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白昼夢のヒメ!!~夢魔の姫とカケラの王子~  作者: ブラボー
ヘルナリナとの契約
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ひとときの間幕

「ほわぁ~!すごい!」

「うぉお………こ、これ食い切れんのか?」


ミナリアとヒロは話題のスイーツを目の前にして、驚いた。今話題の店に入り、巨大パフェ「魔天狼(まてんろう)」を注文したが、何層にもなるスポンジ・アイス・クッキー!バニラ、チョコ、ポヨポヨ、バニラ、チョコと凄まじい。上には渦巻くアイスのタワー!周りには綿アメが雲の様に巻き付き、さらにクッキーや小さなサクランボのような果実が付き、まるで雲から飛び出した巨大なオオカミだ!


「まさに魔天狼(まてんろう)………」

「いただきまぁ~す!」


息を呑むヒロを余所目に、早速スプーンを刺して一口するミナリア。口にいれた瞬間に顔が一気にほころぶサマは多くを語らずとも、語る。


「ん~♪最高!」

「お前、パフェ好きだなぁ」

「うん!大好き!本当は謙信ちゃんや皆と来たかったんだけど、最近、忙しいから………」

「そっか…………」


どこか寂しそうなミナリア。

ミナリアは友達をうまく作れず、こう言った楽しみを共有できる友人はいなかったのだろう。エルナはあの調子だ。兄がいなくなり、付き合ってくれる者もいなく、せっかく友達になった謙信やヘルナは政務が忙しいと、楽しむ機会もなかなかない。

ミナリアとしては、そんな折に謙信が自分を置いて誘ってもくれずに街へ行くのがイヤだったのだろう。


「…………ねぇ、ヒロ」

「ん?」

「ヒロはさ、友達いたの?」

「…………あぁ。友達はいなくなった。知人は沢山いた。」

「なにそれ?変なの。じゃあ、友達ってなに?」

「それは自分で知った方がいいだろうな。でも、そうだな…………」


水を一口飲むと、ヒロは程なくして応えた。


「友達ってのはさ、気兼ねなく、なんでも言える人だよ。一緒に遊んだり、泣いたり、時に相談したり、お互いを想いあえる。それが友達だよ」


「家族と同じじゃない?」


「いや。家族はもっと親密だ。友達は危うい。ともすれば、片方がそうあるのをやめて、軽んじてしまえば、争いなどの原因にもなる。だから、そうならないと確信できる奴を親友と呼ぶんだ。」


「…………もしかして、ヒロは親友いたの?」

「…………いたよ。ただ、そいつはいつからか俺を軽んじるようになっていた。どんな困難も逆境も乗り越えてきた。俺は命さえもと思ったが、そいつは違った。それを逆手にした。」


昔を語るヒロの顔は眉間にシワはよってはいないが、どことなく怒りと悲しみがひしひしと伝わるようだった。


(あぁ、これが………。でも、こんな話はこいつの中の少しなんだろうなぁ………)


ミナリアはあの日から気が付いていた。

ヘルナリナも言っていた。「怨嗟と義憤の塊。燃え尽きる事のない復讐の黒炎」だと。苦しむ形も違うけれど、彼も独りは嫌で、本当は誰かを恨み続けたくはないのだ。優しさがあるから今までこうしてきて、今もこうして彼は清算できない過去に憤り、漏れ出すほどに邪悪なのだ。「正なる邪」とかよく分からない事をヘルナリナは言っていたが、それもこうして話していると分かる気がする。


「もう!変な顔しないでよ!ほら、パフェ!食べよ!」

「あ、あぁ。いや、コレは、お前が………」

「私が特別にアンタには一緒に食べていいって言ってるの!感謝してよね!」

「いや、その…………だな」

「なに?まだ…………」


「間接キスになるぞ」

「き!ききききき!キス!?」


顔を真っ赤にして慌てるその初々しい様子を見て、周りの大人がほっこりし、悪魔のスタッフがカップル用の二又のストローの刺さったジュースを「サービスだよ」と置いていく始末。


