姿があった。


「はぁ……………」


ため息を深くして、扉をしっかり閉めるとミナリアは寄りかかるようにして、座り込んだ。


「何してんだろ、私…………」


膝を抱えて、うずくまるとまたため息を1つ。

それを見かねてベッドの下から住人がひょっこり現れた。


「い~んですかぁ?ヒロちゃん、せっかく呼びに来たのに~」

「だって…………」


「ん~?」

「変なんだもん。私、どうかしちゃったのかな………」


「と言うと?」

「なんか、アイツが横で笑うと切なくなるっていうか、考えると胸が痛い………」


「え…………?」

「ミコさん、私、どうしちゃったんだろ………」


それを聞くと、ミコさんは顔の輪郭に手を当てて、首を傾げた。

心なしか楽しそうに。


「いつ頃からですか?」

「こないだから。謙信ちゃんから帰ってきてから………。その辺り。」


「ほう、そうなのか。俺がどうかしたか?」

「ちょ………!!」


ミコさんがソックリに声真似すると、目の前で喋られているにも関わらず、慌ててミナリアは周囲を確認する!


「あはは!似てましたかぁ?」


今度はエルナの声がする。発しているのはミコさんだ。


「やめてよ!!ミコさんのいじわるっ!」

「あぁ~、でも確かに病気ですねぇ!」


声色を戻して、告げるミコさん。


「そ、それホント?」

「えぇ。俗に言う恋の病ですねぇ」

「こっ!!…………コココココ!!こっ!!こ!!」


告げられると顔を真っ赤にして、動揺する。

口をパクパクと池の鯉のように。台詞は驚いてニワトリみたいに。


「ミナリアちゃん、恋なんかしたことないですよね~!初恋ですね~♪」

「ちょ!ちょちょちょちょ!!な、な、なん!!」

「いいですね~!どこに惚れちゃったんですかぁ~?」

「そ、そ!!そんなそんなそんなそんな!!」

「落ち着いて~落ち着いて~♪」


ミコさんはミナリアに深呼吸を促すと、深く息を吸い、深く吐いてを繰り返した。

やがて、少しずつ落ち着く………。


「わかんないよ…………そんなの………その………」


うんうん、とミコさんは黙って頷く。


「気が付けば、いつも一生懸命だし………。何かと言えば、私のためだし………。そりゃぁ、私が振り回してるけど………。でも、エルフの里での襲撃とかも、いつも守ろうとしてくれるし………。何かあるとすぐに毎日、一人で抱え込んで、なんとかする、なんとかするって…………」


俯いたまま、まだ語る。


「あの時だって………謙信ちゃんの中に行く時だって、私がホントは恐いって言ったら手を握って、大丈夫だって………。でも、私を抱えて謙信ちゃんの中に入り込む時とか、少し………かっこ良かったっていうか…………」


もじもじ、もじもじして語るミナリアを見て、目や鼻はないが口だけで分かるくらいミコさんは隣でニヤニヤと笑ってホッコリしていた………。


━━━━━そして、その間。

ヒロは養鶏場にエルナを連れて来ていた。


「この辺りからが養鶏場になる。見ての通り、放牧だ。」

「改めて見ると、凄い数だな」


弾丸の数の分だけヒヨコが生まれたとは言え、さすがに一斉掃射だけあってかなりの数がニワトリになり、数は凄い。

何百、いや、千はいるだろうか?

