音悦の精神寄生魔人
━━━「私は同僚を殺して、なお死体で音を奏でるようになっていた。音のためだけに臓物や骨を遺し、腐ると処理した。…………楽しい。音楽はやはり良い」
━━━「戦争が終わるとリタの元に帰る日が来た。しかし、帰るなりリタは私をオカシイなどと言う。何を言う。私は愛しているとも。音楽も、リタ………君も忘れたことはない。どうして私は………。リタ、どうして君は私を………」
━━━━「もう普通に楽器を鳴らしても満足など出来ない」
━━━「あぁ、やはりあの音だ。」
━━━「リタ、君はどんな音がするんだい?」
━━━「新しい音楽が出来たよリタ。君は最高だ。歌声も、その百合のように折れる腕も最高だ!ありがとう!」
━━━「同胞は多く戦地に消えたが、私は新たな音楽を手に入れた。楽団員諸君には新しい配役を与えよう!」
━━━「それは私の楽器だよ」
━━━「私が罪人?笑わせるな!私は軍務も音楽家としても生きる神聖となるのだ!さぁ、新たな音楽だ!!」
━━━「さぁ!!私はどんな音がする!!」━━
━━…………「ヒロ!ヒロ!!」
その声にハッとして、我に返る。
目の前の漆黒は晴れ、眼前には日本武者の死体が散乱する古戦場が広がり、その中央ではミナが吊され、それに血色の悪い軍服の男がナイフを突き立てようとしていた。
「手前ェエェエエ!!」
叫ぶと、それにいつの間にか手にしていた刀で斬りかかっていた!
男がそれをナイフで受け止める!
「チッ………」
「ミナを………離せ!」
「楽器の分際で!」
「楽器じゃねぇ!!」
体が軽い!このままなら押せる!
迷わず、刀を奮う!一太刀!致命傷は一太刀あればいい!
完全に叩き斬る自信があった!
「人は楽器なんかじゃない!何かをするために生まれて来てるんだ!」
「生まれてきても死ぬ!人は浅ましい!自分のためなら何でもする!誰かのために死ぬなら、自分のために奏でる!私は続けなければならない!私は音楽を続けなければならないのだ!」
「何のためにだっ!!」
「私は音楽を愛している!!」
「なら、何のために!何のためにその音楽を奏でる!誰のためだ!アンタは誰かを喜ばせて、音楽を通じて誰かを愛し、愛されたかったんじゃないのか!!」
押し問答の末に、わずかに見えた。
「黙れぇぇえッッ!!」
まっすぐな突きだ!
わずかに見えた隙に瞬時に切っ先を切り上げ、勢いを反らすと胴体を横一閃!
「……………!!」
男は血飛沫を上げながら、そのまま文字通り崩れた。
「………………。」
まだ体は残っているが、男はただ倒れ、空を見上げたままだった。
「これでは、もう音楽は無理か…………」
「…………バカかテメェは」
「あぁ、バカだとも。死体でしか音を奏でられなかった」
「バカだよ、アンタ。最初はどこでも音楽が出来るって知ってたじゃねぇか。」
「…………。」
「なんだって、音が鳴って、音があるから音楽があって、それが人と繋がれるんだって知ってたじゃねぇか。リタさんも楽団員も、そんなアンタを信じてついて行ってたじゃねぇか………」
「ふ、は…………ふは、ふははは、そ、そうか」
「なんだよ」
「…………青年、私は次なら…………上手くやれるだろうか」
「アンタ次第だよ」
「…………リタ、みんな………。これが済んだら謝罪も………したい……も、の」
それだけ言うと、男は砂のような粒子になると、ヒロの背中の印に吸い込まれていった………。
「終わったか。」
そう言うとミナの縄を斬り、解き放った。
手をさすってはいるが、大事なさそうだ。
「痛むか?」
「う、うん?大丈夫!」
「…………どうしたんだ?」
ミナは何だか、様子がおかしい。
「ホントに大丈夫か?」
「う、うるさいなぁ!!大丈夫だって言ってるでしょ!?それより、帰り方、分からないでしょ?」
「………そう言えば、そうだなぁ」
ふと、入って来た時の事を思い出す。
入ってきたときはミナと指先1つでも繋がっていれば、素質がある以上は精神にリンクできるはずだと聞いていた。
入って来るときは、ミナが高い位置からの強行を怖がったため、抱えていた…………。
「よっと!」
「ちょ!ちょ!ちょっ!!」
同じようにお姫様抱っこで抱える。
何だか、このシーンも多い気がするが、相変わらず軽い。
「何すんのよぉっ!!」
「え?いや、帰りもかと…………」
「ば、バカ!!もうっ!!落とさないでよね!!」
気のせいか、顔が真っ赤だった。
ふ、と一瞬だけ瞼を閉じると、開いた時には既にピリピリヒルの城にいた。




