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白昼夢のヒメ!!~夢魔の姫とカケラの王子~  作者: ブラボー
ヘルナリナとの契約
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音悦の精神寄生魔人

「結局、見失ったか………」

「ねぇ、普通に足、早いよね!?なんであんな早いの!?」


「そりゃ、そうじゃろ」


息をわずかに切らせて、ミナとヒロが街中で立ちつくしていると、信玄がやってきた。


「戦地では馬が使えねば、後は歩行かちじゃ。彼奴も一角ひとかどの武人ということじゃよ。」


「あ、信玄」

「おじさん、その子は?迷子?」


「んぬぅ…………」


信玄は髭をいじりながら、やや気まずそうにすると答えた。


「名前はリリじゃ。ワシが拾った。どうやら、親もいないようでのぅ。」

「たけだりりです!よろしくおねがいします!」


大きな声で元気よく挨拶するリリに、思わず2人ともホッコリしてしまう。顔も緩んで、デレデレである。


「カワイイ………」

「おや、良い子だ!ミナ、お持ち帰りのパフェをわけてあげなさい。」

「食べる?」

「うん!」


専用のお持ち帰り容器のフタを開けると、スプーンを挿し、手渡す。

受け取るや否や、大きく口を開けると一生懸命に食べ始める。


「ふふふ………」


そのサマを見ていると、街人が次第に中央広場へ駆け始めた。こう言う時は、何かある。


「おい、聞いたか?なんでも、広場で演奏会があるってよ!」

「はぁ!?なんだって?どこの団だ?」

「それが分かんねぇんだよ。見たことない種族でさぁ………」

「行こうぜ!」


━━━………そんな会話が聞こえた。

演奏会?さて、そんな演目の話など伝わっていない。路上ライブか何かだろうか?


「なんだろ?」

「俺たちも行こう。」

「ちちうえ~、どこかいくの?」

「うむ。肩車してやろう。そこで喰うておれ。」

「わぁ~い!!ちちうえのかたぐるまだ~!」


━━━━…………中央広場は文字通り、街の中央に位置し、定番の噴水が真ん中にあり、その辺りで人だかりが出来ている。周囲は、それを囲むように出店が連なる。賑わいの中央にはローブで身を包んだ何者かが立っている。


「…………ぶつ…………ぶつぶつ…………」


何かを唱えるように呟いているが、心なしか口元が笑っている。


「なんだあれ…………」

「ヒロ……………」


心底イヤな予感しかしない。しかも、この類いは殺意などに混じる何かだ。かつて何度か感じた。ろくなものではない。ただ、混乱を避けるために「逃げろ」とは言えない。隣で手を握るミナからも恐怖心を感じる。アレはヤバい奴だ。だから、まず最悪をいつもどおり想定した。そして、告げる。


「………信玄」

「分かっておる」


それで役割分担は決まった。

そのただならぬ雰囲気に次第に民衆がざわつき始める。


「おい、アンタ………」

「………………。」


民衆の1人が話しかける。


「演奏会がどうとかって」

「……………。」


「おい、聞いてんのか?」

「………………。」


「おい!!」

「………黙れ」


ローブの下から長く黒い手がのび、怒鳴る男の首を掴んで絞めた。それを見ると、既に民衆は逃げ足を取り始めた!逃げる民衆を余所目に首を絞める!


「楽器!楽器!楽器!楽曲はいい!!演目も!!」

「ぐぇぇ」

「そう!それだ!!それだそれだ!!」


次第に掴む腕に力が籠もり、首からパキパキと音が鳴り始める!


「ははぁ!!肉!骨!心音!消化音!流動音!鼓動!声!声!声!血の滴る1音すら良い!良い楽器があるじゃあないか!!」


━━━刹那


刀が閃いてその腕を切り落とした。


「あ?」

「………なんの冗談じゃ」


「あ?あぁ~?あ?あぁ~ぁ?」


抜刀した信玄は苛立ちの表情でその怪物を見据えた。

怪物は首をカクカクと上下左右に曲げながら、奇怪な動きをしている。


「なんの………冗談じゃ…………答えぬか」

「なんの?なんの?ナンの?何の?難の?なんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなんなん!?」


信玄の目は捉えていた。その怪物の腰に下がるあの刀を。あの女が着用していた仮面を!それがなんなのか分かっていた!


「答えぬかぁあああああぁああっっ!!!」

「アガアァアァアアァアアァアアァア!!!」


怪物は腕を再生させると信玄を見て、叫ぶ!!

2本の腕を振りかざし、2本の腕で頭を抱え、苦悶するように暴れる!!豪雨が突然、降り出し、落雷があちこちに落ちた!時折、業風も吹き荒れ、まるで感情が爆発したかの様だ!!


「ぬぅっ!!」

「おじきっ!!」


兵がやってきた!ヒロとミナが民衆を避難させている!

その間は時を稼がねばならない!!しかし、こいつらでは足手まといだ!相手は軍神!腐っても軍神!勝てない!


(いかん!!)