放牧とは言え、屋根付きの水場や小さな小屋もある。

雄雌やヒヨコなどは別になっている。ヒヨコの区画ではヘルナとリリが戯れている。こちらに気が付くと、大きく手を振った。


「あ、アニキ!」

「お疲れ様。どうだ?異常はないか?」


飼育を担当する男がやってくる。飼育の傍らちゃんと兵連はしてるので、呼び方はやはり「アニキ」だ。一時期はヤクザとかマフィアみたいでイヤだったが、もはや諦めた。


「へい!おかげさまで!」

「少し、見て回るぞ」


まずは水場だ。水場には湖から引かれた新しい水が送られ、清掃も行き届いている。餌場には比較的、綺麗にされた清潔感がある餌場がある。指示を出したのも確かだが。


「徹底されているな」

「あぁ。お前が、あまり不衛生にしても鶏たちに病など弊害が出ると言うからな。徹底はさせた。」


餌場を見ると、穀物の磨り潰した一般的な餌が見れる。


「餌は何を使っているんだ?」

「一般的な穀物の餌だ。経費を考慮している」

「確か、このピリピリヒルにはこの辺りにしか咲かない多年草に近い花が群生していたな」

「あぁ、ピリピリバラの事か?花ばかり無駄に付けるやつだな。」

「薔薇なのか?特徴は?」

「繁殖率が高い。他の薔薇のようにトゲがなく、1年に2回は花が咲き、実る。」

「うってつけだな…………」


もう一度、餌場を見やる。鶏たちはストレスなく走り回り、よく動く。これなら行けるかもしれない。


「それを摘んで餌に混ぜろ。他にも、植物性の身体に良さそうな油とかな。」

「は?なにを………」


これには飼育員も首を傾げる。


「普通の鶏ではダメだ。恐らく、餌にそう言ったものを練り込めば肉や卵に影響が出てくるはずだ。鶏も生き物だ。そう言った所にも気を遣えば、それなりの結果が出る。試験的だが、時期に効果が出るだろう。」

「なるほど!!やってみやす!!」

「頼んだぞ。」


それだけ指示して、そこを後にする。

そもマギアルは金持ちも多い。セレブなどにはこう言った高級感の付与は欠かせない。薔薇なら需要もあるかもしれない。

次は兵連場だ。


━━━兵連場では相変わらず、いつもの面々が武器を振り回していた。

謙信は寝ているので、信玄がいるのみだ。


「おう!ヒロではないか!」

「信玄、捗っているな。」


しかし、広い敷地を見渡してみるとエルフ兵はいない。


「お前達だけか?」


「そうじゃな。」

「エルフはエルフで銃撃訓練中だ。」


「そうか。分かった。全員集めろ。」

「全員?」


エルナは首を傾げつつ、空に信号弾を放ち、それが空に破裂すると紅い煙を放つ。

ほどなくしてエルフとウチの兵が揃った。


「ふむ。」

「どうしたんすか?アニキ」

「司令殿、お呼びでしょうか?」


「お前、武器や武術は?」

ウチの兵に訊ねる。


「刀槍、弓、護身術、印字打ち、組み手甲冑術などになるっす」

「ふむ。」


兵の回りをクルクルと回りながら、装備を見る。

装備はどちらかというと和風。東洋だ。

甲冑術とは刀の鞘などで殴りかかる組み手だ。刀が折れたら、鞘で殴れ。

印字打ちとは投石術である。簡単に言えばプロ野球の投手に投げさせる剛速球の投石だ。頭なら一撃死だ。


「お前は?」

エルフに問う。


「ハッ!!銃剣、CQCです」

「ふむ。」


次はエルフの回りをクルクルと回りながら装備を見る。

説明不要な軍人だ。CQCとは近接格闘術のことだ。これはナイフなどの短刀が1つはいるだけで、暗殺にも向く。


「ダメだな。」


そう言うとヒロは腰から素早く銃をエルフの1人に突きつけ、鞘を投げて頭に当てると、素早く別の兵の喉元に刀を突きつけた。

瞬時に、兵達から武器が向けられそれが止められる。


「これがダメだ。」

「い、いきなりなんですか!司令殿!」

「何かダメ何すか!?」


「なるほど」

「確かに」


エルナと信玄は深く頷いたが、兵達は一様に首を傾げた。


「つけいる隙がありすぎる。信玄らの指揮する部隊は集団戦には向く。だが、銃などの扱いなどには長けない。逆にエルナは集団戦には向かない。工作などには向くがな。ぶつかり合えばエルナが負けて、ぶつかり合わなければ信玄の負けだ。」


それには各兵も「なるほど」と頷く。


「反応はお互い良いが、まだ隙だらけだ。今ので一撃も止まらないのではな。あれが本気なら3人は確実に死んでいる。第一、気が付かなかったのか?戦力が集まればその分の隙がある。」


「それで?」


エルナも、どことなく満足げに問う。


「2つを推奨する。いち、訓練の合同化と弱点の詮索と補強。に、歴史と陣術など向学の時間の割り当てだ。」


「やれ、それは忘れておったわ。確かに学がないのじゃったの。ワシらも若い頃は孫子の兵法やら教養もあったわぃ。」

「なるほど。歴史を学んで、戦い方と考える力を鍛えると言うことか。」


「よし!分かったら取りかかれ!!」


兵はこれでいい。

さて、次は………

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