「お、おぅ」

「な、ななななな!なんで私がアンタとチューしなくちゃいけないのよぅ!」

「するとは言ってないだろ!」

「へ、変態!公園でこないだ見た、エッチなサキュバスのお姉さんがやってたキスとかしたいんでしょっ!!」

「お、落ち着け!!別にお前とキスしようとか考えてない!!」


サキュバスとは、女性の悪魔で、いわゆる色魔だ。

男性の体液や活力を奪い、生きるふしだらな悪魔の一族だ。

魔界にはそう言う法はないので、たまに路地とか外でも情事を見かけてしまう人が後を絶たない。

それにしても、見ちゃったのかお前は………


「信じられない!もう!帰ってエルナやみんなに言ってやるんだから!!」


そう言いながら、半ばやけ食い状態でパフェをたいらげ始めるミナリア。その風景はテレビとかで見る大食い選手権そのものだ。

思わず可笑しくて、笑ってしまう。


「ふっ」

「………なによ」

「いや、別に」


そんな時、店の戸についた小さな鐘がカランカランと音をたて、誰かが来店した。


「あぁ!ビシャモンさん!」

「こんにちわ~。空いてますか~?」


その声を聞き、思わず2人でそちらを見やる。

狐のような仮面をして、口元だけを露わにし、着物の上にロングコートを羽織り、腰には愛刀。

間違いない。謙信だ。


「こちらへどうぞ!」

「あぁ、すみませ…………」


こちらに気が付いた謙信。

カチリと動きが止まる。


「どうしました?ビシャモンさん?」

「いや、その」

「あのジト目のカップルがどうしたんです?」


ミナリアがパフェをお持ち帰りするように頼み、ヒロが席で代価を支払い始める。


「今日は失礼するよ!また今度に………」


謙信が背を向けると、一気に2人は走り出した!!


「待て謙信!!」

「待ちなさい謙信ちゃん!!」


「誰が待つか!!」


謙信も負け時と走り出す!

3人が消えた店は、店中でそれを見て唖然としていた。


結局、謙信の逃げ足が速く、追い付かずに見失うのだった……。


━━━━━……………。


「はぁ、はぁ…………きょ、今日は厄日か!ハゲにミナにヒロに、なんでこんなに………」


謙信は息をきらして路地裏で一息ついていた。

他に目立った人影はない。


「はぁ、はぁ…………もう、今日は帰るか。こんなままでは」

「そうはいかんよ。」


━━━━瞬間、謙信は何かに腹部を撃ち抜かれた痛みを覚えた。

血はない。流血はしていないが、胸が苦しい。

振り返るとエルフの軍人が立っていた。ウチの者ではない。

服装が違う。


「き、さま…………」

「ふっ!まさかアレを追って怨敵を見つけるとはお手柄だな。」

「な、なにを…………」


(苦しい!頭が!思考がかき乱される!なんだ、これは!なにも考えられない!あいつ………)


「苦しかろう?君にはイドを撃ち込んだ。程なく化け物として暴走するだろう!我々の手足としてな!」

「な、に………」

(あいつ、あいつあいつあいつあいつあいつあいつ!!憎いにくい憎いにくいにくいにくいにくいにくいにくいにくい!!)


謙信の中で激しい憎悪が燃え、思考がかき乱され、支配された。

そして………………


「あぁ嗚呼アアアアアアアアあぁああぁぁあ!!やめろやめろやめろやめろやめろ!!入ってくるなぁあああああああ!!誰だ貴様はぁあああ!!入ってくるなぁあああああああ!!」


絶叫と共に謙信は黒煙に包まれ、化け物となった。

腕は黒く4つに分かれ、触手や触角が虫か何かのように蠢き、口からは綺麗な声だけを漏らしていた。


「ラ~ラ~ラ~♪」


「…………素晴らしい!これがイド!イドの魔人!!」


おぞましい姿となった怨敵を見て、歓喜に震えるエルフ兵。


「さぁ!魔人よ!ぐぇっ!!」


しかし、命令を下そうとしたのも束の間、エルフの首を魔人の伸びた腕が掴んだ!1本は首を絞めているが、他は四肢に手を伸ばし始める。


「~♪」

「ば、ばがものっ!ぐぉぇ!敵は…………あっ!あっ!あぁっ!」


言うことも聞かず、四肢に伸ばした手が徐々にあらぬ方向へ曲げはじめる。ミシミシと音を立てた。


━━━バキバキ!!骨が砕ける音がして、ねじれた腕からは血が噴き出した!


「ぐぎゃぁああああああ!!」


━━━バキバキ…………バキバキ…………ぶちっ!メキャ!

腕、足、それらを1本ずつ雑巾でも絞るようにねじりながら引きちぎっていく。エルフが声を上げるたび、首を絞めている様はまるでそれを抑制しているかのようだ。


「ご……ぇぇ……………」


「…………美しくないぞ。もっとだ。綺麗に鳴け。私を鳴かせたように美しく鳴け。」


「………ぇえ…………」


鮮血が残された胴体からビシャビシャと音を立てて滴り落ち、辺りは血の池だ。もうすでに虫の息と化したそれは口先から僅かな吐息をヒューヒューと漏らしていた。


「なら死ねぇェエエエ!!」


魔人は高らかに叫ぶと、最後に首を引きちぎる。

喉元からは噴水のように血飛沫が飛ぶと、そこへ落雷が落ちて死体を丸焦げにした。

辺りは臓物と焦げた死体の匂いが散らばり、路地裏に住み着いていたネズミや犬が、さっそく死体を漁り出す。


「鳴け!鳴け!鳴け!天よ!神よ!地よ!人よ!鳴け鳴け鳴け鳴け鳴け鳴け鳴け鳴け鳴けオーケストラァアァアア!!鳴り響けェェいっ!!あひ!あひゃ!あひひひひゃぁ!!」


狂った様に魔人は笑うと路地から街へ飛び出した。

解放された気分は最高だった。

私はもう止められないと思うほどに!

欲するは最高の音!あぁ!音!音!音!音!








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