「退くぞォっ!!」


「でも、おじきっ!!」

「いいから退くんじゃぁっ!!」


頭を抱えながら暴れる怪物をその場に置き、一時、信玄は兵を連れて、その場を離れた。


━━━━…………その後、信玄は兵を連れて相手を攪乱。

行方を眩まして、郊外の民家に押し入り、集まっていた。


「人被害は?」「まだないです」

「地形は?」「荒れてはいますが、まだ落雷による被害だけです」

「………謙信は?」「恐らく、アレじゃ。あの刀から察すればじゃがな。民は?」

「屋敷だ。アルス、ニカウ、エルナが守備してくれている。」「間に合うのか?」

「兵はいい。民に宛がう物資はこのままでは間に合わん」


居たのはヒロ、信玄、兵が複数人、それに………


「お前はどうしてここにいる?」

「あら?旦那さまの危機なら当然ではなくて?」


相変わらず、茶を優雅に飲むヘルナリナがいた。


「…………帰れ」

「あら?邪険にしなくても、今回はちゃんとこちら絡みよ。心配いらないわ。」

「どういうことだ?」


「まず、いくつか順を追うわね。まず、私がこちらに来た理由だけど、それはこちらでイタズラに極悪人の魂が召喚されているからなの。数は日に日に増えてるからなんとも言えないけど。」

「では、アレが関係あると?」


「そうね。あの怪物には2つの魂が感じられるわ。1つは私が管轄すべき極悪人の魂の1つ。もう1つはお色気さんね。だから、ヒゲさんの憶測も正解。」

「どうするんだ?何かあの怪物を止める手はあるのか?」


「2つの魂を剥離させて、罪人の方は始末するしかないわね。ただ、問題があって、あの怪物は既にこちらの管轄になるべき存在で、あまり肉体構造なんかはあまり干渉しないから普通には倒せない。私のような制裁者としての資格がないとね。」


そう言いつつ、ヘルナリナは肩から提げたポシェットの中から木の札をいくつか出した。日本の墓にある立て札に似ている気がする。ソトボとかいっただろうか?


「これを持って行きなさい、ヒゲさん。これは特別に私が作った罪人の魂を制裁する代理資格のようなものよ。これで、次は腕も切り落とされれば戻せない。」

「承知した。」


「ちなみにアナタはいらないわ。既に背中に印があるから。あれはこちらの制裁者としての意味もあるのよ。あとはミナちゃん用ね。」

「待て、ミナは………」


「必要よ。魂を剥離させるには精神部に深く潜らなきゃならない。それは夢魔のあの娘と、王子の力を借りたアナタにしかできない。でも、王子の力の使い方、分からないハズよ?」

「…………………。」


そこへミナが外から戻ってきた!

兵が複数人、肩を貸されて入ってくる。


「外は大変だよ。遠目から追ってたけど、落雷が引火して、燃えた建物もあるの。」

「それだけじゃねぇ。アイツ、落雷で建物が焼けると、俺たちが消火にくると分かって襲撃して来やがった!」


「………街をおとりにして、私達を呼び出すつもりなんだよ」


ミナは報告しながら、悔しそうに下唇を噛んだ。


「ミナちゃん………」

「ミナ…………」


「ミナちゃん、実はアレはお色気さんなのよ。悪い奴に操られてるんだけど元に戻すには2人にお色気さんの中に行って貰わないといけないんだけど」

「どういうこと?」


ヘルナリナは再び、経緯を説明。

ミナの顔つきが、静かに、だんだんと、真剣味を帯びてくる。


「と言うわけなのよ」

「うん。」


「だから、あなたの力が必要なのよ。」

「うん。」


「王子さまの力も使わないと、きっと1人では危ないわ。」

「うん。」


「できる?」

「うん。」


ヘルナリナの言葉に一見、安く返事をするようにも見える。


「うん、って………お前、どうやるんだ?俺はまだ中の王子に干渉したことはないんだぞ?」

「できるかできないかじゃない」


それを告げるミナの瞳にはかつてないほど意思を感じた。


「私がやらなきゃ、またみんないなくなっちゃうんでしょ?」

「…………そうね。急がないとお色気さんの魂も飲み込まれちゃうわね」

「そんなの、イヤ!!私はイヤ!!もう誰かが黙っていなくなっちゃうのはイヤ!!私はやる!1人でも謙信ちゃんを助ける!」


「馬鹿言うな!!お前1人行かせられるか!!だぁっー!しょうがねぇ!!やりゃいいんだろ!!分かった!やってみるよ!!」


2人は決まった。

謙信の中に乗り込む事に。しかし、信玄は兵達に告げた。


「…………お前達は残れ」

「なっ!?」


「相手は腐っても軍神じゃ。おぬしらでは勝てん。足止めはワシ1人でやるわい。」

「け、けどよ!オジキ!!」


「命令じゃ」

「……………っ!!」


兵の1人が納得いかずに拳を振り上げるが、別の1人がそれを止めた。


「待てよ。………なぁ、オジキ。悪いが納得いかねぇよ。それには従えねぇ。俺たちは来る日も来る日も、アンタとあの人の鍛錬で漢を磨いてきた。尻込みした日もあったが、もうあんな頃のヒヨッコじゃねえ。」


「………………。」


「けどな、いくら腕っぷしや漢を上げても、俺達にはまだ経験が足らねぇんだよ。頭が足りねぇんだ。だから頼む。智慧を貸してくれ。」


「死ぬかもしれんぞ?今度こそ」


「今更だろ!!」「うるせぇ!行かせろ!!」

「上等ォ!!」「関係ねぇだろ!!」


その士気高らかな姿を見て信玄はため息をついた。


「屍山血河………。結局、これは定めやもしれぬな」


それを聞くと、兵はすぐに地図を広げた。


「布陣は魚鱗ではなく鶴翼かくよくとする。別働隊に撹乱を用意する。各自、3人でひと組を編成し、まず早急に………………」


軍議が始まる。

これで全て話がまとまった。

あとは時間との闘いだ。急がなければ、街が無くなる前に。

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